脳脊髄液減少症の2つのマンガが一冊にまとめられた、『マンガで知る女性のための人生応援コミック「なまけ病」と言われて~脳脊髄液減少症~』が発売されました。購入して読んでみましたが、改めてすばらしい内容だと思いました。(秋田書店による解説ページ)
マンガそれぞれのレビューは以前の記事に書いていますが、ここでは単行本化されたことによる追加点と、その感想についてまとめておきたいと思います。
新しい特徴
■ 大きさ:
A5版の書籍扱いコミックスで、ふつうのマンガよりサイズが少し大きめ。
■ 総ルビ:
マンガは全ページ総ルビなので、脳脊髄液減少症を発症した子どもや、脳脊髄液減少症の親を持つ子どもでも読むことができます。
■ 高橋浩一先生の解説:
p63-68の6ページにわたり、山王病院脳神経外科の高橋浩一先生の解説「―脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)とは―」が追加。「脳脊髄液減少症は、ハッピーエンドを迎える」として、2人の方の経験談が詳しく綴られています。
小学4年生のときに脳脊髄液減少症になり、学校に行けなくなり、「起立性調節障害」と診断されていたTさんのお母さんの話からは、目立った原因がない不登校でも、脳脊髄液減少症の可能性があることがわかります。
交通事故によって脳脊髄液減少症になった高知県のS子さんの話では、「脳を握りこぶしで潰されているかのような激痛…全身に力がなくなり、座り続けると背中に激痛が襲い…それに加え物事が理解できなくなる」とあります。重症の慢性疲労症候群、線維筋痛症そのもののように思えますがブラッドパッチでほぼ完治できました。
高橋先生はこう述べています。
私が脳脊髄液減少症診療を始めた頃は、理解されず、なんて悲劇的な病気だろう…と考えていました。しかし、今は考えを完全に変えています。当時に、そのような考えを持った事をお詫びしたいくらいです。
…地獄のような辛さがあっても、高いハードルがあっても、最終的にはハッピーエンドを迎えられる疾患と考えています。
■ 篠永正道先生の解説:
p129-134には国際医療福祉大学熱海病院の篠永正道先生による「脳脊髄液減少症への想い ―歩みとこれから―」が追加。 「脳脊髄液減少症を知っていますか: Dr.篠永の診断・治療・アドバイス」に書かれていた内容と類似した、脳脊髄液減少症の研究の波瀾万丈の歴史について書かれています。
これまで「ムチ打ち」(外傷性頚部症候群、軽度外傷性脳損傷)という名前でくくられていて、医学的な研究がなされていなかった膨大な数の患者を研究したという話は、これまで「不登校」としてくくられていた子どもを慢性疲労症候群として調べた研究と似ています。
どちらも、もともとあった古い概念に阻まれて、それを治療可能な病気とみなすという視点が欠けていました。ゆえに、さまざまな方面から反対があり、「頭のいかれた医師」とみなされました。しかし同じ信念を持つ意志が増え、脳脊髄液減少症は有名になりました。
慢性疲労症候群(CFS)や不登校の子どもとの関係については、 「脳脊髄液減少症を知っていますか: Dr.篠永の診断・治療・アドバイス」よりも踏み込んでこう書かれています。
脳脊髄液減少症の患者さんはしばしば線維筋痛症、慢性疲労症候群と診断されます。これらの病気は病気の本当の姿(本態)が不明で治療法も確立されていません。この3つの病気は根っこが一つなのかもしれません。
発育期の子どもは、じつは脳脊髄液が大人より漏れやすいことがわかってきました。しばしば片頭痛や起立性障害、心因性登校困難症の診断をされます。
子どもはくも膜、硬膜が未発達で脆弱であり、動きも活発でしばしば衝撃(スポーツ、自転車転倒、けんか、子ども同士の激突など)が加わり漏れる機会は大人より多いと考えられます。
慢性疲労症候群、線維筋痛症、起立性調節障害などと診断され、しかも原因が不明であれば、一度は脳脊髄液減少症の可能性を疑ってみるべきかもしれません。
このコミックスはすばらしい一冊です。値段も手頃で、頭が働かなくても読みやすく、情報が凝縮されています。脳脊髄液減少症の人とその家族だけでなく、慢性疲労症候群や線維筋痛症の人、不登校の子どもの親にとっても、手にとってみる価値が十分にあります。
それぞれのマンガの感想については以下の記事を参照してください。