生物の体内時計についておもしろいニュースがありました。
レタスの体内時計のサイクルをセンサーで測定し、生育が早い苗を選別して栽培することで収穫量が増えることがわかったそうです。要は、体内時計に合った環境を与えることで、能力が最大限に発揮されるということです。
レタス 体内時計で成長アップ…日照調整試験 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) |
体内時計に適した環境が成長を促進する
従来、人工照明でレタスを育てる場合、昼夜12時間ずつの明るさにするのが普通でした。しかし、レタスの体内時計が22時間だということが明らかになり、昼夜を11時間ずつにしたところ生産が2割ほど向上したそうです。
この研究は大阪府立大学 バイオプロダクション工学研究室の研究で、体内時計の専門書である体内時計の科学と産業応用にも載っているようです。
大阪府立大学の福田弘和准教授はこう述べています
体内時計に合わせて栽培すれば、成長力が引き出される。今後は世界的に植物工場の需要は高まると思われる。生産効率を向上させ、海外にも技術を広めたい
人間の体内時計のサイクル
ところで、数年前に発表された、人間の体内時計に関する山口大学、佐賀大学、ソニーの共同研究によると、毛髪から体内時計のサイクルを測定することが可能になりました。
体内時計の乱れ、毛髪で測定 佐賀大などが開発 :日本経済新聞 |
毛髪の根元にある細胞を溶かし、メッセンジャーRNA(リボ核酸)の量を測ることで、体内時計のサイクルが測定できるそうです。この方法で、人間の体内時計のサイクルが、従来言われていた25時間ではなく、24時間11分ほどであることが確証されたのも、記憶に新しい点です。
しかし同時に、個々の人間が持つ体内時計のサイクルにはばらつきがあり、生まれつき体内時計の周期が長い人は、朝の活動が苦手な真の夜型人間であることがわかってきました。朝型・夜型というのはほとんど遺伝的なものだったのです。
朝型が良いのか、夜型が良いのか
国立精神神経センターの三島和夫先生によると、特に長いサイクル(24時間30分近い)を持っている人、つまり真の夜型人間は、朝起きにずっと苦労し続けることになります。
第11回 体内時計と睡眠習慣の関係がついに明らかに! | ナショナル ジオグラフィック(NATIONAL GEOGRAPHIC) 日本版公式サイト
眠くなる時間が毎日毎日遅れていくのを微調整するのが大変で、要するに早寝早起きのほうにずらすことがほとんどできない。
何とかその位置を保つのが精いっぱい。
物心ついた頃から全然朝起きれない、宵っぱり、寝坊の子ども時代を送って、あとは遅刻の常習魔になるパターンですね―
では、夜型の人は、朝型の人に比べて劣っているのでしょうか、そうではありません。
白川修一郎先生の脳も体もガラリと変わる!「睡眠力」を上げる方法によると、夜型の人は「不規則に慣れている分、 イレギュラーなことに対する適応力がある」のです。こう書かれています。
ストレスに対する耐性も、朝型より夜型のほうが強いと言われています。
言わば、「朝型の人は融通が利かなくて打たれ弱い」、「夜型の人は融通が利きやすくて打たれ強い」といったところでしょうか。
きっと何事もなくいつも通りの平和な日常が続いていくのであれば、朝型のほうがいいのでしょうが、いつ何が起こるかわからないような変革の時代においては、夜型の人のほうが力を発揮するのかもしれませんね。 (p96)
一人ひとりの体内時計を考えた環境を
夜型の人は、朝型の社会に合わせて生きるのは苦痛ですが、決して能力的に劣っているわけではありません。もしレタスのように、体内時計にそった環境を与えられたなら、能力を最大限に発揮することができます。
残念ながら、現代の朝型中心の社会においては、夜型の人が負担を感じることがあります。
たとえば学校の朝練については、白川修一郎先生をはじめ、複数の研究者が警告を発しています。慢性疲労症候群(CFS)のリスクになるとさえ考えられています。
小児CFSの本「学校過労死―不登校状態の子供の身体には何が起こっているか」(下) |
将来的には、一般の血液検査や、学校の健康診断において、毛髪から体内時計のサイクルを測定することが当たり前になり、おのおのに適した学習環境、生活環境が選べるようになるかもしれません。
また真の夜型ではなく、不摂生によって体内時計のサイクルが乱れ始めている子どもがいるなら、早いうちに適切な指導が与えられるようになるかもしれません。
体内時計についての研究が進み、レタスだけでなく、人間に関しても、それぞれが生きやすい環境が整えられるようになれば、朝型の人も夜型の人も、能力を最大限に発揮できるようになると思います。