福井大学子どものこころの発達研究センターなど、複数の研究機関の共同研究で、思春期から成人の自閉スペクトラム症(ASD)[従来のアスペルガー症候群を含む]の診断の補助に活用できる技術が開発されたというニュースがありました。
ASD、成人男子も機器で診断 福井大など開発、乳幼児以外も実証 特集・医療最前線 福井のニュース |福井新聞ONLINE:福井県の総合ニュースサイト
成人男性の自閉症、2分で診断 映像見せ視線測定 :日本経済新聞
対人の障害、視線で8割判別…福井大など : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)
ASDを2分で判別、80%の精度
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴の中には、視線が合わないアイコンタクトの異常が含まれています。
この特徴を診断に役立てるため、研究チームは以前、簡単に視線計測ができる機器Gazefinderを開発しました。
これは人の顔や、音楽に合わせて動く幾何学模様の2分間の映像を見せて、視線の動きを調べ、迅速かつ客観的に自閉症の可能性を判別できるツールだそうです。
しかし、この機器は、これまで子どもの自閉症のみを対象として、実験されていたので、成人の自閉症の診断にも役立つかどうかは不明でした。
今回、Gazefinderを用いて、思春期から成人期の16歳~40歳の自閉スペクトラム症(ASD)の男性患者を対象にして、定型発達者との視線の違いを比べたところ、80%の精度で、両者を区別できたそうです。
研究にあたった福井大学の小坂特命教授はこう述べているそうです。
障害が見過ごされて成長し、社会人になってから職場でうまくいかずに悩む男性の診断に活用できる。[福井新聞]
誤診により、効果のない薬を処方されていた例もある。自閉スペクトラム症と分かれば、環境を整えるなど薬を用いない改善方法も見込める。[日経新聞]
もちろん、これだけで自閉スペクトラム症が診断できるものではありませんが、有用な診断補助ツールとして使用できるよう、今後は女性も含めて、引き続き大規模な検証を実施していくそうです。
今回の研究の中心となっている福井大学子どものこころの発達研究センターは、これまでもこのブログで、友田先生の愛着障害の研究などで取り上げたことがあります。