第二回は、不治の病フォーカル・ジストニアに対するニューロリハビリについての特集。視聴しながらリアルタイムで記録したので、細かい表現は正確ではありません。
ある日突然不治の病と宣告されたら…治療困難とされてきた難病に、最先端の脳科学を活用したリハビリが注目されている。電流を流して活性化させたり、頭でイメージしただけで麻痺を和らげたりするなど。
フォーカル・ジストニア。脳の電気信号がうまくいかなくなる。音楽家やスポーツ選手など、体の一部を酷使する人に多い。
ピアニスト瀬川泰代(せがわやすよ)さん。メロディと伴奏を左手だけでこなす。9年前フォーカル・ジストニアになり、右手が思うように動かせなくなった。左手の曲の魅力、フォーカル・ジストニアを伝えるために演奏活動をしている。
フォーカル・ジストニアの演奏家は50人に1人。仕事を失うことを恐れて、公表に踏み切るのはごくわずか。
瀬川さん。3歳でピアノに出会い、プロのピアニストを目指した。高校時代、早く正確なタッチで両手を操っていた。高校3年の夏、コンクールの課題曲を演奏しているとき突然右手が動かなくなった。練習不足が原因だと思い、ますます練習したが、症状が悪化。原因不明のまま病院をまわり、1年後にフォーカル・ジストニアと診断。不治の病だと知って愕然とした。
「治りませんと言われて、えっと思って、これからどうすればいいんだと目の前が真っ暗になった」
脳科学者の上智大学 音楽演奏科学が専門の古屋晋一さん。脳科学からジストニアの正体に迫り、治療法に光を当てている。ハイスピードカメラで、右手の動きを観察。ジストニアの症状が出る瞬間、意図しない動きが現れる。鍵盤を押した直後、人差し指が縮こまり、次の動作が遅れる。
関節の曲げ伸ばしを計測する特殊なグローブで、なぜ人差し指が曲がってしまうのか、脳が発する電気信号を調べる。意図した動作を生み出すためには意図しない動作を抑制しなければいけないが、その抑制ができない。猛練習で過剰な負担がかかることで脳に異常が生じている。
古屋さんはかつて音楽の道を目指していたが、ある日突然、手に違和感。音楽家の夢を絶たれてしまった。「自分が背負ってきたものをすべて捨てないといけない苦しみ」。
瀬川さんは、プロへの道を諦めかけたとき、左手だけで弾ける楽曲と出会い、左手だけのピアニストとして再び夢を目指し始めた。
自分以外にも多くの音楽家仲間がジストニアに苦しんでいる。リハビリの方法を模索。古屋さんのリハビリ実験に参加。鍵となるのは脳への電気刺激。脳を抑制したいところには青色の電極。活性化したいところには赤い電極。ごく弱い電流を流しながら、両手で単純な旋律を弾く。人体で右手を動かすのは左脳の運動野。左右の脳の間には橋渡しをする部分がある。異常な信号を送る左脳を抑えこみ、正常な右脳の信号を増幅。それが中央の橋を通って左脳に伝わり、右手を正しい運動へと導く。
リハビリを初めて20分後。最初に比べて、スムーズに弾けるようになった。実験前の意図しない動きがなくなった。今のところ、効果は最大一週間持続。「今まで詰まっていたものが体の中からすっと抜けたような感覚。気持ちよく演奏できた」
最近1人でピアノに向かい、両手で弾くようになった。
「前は完璧に引きたいという思いが強かった。弾けない自分がいやで引きたくないと思っていた。今はまずは自分が楽しもうと思っている。…動かない右手だけど、その右手が好き」
脳卒中の患者のためにニューロリハビリ。大阪大学医学部附属病院。森本昌男さん。脳卒中で倒れて以降、左半身に強い麻痺。原因は運動野の機能低下。麻痺が強すぎて動かせないので通常のリハビリができない。
三原雅史教授。イメージトレーニングによるリハビリを進めている。患者は一切体を動かさず、立ち上がったりするところを想像するだけ。イメージするだけで、実際に体を動かすのと同じように運動野が活性化する。きちんとイメージ出来ているか、計測してメーターを表示する。「簡単そうだけどやってみると難しい。雑念が入る」。
一回の治療は1時間。うまくできるまで何度もやる。脳の活動量を調べると、訓練後は運動野の活動が大幅にアップ。イメージトレーニングが眠っていた脳の機能を呼び覚ました。杖なしではあるけなかったが、2週間の訓練で、両足で歩けるようになった。
脳科学によるリハビリで、今まで不治の病と言われていたものが治るというのは興味深いですね。脳の誤作動、および脳が活性化しないという部分が治療できるというのは希望の持てる話だと思います。慢性疲労症候群や線維筋痛症も脳の機能障害と考えられていますが、脳の中枢感作を緩和できる方法が見つかったらいいのに…と思いました。
明日は子どもの睡眠障害ですが…予告を見た限りでは、スマートフォンなどの依存から最近増えている概日リズム睡眠障害について扱うみたいですね。小西先生も出ていました。