脳脊髄液減少症の専門医である、山王病院の高橋浩一先生のブログで、小児期発症の脳脊髄液減少症について扱われていました。
起立性調節障害と間違われやすい
小児期発症の脳脊髄液減少症について、
■頭痛、めまい、嘔気、視覚異常などの不定愁訴
■朝が極端に弱い
■異常な肩こり
■何らかの外傷をきっかけに性格が変わってしまった
といった特徴が見られるとされています。
通常の検査では異常が見られず、精神的要因による不登校や、起立性調節障害、自立神経失調症、(あるいはここには書かれていませんが、慢性疲労症候群とも)診断されることが多いようですが、治療効果が乏しいときはこちらを疑ってみるとよいかもしれません。
治療法であるブラッドパッチの効果は成人例よりかなり高く、15歳以下発症では、9割以上が改善しているそうです。
脳脊髄液減少症と不登校のひとつの違いは、高橋浩一先生の記事のタイトルにもなっているように「学校に行きたいけど、行けない」という声である、とされています。とはいえ、闘病中は必死でわからない場合もあるようです。
コミックス「怠け病と言われて」
この話を読んで思い出すのは、小児期発症の脳脊髄液減少症を描いたマンガである、「怠け病と言われて」です。
主人公の中学一年の田中有加(ゆか)さんは、ある朝起きると、「天井がぐるぐるしてからだがふわふわしてる」という得体のしれない症状や激しい頭痛を感じました。
どうやら10日前に、廊下で転んで頭を打ちつけたあとで調子が悪くなったようでした。しかし病院では「起立性調節障害(OD)」と診断されます。
起立性調節障害も起立性頭痛が特徴で、吐き気やめまい、朝起きられないといった症状もよく似ていますから、小児期の脳脊髄液減少症とは混同されやすいようです。
しかし脳脊髄液減少症は起立性調節障害と違い、夜になったら回復する、ということはありません。
精神的な要因に基づく学校恐怖症などの不登校の子どもと違い、有加さんは、
「行きたいよ… 本当は学校…行きたいよ 友達と…一緒にいたいよ… 高校にだって…行きたいよ でも行きたくても行けないんだよ」
と思っていました。今回の高橋先生のブログの内容と一致します。
もちろん、起立性調節障害の子どもや慢性疲労症候群の子どもを含め、身体疾患によって不登校になってしまった子どもは、これと同じ気持ちでいると思います。
有加さんの場合は廊下で転んだこと、という目立った原因が思い当たりましたが、子どもの脳脊髄液減少症の中には、原因が思い当たらない場合や、吹奏楽などの音楽活動で発症する場合もあるそうです。
ですから、起立性調節障害と診断されているけれど、治療でよくならない、症状が重い、どこか違うように感じる、という場合は脳脊髄液減少症の検査を受けてみるとよいかもしれません。
▼起立性調節障害について詳しくはこちら
小児期発症の脳脊髄液減少症は改善できる
小児期発症の脳脊髄液減少症が改善した例として、最近のニュースで、NHK学園高3年の佐香穣さんについて、何度か報道されていました。
佐香さんは、高校1年だった2012年5月に、ボート部の練習に行く途中に転んで全身を強く打ったことで脳脊髄液減少症を発症しました。
一度治療を受けて回復したあとに再発しましたが、声優になる目標をもって、朗読大会などで頑張っておられるとのことです。
今回のニュースでは、『強い衝撃で髄液が漏れ、頭痛やめまいを引き起こす「脳脊髄液減少症」を克服し、朗読コンテストで東北一になった』と書かれています。
小児期発症の脳脊髄液減少症は、辛い病気であり、気づくのがなかなか難しい病気ですが、幸いにも症状を改善できる治療法があるので、もし可能性があるなら専門医をあたってみるようお勧めします。
また、小児期発症の脳脊髄液減少症については、今年発行された以下の本に詳しく書かれているので参照してください。