第一回は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)とBMI(ブレインマシンインターフェース)についての特集。患者の衣川昌一さんとその家族のエピソードを中心に解説されます以下に視聴メモを記します。視聴しながらリアルタイムで記録したので、細かい表現は正確ではありません。最後に感想を記します。
■今注目されているALS
アイスバケツチャレンジで、ALSの治療が注目を浴びた。ホーキング博士をはじめ、全世界に12万人の患者。進行すれば会話も困難となる。患者が恐れるのは意思疎通ができなくなること。BMI(ブレインマシンインターフェース)…脳と機械をつなぎ、意志を伝えるシステムが注目されている。
■衣川さんとALS
兵庫県養父市 公立八鹿病院。ALSの先進治療施設。衣川昌一さん(65)。40代半ばに発症して、20年あまり戦ってきた。ALSは運動の神経が異常をきたし、全身の筋肉が衰えていくが、感覚は正常に保たれる。衣川さんは文字盤で会話している。
闘病を支えてきた妻のみゆきさん。介護福祉士の資格をとった。20代半ばにお見合い結婚してから、あまり家を省みる旦那さんではなかった。つきあいが多くよくお酒を飲んでいた。2人の子どもに恵まれ、トラック運転手として熱心に働いていたが、45歳でALSに。足から始まった麻痺は全身に。わずかに動く顔でパソコン操作。自分の闘病について書いている。「ALSの診断を受けた時は絶望しました。…希望を失って、目の前が真っ暗になりました」。
車いす→病院生活→寝たきり。みゆきさん「これからが長いんだなあ…どういう付き合いをしていくのか」
主治医の近藤清彦さん。「症状の進行がひとときも止まらない。刻一刻と進んでいく。通院するたびに、先月は階段を登れたのに、今は登りにくいと本人が自覚していく。病気が進行していく不安感は大きい」
■呼吸器をつけるかどうか
麻痺はいずれ、呼吸をつかさどる筋肉に及ぶため、命をつなぐには、人工呼吸器が必要。しかし日本の患者の7割はそれを選択しない。病院がない、家族に負担をかける、自分の生きがいをもはや保てないという思いなどが原因。衣川さんも人工呼吸器をつけないつもりだった。しかし風邪を引いて入院しているとき、あまりの苦しさから、人工呼吸器をつけてほしいといった。「死の直面に立たなければ、命の大切さをわかってもらえないでしょう。…わたしは生と死の境目を右往左往しながら、いつも心のなかで死と戦っています」
チーム医療。医療と介護、それぞれが専門知識を持ち寄り、患者一人一人に適したプランを考える。ALS患者にも喜びをもってもらう。
近藤先生「ALSの患者は失うものばかりだが、新たな目標とか物語の書き換え、新たな生活スタイルを作っていくということができると、前向きに生きられるようになる。生きがいは大切」
衣川さんの生きがいは家族。ときどき家に戻る。「このままでいいのか、生きていていいのか」という胸の内をもらすことも。絶望の中で見つけた家族との絆。生きる意欲を取り戻した。「家族の励ましで、生きる望みを見つけました。19年間、妻はひとこともぐちをもらさず、介護をしてくれています。ありがとうの思いでいっぱいです。これからどれだけ生きられるかわかりませんが、息が続く限り、生き続けたいです」
■ブレインマシンインターフェース
このまま進行すれば、感覚が保たれたまま意思疎通ができなくなる。国立障害者リハビリテーションセンター研究所脳神経科学研究室 脳科学者 神作憲司(かんさくけんじ)室長。ブレインマシンインターフェースBMIを導入。画面に並んだ3つの操作ボタンを選ぶのは「脳波」。点滅サイクルが異なるいずれかのLEDを見つめると、それぞれ視覚野から違う脳波が出る。身の回りの機器から発するノイズの中、脳波を見分けるため試行錯誤。脳波が伝わりやすいゲルを用いた電極を用いる工夫も。5年の試行錯誤。
好きな音楽を再生する、日本語入力プログラムで脳波だけで意思を伝えるなど。
近藤先生「ALSのような治らない病気に対峙するということから医者は逃げてはいけない」
衣川さん「研究成果に胸をふくらませ、BMIに寄せる期待は大きくなっています。長い長いトンネルを抜ければ、その先には新しい世界が広がっています。私は光と希望を信じています」
最後のコメンテーターの話は、書くほどでもなかったので省略します。ALSの苦しみをメガネの話と比べられても困りますね。
次回はニューロリハビリ。
■感想
ALSとブレインマシンインターフェースの話は、以前も、いくつかの本で読んだことがありました。そのときはまだ、信頼に足るシステムではないかのように言われていましたが、それが、実用的なレベルになってきたのであれば、嬉しく思います。
人工呼吸器をつけないと考えていたのに、あまりの苦しさから、それを選択したエピソードは、見ていてとても辛かったです。死と生の境を右往左往しているという衣川さんの言葉はまさにその通りなのだと思います。常に、死に最も近い部分に生きる、極限まで試される苦しみが伝わってきます。この苦しさは、そこに生きた人間でしか決して分かり得ない壮絶なものでしょう。
ブレインマシンインターフェースはALSの人と家族が望みをかける最後の砦であり、極限状態で尊厳をつなぐ、大切な技術であることはよくわかります。それでも、病気の治療に関するものではないということに計り知れないもどかしさを感じます。
治らない病気、という点では、まったく程度は違いますが、わたしの病気もたぶん同じだと思います。いかにして、病気が治ること以外に希望を見出すか、という、素直に答えの見つからない課題に直面します。病気が治らなくても、さらには進行しても、生きる喜びをどこかに見つけなければ、生きていけないのです。
衣川さんは家族に生きがいを見出しましたが、わたしはどうだろうか、と考えさせられる内容でした。
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