ほかの子はみんなできるのに
いつまでサボっているんだ!
この子は怠けてばかりいる
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Clik here to view.これは、LD(学習障害)の子どもとその親がよくかけられる言葉のほんの一部です。
学校の勉強について行けない子どもたちは、「怠け者」「サボり」「頭がわるい」などのレッテルを貼られがちです。
その子どもの親たちも、「しつけがなっていない」「家庭環境が悪い」などと言われて、悩んだり傷ついたりすることがしばしばです。
しかしLD(学習障害)は、子どものせいでも親のせいでもなく、生まれつきの脳の働き方が、ほかの子たちとはちょっと違うだけなのだ、ということがわかってきました。
そして、うまく長所を伸ばせば、才能を発揮して活躍できることも証明されています。
この記事では、以下のような点を扱っています。
■ディスレクシア(読み書き障害)とはなにか
■親と子どもに役立つ10のアドバイス
■役立つ情報へのリンク集
記事を書くにあたり、LD・ディスレクシアの専門家による本、図解 よくわかるLD(学習障害)Image may be NSFW.
Clik here to view.や怠けてなんかない! セカンドシーズンなど、さまざまな本を参考にしています。
この記事は長いので、このすぐ下の「目次」を使って、必要なところから読んでください。「目次」の各項目をクリックすると、読みたいところまで飛ぶことができます。
目次に戻りたいときは、ページ右下に現れる「上へ戻る」ボタンを、ご活用ください。
子どもたちの目でみれば…
はじめに、以下の画像の文字を読んでください。
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すぐ読めましたか?
時間がかかった? ならあなたは怠けていたのでしょうね。あるいは親のしつけが悪いのかもしれません。もっとがんばってください。
そんなことを言われたら、きっと誰もが理不尽な気持ちになるでしょう。しかしこれが、LDの子が直面している現実なのです。
上の文章は、特に読むのが苦手な、ディスレクシアの子どもたちが見ている世界だといわれています。文字が重なっていたり、反転していたりして読むのが非常に難しいことがわかります。
明らかに、LDやディスレクシアは、本人の努力不足ではなく、脳の機能の問題だということがお分かりいただけると思います。
LD(学習障害)とはなにか
LDという用語は、1963年に、心理学博士であり教育者でもあるサミュエル・カーク(Samuel Alexander Kirk:1904-1996)が作りました。
LDとはLearning Disabulitiesの略で、日本語では一般に「学習障害」と訳されています。
知的な遅れはないのに、学校での勉強が難しい子どもたちのことを指します。人によって「計算はできるが教科書は読めない」「話すことはできるが聞くのが難しい」など悩みはさまざまです。
日本では4.5%の子どもにLDが見られるそうです。つまり、30人のクラスに1人か2人ずついる計算になります。
「障害」ではない
「障害」という言葉からネガティブな印象を受けがちですが、もとの英語のDisabulityは単に「ある能力が欠けている」という意味の単語にすぎません。
わたしたちは、五感から入ってくる情報を頼りに、学習したり、人とコミュニケーションしたりするわけですが、五感の感受性は、人によって異なります。
ある子どもは、耳が聴こえないわけではないものの、聴覚が不器用なために、より多くの情報を視覚から得るかもしれません。すると、学校の授業で、先生の話を聞いて理解するのが難しくなります。
別の子どもは、視力が悪いわけではないものの、目から入る情報を処理するのが苦手かもしれません。そうすると、教科書の文字を読むスピードが遅く、周りについていけないかもしれません。
こうした認知の偏りは、すべての子どもに見られますが、それが特に強く出ているために、みんなと足並みをそろえるのが難しい子が、学習障害(LD)と呼ばれているのです。
もちろん、これは親の育て方が原因ではありません。
得意不得意がはっきりしている
学習障害は「障害」というより、「ある能力が欠けている」という意味にすぎない、と述べたのは、LDの子どもたちは、苦手なことも多い反面、得意なことでは普通以上の強みを発揮できるケースも多いからです。
多くの子どもは、ほぼ平坦な能力を持っていて、どんなことでもオールマイティーに対応できます。その分、得意なことも苦手なこともそれほど目立ちません。
しかしLDの子どもは、山あり谷ありの能力を持っているので、得意不得意がはっきりしているのです。
そのため、聴覚の認知が悪く、授業についていけない子どもでも、図や絵を用いて目から教えれば、驚くほど飲み込みがよかったりします。一人ひとりに合った方法を用いれば、得意な能力を伸ばして活躍することもできます。
歴史上の人物を見ても、エジソンやアインシュタイン、ピカソやダヴィンチは、学習障害(LD)があり、学校の勉強について行けなかったり、読み書きや算数ができなかったりしたことが知られています。
現代でも、俳優のトム・クルーズや、ロビン・ウィリアムズなど、学習障害だった有名人は大勢います。
もちろん、LDの子どもは、みな天才だと言うわけではありません。しかし、こうした例を通して、必ずしも「障害」とは言えないことをわかっていただけると思います。
ピグマリオン効果とゴーレム効果に注意!
