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【4/4】慢性疲労症候群(CFS/ME)と脳内炎症の関連が解明される

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性疲労症候群(CFS)と脳内炎症が関係するという理化学研究所のニュースが報道されています。

プレスリリースの文章中に、慢性疲労症候群(CFS)だけでなく、筋痛性脳脊髄炎(ME)という言葉が併記されており、この病名の適切さをある程度示す研究結果となるのかもしれません。

慢性疲労症候群と脳内炎症の関連を解明 | 理化学研究所慢性疲労症候群と脳内炎症の関連を解明 | 理化学研究所

脳内炎症がCFSの症状と関係している

CFS/MEは、原因不明の疲労・倦怠感が6カ月以上続く病気です。記事によると、『感染症や過度の生活ストレスなど複合的な要因が引き金になり、「疲れが取れない」という状態に脳が陥る』ものとされています。

これまで、CFS患者の脳内では、血流の低下、セロトニン輸送体の密度の低下などが見つかっており、さらに患者の血液や髄液で炎症性サイトカインがわずかに上昇していることから、脳内で炎症が生じているのではないかと推測されていたそうです。

今回の研究では、脳のグリア細胞の一種、神経炎症や免疫に関わるマイクログリアやアストロサイトの脳内での活性化を、陽電子放射断層画像法(PET:Positron Emission Tomography)で観察したところ、脳の広範囲に炎症が見られ、症状と関係していたそうです。

◆扁桃体と視床、中脳に炎症→認知機能が悪化
◆帯状皮質と扁桃体に炎症→頭痛や筋肉痛などの痛み
◆海馬に炎症→抑うつ症状と関係

今回の研究は「実際に患者の脳内で炎症が発生しているかを調べた研究」としては初めてのものであり、「CFS/ME患者の脳機能の低下に脳内炎症が関わっていることを示す証拠」となると書かれています。

また、「脳内炎症のPET診断によりCFS/MEや慢性疲労の理解が進み、客観的に測定可能な指標に基づく診断法の確立」が期待されています。

この研究には、理研から、渡辺恭良チームリーダー、水野敬研究員、大阪市立大学から、中富康仁博士、稲葉雅章教授、田中雅彰講師、石井聡病院講師、関西福祉科学大学から、倉恒弘彦教授が参加されたそうです。

筋痛性脳脊髄炎(ME)と脳内炎症

今回の記事では、筋痛性脳脊髄炎(ME)という病名がしっかり記されていたのが印象的でした。

以前の研究報告では、次のように書かれていました。

また、“筋痛性脳脊髄炎(ME)”という診断名を日本においてそのままCFS患者に対して用いることは、現状では臨床現場での混乱が予想される。

理由の1つは、ウイルス感染症後に発病する“脳脊髄炎”では通常は頭部MRI検査において脳の明確な脱髄性病変を認めるが、CFS患者では脱髄性病変がみられないことより、“脳脊髄炎”という診断名を用いることによる混乱である。

今回のPETを用いた臨床検査の結果では、強い疲労病態が認められるCFS患者は健常者に比し左視床と中脳の[11C](R)-PK11195結合度が有意に高く、脳脊髄炎がみられることを示唆する成績が得られており、このような検査結果が得られた患者においてはMEという診断も可能かもしれないが、このような検査は特別の施設でのみ実施可能なものであり、また保険診療の適応になっていないため、通常の診療において対応することは難しい。

今回の研究は、患者9名と健常者10名を比べただけのようなので、すぐに筋痛性脳脊髄炎という診断名が使われるようになるわけではないと思いますが、脳内炎症が症状の程度に関わっているとわかったことは興味深いと思います。


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