慢性疲労症候群の認知行動療法・段階的運動療法についての記事が出ていました。
Rehabilitative therapies for chronic fatigue syndrome: a secondary mediation analysis of the PACE trial - The Lancet Psychiatry |
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慢性疲労症候群の運動療法は不安感を減らすことが成功へのカギ:世界の最新健康・栄養ニュース
わたしは英語はわからないので、基本的に関連ニュースのほうから理解しています。より正確な情報を求める方は、上記のランセットの英文記事を参照してください。日本語のニュースは読みにくい上、誤解を与えそうな内容なのですが、簡単にまとめると以下のようなものだと思います。
まず2011年に行われたPACE研究では、通常のケア+3種類の治療法を比較しています。
■医療ケア(SMC)
…通常の専門家による医療ケア。すべての群で実施。
■認知行動療法(CBT)
…健康ケア専門家が症状に対する患者の捉え方を変更し改善するように働きかける
■段階的運動療法(GET)
…個別の運動プログラムを漸進的に作成し理学療法士の指導による徐々に運動強度を変えていく、
■適応ペーシング療法(APT)
…患者の活動量レベルを現在のエネルギーレベルにあわせて調整した、安全性を主とする治療法
この研究では、APTに比べてCBTやGETのほうが、CFS患者に効果があったようです。このニュースは当時も報道されていました。
その後、キングス・カレッジ・ロンドンなどの研究者が、治療の有効性を高める要素について検討したところ、「恐怖回避の信念」(fear avoidance beliefs)の改善が最も大切だとわかったそうです。「恐怖回避の信念」とは、活動性を高めることによって症状が悪化するのではないか、という不安感のことです。
この概念は1983年にLethemらによって提唱されましたが、恐怖回避に陥ると、痛みや疲労を恐れて逃避し、廃用性萎縮やうつ状態といった二次的な問題をを引き起こして、症状が悪化する場合があるとされています。
CBTにせよ、GETにせよ、この恐怖回避の信念を改善することで、症状がよくなっているようです。
結論として、慢性疲労症候群の患者の場合、自分のエネルギーレベルの範囲で活動しようとすること(APT)より、少しだけリハビリ的に運動強度を上げること(GET)のほうが、どちらかというと益があるようです。そのカギとなるのが、活動を増やせば症状が悪化するという不安感を克服することです。
もちろん、活動をしすぎると悪化するのは目に見えているので、GETやCBTのように、身体的負荷を調節し、計画を立てて、活動量を上げていくことが大切であるようです。過活動と不活動という両極端を避けることが肝要です。
慢性疲労症候群の認知行動療法と段階的運動療法については、いろいろと議論があるようですが、取り入れられる人はやってみるといいかもしれません。
詳しくは以下の記事もご覧ください。