LDを「障害」と考えないほうがよい大きな理由は、ピグマリオン効果とゴーレム効果というものにあります
教育心理学者ロバート・ローゼンタールは、適当にある小学生を選び、この子は有望だと先生に伝えました。すると1年後、その生徒の成績は劇的に良くなっていました。
このように期待された子どもが良い結果を挙げやすい現象をピグマリオン効果といいます。
逆に、その子を無能だ、と思い込むと、根拠がなくても落胆が現実になってしまう現象のことをゴーレム効果といいます。
愛着崩壊子どもを愛せない大人たち (角川選書)Image may be NSFW.
Clik here to view.という本は、近年、発達障害という診断が普及していることについて、こう危惧しています。
この子は「障害」をもつ子どもで、将来が暗いと周囲が思い込むことによって、その悲観的な期待が現実のものとなってしまう危険である。
非定型発達であるだけで、将来はむしろ有望かもしれない子どもに「障害」という呪いをかけてしまい、その呪いを実現させてしまうとしたら、それは恐ろしいことに思える。(p157)
すでに述べたように、LDの原因は親の育て方ではありません。
しかし親が子どもを「障害」だとみなし、先生にもそう伝え、周りの人がみな、その子を障害者として扱うとしたら、その子は本当に「障害」を持った大人になってしまうかもしれません。
逆に、その子は、単に得意不得意がはっきりしているにすぎないと考えていて、得意なところを伸ばすよう励ますなら、期待以上の結果が出ることもあるのです。
このように、LD=障害と考えないほうが良いので、この記事では、基本的に「学習障害」ではなく「LD」という略称を用いて、話を進めます。
▼なぜLDを診断してもらうべきなのか
LDは、医師による面接や、生育歴の聞き取り、知能検査によって診断されます。
専門家に相談することで、気づいていなかった問題がわかったり、適切なアドバイスがもらえたりすることもあります。
たとえばLDは発達障害の一種ですが、ADHDやアスペルガーなど、他の発達障害を併存していることもあります。
図解 よくわかる大人のADHDによると、LDの30-50%がADHD、ADHDの30-50%がLDと言われています。
逆に問題が、LDではなく、別のところにある、ということが分かる場合もあります。たとえば、視力や聴力が本当に悪いのかもしれません。
LDの悩みごとの7つのタイプ
LDにはどのようなタイプがあるのでしょうか。一般に、LDは「読み」「書き」「算数」の3つのタイプの障害からなると言われています。しかしここでは、もう少しいろいろな悩みごとを加えて、7つの要素を挙げましょう。
1.文字をスラスラ読めない(読字障害)
よく似ている文字が読めなかったり、文章を順を追って読んだりするのが苦手だったりするタイプです。
たとえばトム・クルーズは、pとq、bとdの区別がつかず、いつも台本では行を飛ばして読んでしまうそうです。
2.文字を正しく書けない(書字障害)
左右反転した鏡文字を書いたり、「てにをは」などの文法がわからなかったり、黒板の文字を書き写すのが苦手だったりするタイプです。
レオナルド・ダ・ヴィンチも鏡文字を書いていたことで有名です。
3.計算が苦手(算数能力障害)
簡単な暗算も苦手、単位が理解できないといったタイプです。
ピカソも算数ができなかったと言われています。
4.地図が読めない、場所がわからない(空間認知障害)
地図や図形がわからないといったタイプです。左右がわからなかったり、自動車の運転などが苦手だったりします。
芸能人の堺雅人は、左右が分からず、計算も苦手だと告白しています。
5.話を聞けない
親や先生の指示が耳に入らないタイプです。聞こえてはいても、聞き間違いが多かったり、複数の声を同時に聞き分けたりすること(カクテル・パーティー効果と言われる)が難しかったりします。
特にADHD(注意欠如多動症)の子どもに多いようです。
6.うまく話せない
相手が理解できるように整理して話せないタイプです。
