胃もたれや腹部膨満感、胸焼けや胃の痛みなど、さまざまな不定愁訴を特徴とする胃の機能障害である、機能性ディスペプシア(FD)について、脳のセロトニントランスポーターの変調が見つかった、というニュースがありました。
機能性ディスペプシアは、検査で異常が見つからない胃の不定愁訴であり、同じく検査で異常がない慢性疲労症候群(CFS)や線維筋痛症(FD)、過敏性腸症候群(IBS)などと共に、機能性身体症候群(FSS)という同じカテゴリーに分類されています。
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上腹部症状(みぞおちの痛みやもたれ)と 脳内セロトニントランスポーターの機能変調の関連を証明 — 大阪市立大学
慢性的な胃もたれ痛みの原因は脳にある?
大阪市立大学の消化器内科学の富永和作准教授らと理化学研究所によると、PET検査を用いてFD患者の脳を調べたところ、中脳・視床において、神経伝達物質セロトニンを運搬し、調節する、セロトニントランスポーターの変調があることがわかりました。
脳のどの領域のセロトニントランスポーターが変調しているかによって、症状に違いもありました。
■中脳…消化器症状合計と腹痛に関係
■視床…消化器症状合計と腹痛、さらに胃もたれに関係
■海馬…腹痛や不安症状に関係
中脳・視床は、消化管から中枢へ伝わる「痛み刺激」を増幅する領域だとされています。そのことがFDの過敏性や痛み刺激の抑制不全、末梢運動機能障害に関係しているのかもしれません。
また神経伝達物質セロトニンの90%は消化管に存在していて、消化管運動機能とも関係しています。そのため脳の中枢神経系で、セロトニントランスポーターに変調が見られることが、胃の不快感をもたらしている可能性も出てきました。
セロトニントランスポーターの機能変化は、うつ病の患者でも見つかっています。FD患者の場合も、胃の不快感だけでなく、抑うつや不安といった症状も見られるそうです。
これまでも、FD患者のセロトニントランスポーターの遺伝子多型が報告されていますが、セロトニントランスポーターそのものが中枢で変化していることを示した研究は初だそうです。
機能性ディスペプシア(FD)は、近年、新しい薬としてアコファイド(アコチアミド)が発売されたことをこのブログでもお伝えしました。
しかし難治化する患者も多く、薬物治療の効果も約50%程度であるとの報告もあるそうです。
今回の研究結果からすると、機能性ディスペプシア(FD)には、これまで使われてきた消化器病薬以外にも、中枢や神経伝達系に作用する薬、たとえばSSRI(選択的セロトニン取り込み阻害薬)やセロトニン受容体アゴニストなどが効果がある可能性があり、治療の選択肢が広がるかもしれません。
胃や腸の不定愁訴で悩む人は多いので、どこに原因があるのか、早く解明されてほしいですね。
▼機能性ディスペプシアとは
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