東大が自閉スペクトラム症(ASD)に対するオキシトシンの連続投与の効果について発表していました。
ASDには、重度の知的障害を伴うカナー型自閉症から、伴わないアスペルガー症候群まで幅広い症状を含む概念です。
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オキシトシンの継続投与
東京大学医学部附属病院 精神神経科 山末英典准教授らによると、自閉スペクトラム症(ASD)の成人男性を20名に、オキシトシン経鼻剤を6週間使用すると、前頭前野の機能が改善し、コミュニケーション能力が向上しました。
これまでにも、ASDへのオキシトシンの効果はたびたび報告されていましたが、多くは1回投与による効果でした。継続投与の実験では、効果が見られないことが多かったそうです。
しかし、今回の研究では、6週間投与しても、1回投与と同等の効果が見られることが、厳密な試験によって明らかになりました。
実験はランダム化二重盲検試験(ダブルブラインド試験)によって行われたそうです。
具体的な効果としては、以下のような点が見られたそうです。
表情や声色を重視した他者理解の頻度の増加
■腹側内側前頭前野の機能が改善
自分の感情や体験に照らし合わせることで他者の感情や考えを理解したりする働きに関わる場所
■背側内側前頭前野の機能が改善
他者の考えを論理的・客観的に推論する機能に関わる場所
■安静時機能的結合の改善
上記2つを含む、内側前頭前野の機能的結合が改善。安静時機能的結合とは、リラックスしているときの複数の脳領域の協調活動。自閉症や精神疾患では、この働きが弱く、ネットワークとしての脳の働きや情報処理機能に影響が出ていると言われている。
オキシトシン経鼻剤とは
今後、ASD治療薬としてのオキシトシン経鼻剤の臨床開発に向けて、さらに114名の参加者を対象に臨床試験を行う予定だそうです。
臨床試験は、東京大学、名古屋大学、金沢大学、福井大学の4大学が連携し、Japanese Oxytocin Independent Trial (JOIN-Trial)として実施されます。
これまで、ASDの常同性・反復性(強迫症状)にはある程度有効な薬がありましたが、中核症状とされるコミュニケーション障害には、有効な治療法がありませんでした。そのため、社会適応を円滑にする手段として、オキシトシンに期待が寄せられています。
オキシトシンは、女性の母性に関するホルモンとして知られていますが、親子の絆の形成や、他者との信頼関係、表情から感情を読み取るなどのコミュニケーションにも関係すると言われています。
このブログで過去に扱った情報によると、自閉症への効果はもちろんのこと、愛着障害や、顔を覚えられない人にも効果があるとされていました。
愛着障害については、境界性パーソナリティ障害(BPD)にオキシトシンが効果的だという報告もありますが、逆に攻撃性が強まったという報告もあり、単にオキシトシンを補充するだけでは意味がなく、受容体の分布位置も関係しているとされています。
山末英典准教授はこう述べています。
女性や子供に対する安全性や有効性も確かめ、今までなかった自閉症の治療薬として実用化させたい。
ASDについては、特にアスペルガーについては、個性であり、はたして治療の必要があるのか、という議論もあります。
しかし、程度の重い自閉症の場合は、コミュニケーションが難しかったり、言語能力が限られていたりするので、治療法の開発は大きな意味があると思います。