コミュニケーション能力が弱く、ASD(自閉スペクトラム症)、つまりアスペルガー症候群などの傾向と関連している場合も多いようです。
7.不器用 (発達性協調運動障害)
不器用さや体育の苦手さは、発達性協調運動障害と呼ばれていて、LDと併発している子どもも多いと言われています。
もちろんLDは千差万別ですから、ここに挙げた7つのタイプに分類できるとは限りません。複数の症状が出ることも多いですし、まったく別の、意外な分野でのつまずきがあるかもしれません。
すでに述べたように、こうした困りごとの背景には、脳の情報処理システムの偏りや、目の動きなど体の各部分を繊細にコントロールすることの難しさ、複数のことを同時に行えないことなどが関係していると言われています。
80%に見られるディスレクシア(読み書き障害)
すでに述べたLDのいろいろなタイプの中で、特によく見られるのが、文章をスラスラ読めない読字障害で、これは特に「ディスレクシア」と呼ばれています。
ディスレクシアは、読むだけでなく書くことも困難なことが多く、専門家の中には「読み書き障害」と訳すべきだと述べる人もいます。
ディスレクシアは1884年にドイツの眼科医ルドルフ・ベルリンによって名づけられた症状であり、LDよりも古い概念です。
「透明性」の低い言語には要注意!
ディスレクシアの症状の程度は、言語の「透明性」と深く関係していると言われています。
「透明性」とは、文字と音の対応関係です。
ひらがなのように、この文字は必ずこの音で発音する、と決まっているものは透明性が高い言語です。
「あ」には「あ」以外の発音がなく、ディスレクシアの人も読みやすくなります。
しかし英語や漢字のように、ひとつの文字の読みが、その時々でいろいろ変わるものは、透明性が低く、ディスレクシアの人にとって読むのが困難です。
たとえば「月」は文脈によって「つき」「つく」「げつ」「がつ」「げっ」などと変わりますが、そのようなものが「透明性の低い」読みにくい文字なのです。
ディスレクシアの人は「透明性の低い」言語がとくに苦手なので、英語圏ではディスレクシアの発生率も高いそうです。
また、ディスレクシアの人は音素が細かい(「粒子性」が細かいと言われる)言語も苦手です。英語は、「透明性」が低いだけでなく「粒子性」も細かく、ディスレクシアが生じやすいのです。
時間感覚の障害としてのディスレクシア
ディスレクシアは、単なる読み書きの問題と思われがちですが、実は、「時間感覚の障害」を伴っていることが少なくありません。
朝、目がさめたとき何時なのかまったく見当がつかず、それが午前中いっぱい続く。彼女は時間が過ぎるのを感じていないようだ。
「時間がわかるのは、昼ごろになっておなかがすいてきてからなんです。どのくらい時間が過ぎたか判断する材料を、わざわざ探しています」。
学校で他の生徒は正しい時間がわかるのに、彼女の推定は数時間ずれていることもある。(p26)
ディスレクシアの研究者であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のBuonomano准教授は、ディスレクシアの原因そのものが時間感覚の障害にあるのではないかという大胆な仮説を立てています。
時間感覚はミリ秒単位の動作のコントロールにも関係しています。たとえば飛んできたボールを正確にキャッチできるのは、時間感覚、つまりタイミング(Timing)が関係しています。
多くの人が正確に書いたり読んだりできるのは、ペンを正確なタイミングで動かしたり、文字を正確なタイミングで読んだりできる、時間感覚のコントロール能力のおかげなのではないか、というわけです。
この説の真偽は不明ですが、少なくとも、時間感覚の障害という観点から見れば、ディスレクシアおよびLDの子どもたちが、学習以外にも日常生活や、協調運動でさまざまな困り事を抱えることについて、いくらかの説明がつきます。
▼関連情報:
Neuron Learning : Brain Timing and Dyslexia Image may be NSFW.
