第49回日本理学療法学術大会抄録集のページに若年性線維筋痛症に対する集学的治療における理学療法というPDFを見つけました。公立大学法人横浜市立大学附属病院 リハビリテーション科による、若年性線維筋痛症(JFM)のリハビリテーションの取り組みについて書かれています。
若年性線維筋痛症に対する集学的治療における理学療法 |
若年性線維筋痛症(JFM)とは
若年性線維筋痛症(JFM)とは、小児発症の線維筋痛症で、成人の線維筋痛症とはいくらか異なる特徴があると言われています。このブログでも過去に取り上げました。
【6/11】若年性線維筋痛症―大人とは異なる対応が必要| いつも空が見えるから |
2013 年の線維筋痛症診療ガイドラインによれば,線維筋痛症の有病率は人口の 1.7%(日本推計 200 万人)であり,80% が女性で 40~50 代に多く,10 歳前後に多い若年性線維筋痛症(Juvenile Fibromyalgia : JFM)は 4.8% のみだそうです。
横浜市立大学附属病院の取り組み
若年性線維筋痛症の治療については、横浜市立大教授の横田俊平先生の名前をよくお見かけします。このPDFでは公立大学法人横浜市立大学附属病院 リハビリテーション科の取り組みが書かれています。以下に項目ごとにまとめたいと思います。
■原因
JFM では患児と母親の相互依存性や,まじめ・完璧主義・潔癖主義・柔軟性欠如などコミュニケーション障害を伴う性格特性が特徴であるとも言われている。
男児 7 例,女児 32 例で、発症の誘因としては,内因性誘因では家族関係のストレス 27 例,学校関係のストレス 22 例であり,外因性誘因と内因性誘因の重複が 11 例にみられた。
成人の線維筋痛症では手術や感染などの外因が誘因となることがあるが,今回調査した小児では全例が内因性誘因を有していた。
■症状
主症状は筋・関節痛39 例,左上肢の慢性疼痛 1 例であり,ほぼ全例に睡眠障害や冷感,起立性調整障害など自律神経系合併症状を認めた。
■治療法
短期入院による母子分離,臨床心理士による心理評価と小児精神科によるカウンセリング,ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン ®)点滴静注を中心とした薬物療法,そしてリハビリテーション治療。
理学療法(ウォーキングなど)は疼痛が増強しない範囲で負荷を設定し,疼痛を意識させずに運動できるよう配慮し,受け入れのよい課題を選択し,目標を本人と相談しながら実施した。できる範囲の運動を導入することで,気晴らし的効果と身体機能維持改善の効果が期待できると思われた。
JFM ではセロトニン欠乏が睡眠障害や疼痛を引き起こすという知見が最近得られており,歩行などのリズム活動がセロトニン神経を賦活化 し疼痛の悪循環を断ち切る可能性もある。
■予後
入院中の疼痛の変化は改善 28例,変化なし 5 例,悪化 6 例
子どもの線維筋痛症(JFM)や慢性疲労症候群(CCFS)についての情報は少ないので、貴重な情報でした。これらの疾患の認知が向上することを願っています。