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Dyslexics have Difficulties with Time Management
LDと合併しやすいADHDもまた時間感覚の障害と言われることがありますが、その点については、以前の記事をご覧ください。
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LDの子どものために親ができる6つのこと
これから、親子それぞれができるアドバイスを10取り上げます。まずは親ができる6つのこと、そして子どもに役立つ4つのことを紹介します。
LDの問題に取り組むのに率先するのは親の仕事です。親は、LDについてよく調べ、子どもがLDにうまく対処できるよう、言葉や行いで手本を示すことが大切です。
1.子どもや周囲の人に伝える
親は子どもに、LDについてしっかり説明し、子どもが自分で対処してゆけるよう助ける必要があります。すでに述べたように、「障害」だと伝えるのではなく、子どもの理解力に応じて、「特性」について説明します。
同様に、子どもと接する家族や教師、周囲の人たちにも、わかりやすい言葉で説明しておきましょう。苦手なことだけでなく、得意なことも胸を張って伝えておきましょう。
2.あらかじめ対応をシミュレートしておく
年齢が進むにつれ、自分で友だちや先生に、自分の特性について説明できるように、そして何かができないときにはどう対応したらよいのかわかるように、家でシミュレーションしておきます。
実際に起こりそうな場面を想定してください。たとえば忘れ物をしてしまう、先生の指示が理解できないなどです。
そして、親が先生役、友だち役になり、子どもに対応を考えさせます。場面を演じて、対応を練習しておくことで、自信がつき、トラブルにも落ち着いて対処できるようになります。
3.違っていることの価値を教える
「みんなと同じようにやる」よう求めるよりも、「みんなと違っていることの良さ」を教えます。
子どもが気づいていない良い点を探してあげて、「確かに、◯◯は苦手だけど、△△は得意だね」、と言って、子どもが苦手なことだけでなく、得意なことを自覚できるよう助けます。
もし親や親族にもLD傾向があるなら「じつはお父さんも同じなんだ。こんなふうに対処してきたんだよ」と話してあげるのも大切です。場合によっては、LDの有名人の伝記を引き合いに出すことも可能かもしれません。
たとえばLDだったアインシュタインはこう言いました。
この世の誰もが天才である。しかし、魚には木登りの才能がないと評価していたら、魚はダメだと思い込むような一生を送ることになる。
アインシュタインは、数学以外の成績は非常に悪く、運動もできませんでした。しかし自分は、みんなと一緒に木登りするのは下手でも、魚のように物理学の世界を泳ぎまわれる長所があることを自覚していたのです。
4.「できる」方法を探す
子どもが何かできないこと、苦手なことに直面した場合は、「なんでできないの」「もっとがんばりなさい」と言うのではなく、できるようになる別の方法を一緒に探します。
すると、子どもは、一見できないように思えることでも、工夫して対処すれば解決できるのだ、ということを学び、何かのことで行き詰まっても、進んで対処法を探すようになるでしょう。
5.得意なことを伸ばす
苦手なことを伸ばそうとしても、それは脳の特性によってできないことなので、子どもにとっては苦痛です。
ソーシャルスキルや自己管理の方法などは身につけさせる必要がありますが、基本的には、得意なことを伸ばし、得意な能力を用いて苦手なことを補うよう助けます。
6.専門家、教育機関と協力する
2007年から、LDやADHDのための特別支援教育がスタートし、発達障害に配慮してくれる先生も少しずつ増えてきました。
また、一昔前と比べ、フリースクール、通信教育、特別支援学校、職業訓練学校など、通常の学校生活以外の選択肢も増えました。それらをよく見比べ、子どもとも相談し、子どもに合った環境を作ることができます。
無理にほかの子どもと同じ進路に進ませると、不登校になることがあります。逆に親の決定を子どもに押しつけても、みんなと同じようにさせてもらえなかったという不満が生じます。親子の意思の疎通を大切にして、一緒に進路を選びましょう。
ディスレクシアの子どもに役立つ4つのアドバイス
続いて、子どもに役立つアドバイス、特にディスレクシアに役立つ4つのことを取り上げます。
基本的に、子どものLDはさまざまです。何らかの診断名がついたとしても、診断名にこだわらず、その子に合った方法を見つけるのが大切です。
子どもだけに勧めるのではなく、ぜひ親子で一緒に取り組んでみてください
1.読むのが難しい人に
■タブレットとアプリを使いこなす
紙の資料ではなく、近年普及しているiPadをはじめとしたタブレットで読むなら、いろいろな工夫ができます。
LDやディスレクシアの人にとって役立つアプリはたくさんあり、音読してくれるもの、拡大してくれるもの、フォント(字体)を読みやすく変えてくれるもの、ハイライトしてくれるものなどさまざまです。
タブレットの良さについてはこちらの方が解説してくださっています。
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どんなアプリがあるかは、最後のリンク集をご覧ください。
■明るさや色みを変える
画面の明るさや色みを変えることによって、文字が読みやすくなることもあります。
明るさについては、明るくはっきりしたほうが見やすい子もいれば、光に敏感で暗くしたほうが疲れない子もいます。PCやタブレットの「明るさ」「輝度」などの設定を探して調節してください。わたしはいつもかなり暗めにしています。
オックスフォード大学のジョン・シュタイン博士は、 ディスレクシアの人は青や黄色のフィルターをかけると文字が読みやすくなることを発見しました。中には暖色系だと読みやすい人もいます。
PCソフトやアプリを使って画面に色つきフィルターをかける手もあり、暖色系が見やすい子の場合は、ブルーライト軽減アプリが役立つ場合もあります。「ブルーライト アプリ」で検索してください。
いっそ色つきレンズを使う方法もあります。自閉症のドナ・ウィリアムズは、色つきメガネをかけたら見やすくなったと言っていました。
■オーディオブックを活用する
近年、文字情報の本だけでなく、「オーディオ・ブック」と呼ばれる形態の音読された電子書籍が多数発行されています。
中にはポッドキャストに登録しておくと、最新刊のオーディオブックを配信してくれる雑誌などもあります。
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■OCR(光学文字認識)によるテキスト変換
印刷された文字をスキャンしたとき、文字を読み取って、データ化してくれるソフトが出ています。これを光学文字認識(OCR:optical character recognition)といいます。
Google Driveなどで、無料でOCRを利用できます。スマホのOCRアプリも多数出ています。
日本語のテキスト化の精度はいま一つなことも多いですが、どのサービスを利用するかによって精度も異なるので、色々試してみてください。
「OCR アプリ」「OCR スキャナ」「OCR 無料」などで検索してください。
2.書くのが難しい人に
■音声入力アプリ
今ではiOSデバイスのSiriなど、音声をテキスト化してくれる「自然言語処理」のサービスは珍しくなくなりました。紙に書くより、キーボードで打つより、よほど楽だという人もいます。
テキスト化してくれない場合でも、思いついたことのメモなどは、ぜんぶボイスメモで残している人もいます。そのほうが手っ取り早いのだといいます。
■ポメラ
もう古いという人もいそうですが…わたしも愛用しているポメラは、小型のワープロです。持ち運びしやすい上に、キーボードも入力しやすく、キーボード派の人にとっては、いつでもどこでも文章を打てます。
もちろん、今となっては、スマホとBluetoothのキーボードを持ち歩けばいいことではありますが、機能がシンプルで操作しやすいほうがいい人には、役立つかもしれません。
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■マインドマップ
マインドマップはこのブログでも再三紹介してきたとおり、イギリスの教育家トニー・ブザンが開発したノート術です。頭がごちゃごちゃしていて、連想や発想がどんどんつながって整理しにくい人におすすめです。
また学校の授業のノートをとるとき、話に追いつけない人は、速記術としてマインドマップを使えば、ものすごく楽になります。
マインドマップは正確なルールがあり、厳密に守ることが重要と言われることもあります。しかし、わたし個人の意見としては、最初に身につけるときはルールを意識したほうがいいものの、慣れたら、自分の好きなようにカスタマイズして構わないと思います。
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■フローチャート(流れ図)
今回参考にしている怠けてなんかない! セカンドシーズンによると、マインドマップが合わない人は、フローチャートが合うと書かれていました。じっくり掘り下げていく考えの人に向いているそうです。
フローチャートはもともとプログラミング関係の思考術ですから、マインドマップを使うような頭がごちゃごちゃしている人ではなく、論理的な考えを積み重ねる人に向いています。
論理的といっても、文章ではなく図のような形で書いていくことができますから、文章が書けない人にも役立ちます。
■KJ法
川喜田二郎教授のKJ法では、たくさんのカードに考えを書いて、あとでそれを並べ替えて整理します。やはり頭がごちゃごちゃして考えをまとめにくい人に有効です。
簡単にKJ法を実践する方法として、大きめの付箋を用意し、一枚ずつアイデアを書いて、あとで並べ替えることで、考えを整理できます。
わたしとわたしの母も、マインドマップを身につける前に実践していました。かなり楽しいです。
またKJ法を活用したアプリなどもいろいろあります。
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■筆記用具の工夫
ディスレクシアの人は、芯が柔らかかったり、グリップが持ちやすかったりする筆記用具のほうが書きやすくなることがあります。
ノートも、マス目や罫線のあるなしを選びましょう。マインドマップを使う人などは真っ白の用紙が最適です。わたしは真っ白なルーズリーフしか使いません。
3.時間感覚がわからない人に
■タイムタイマー
タイムタイマー型の色と面積で時間をはかるタイプのタイマーは、時間感覚をつかみにくい人に効果的です。
タイムタイマー系は、発達障害かどうかに関係なく、時間の管理が難しいいろいろな方が使っておられます。今ではアプリもあります。
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■視覚型のタスク管理ツール
時間管理が難しい子は、スケジュールを図にして張り出しておくことも効果的です。
タスク管理を視覚化できるサービスもいろいろあります。
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4.「向かない仕事」を知っておく
LDの人は、それぞれの特性に応じて、いろいろな専門職につくことができます。人によって「向いている仕事」はさまざまです。しかし、一様に「向かない仕事」というものがあるようです。
たとえば、レジ係、ウェイター、旅行代理店、電話オペレーターなど、多くの人に対応したり、複数の作業を同時にこなしたり、柔軟な対応が求められたりする仕事は総じて苦手なようです。あくまで自分の得意なことで勝負しましょう。
おわりに―LDを強みに変えて生きる
LDは、現在の学校教育では、落ちこぼれたり、問題児とみなされたりして、欠点とみなされがちです。しかしLDの研究者の北海道大学の室橋春光先生はこう述べています。
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Clik here to view.連続インタビュー「心の社会性」 第11回 << グローバルCOE「心の社会性に関する教育研究拠点」 Image may be NSFW.
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著名な芸術家や研究者、会社の社長などの中には発達障害を持つ人が少なからずいます。
エジソンやアインシュタイン、俳優のトム・クルーズなどが有名です。発達障害の特徴の一つは能力の凸凹が大きいということです。
欧米では秀でた能力を「神から与えられた才能」と考え、それを伸ばそうとしますが、日本では「まんべんなくできる」ことを重視する文化的土壌があるため、「できないこと」に目が行きがちです。
だから彼らは生きづらさを感じるし、持っている能力も活かしづらい。
室橋先生が指摘するように、「まんべんなくできる」ことを目指すと、LDの子どもは落ちこぼれになってしまいます。LDの「障害」としての側面に目を留めると、不登校や非行、二次障害につながることさえあります。
しかし、「与えられた才能」のほうに目を留めれば、大きく飛躍する可能性を秘めています。「個性」に目を留めるなら、それを伸ばして、「才能」にすることだってできるのです。
そのためには、LDについてよく知り、柔軟な仕方で、子どもに合った接し方、教え方をすることが必要です。
親や先生はプレッシャーを感じてしまうかもしれませんが、難しく感じる必要はありません。簡単にいえば、子どもにしっかり目を留めて、その子の良いところを愛してあげる、ただそれだけのことなのです。
それに、今では、いろいろと使えるサービスや、協力してくれる支援団体、参考になる書籍なども数多くあります。最後に、それら役立つリンク集を載せて、締めくくりたいと思います。
▼付録:役立つリンク集
LD・ディスレクシアに役立つサイトへのリンクを集めました。
■LD・ディスレクシアに役立つアプリ・サポートツール
LDなどハンディのある人向けのアプリはかなりいろいろあって、今後、非常に熱くなっていく分野だと思います。以下に、まとめられていたサイトを紹介しておきます。
しかしながら、どんどん新しいもの、よりよいものが増加していくと思うので、LDの子どもを持つ親や支援団体と情報交換して、リアルタイムの話題についていくことが必要かもしれません。
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■LD・ディスレクシアの支援機関・関連団体
LDの支援機関や関連団体などへのリンク集です。地域によっても色々あるので、ここに掲載した以外にも、ニーズに沿って検索していただけたらと思います。
■LD・ディスレクシアの学会など
学会や専門家の養成機関
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■LDの医療機関
LDやディスレクシアを専門に扱っている医師のサイトです。
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次に挙げるのは日本小児神経学会による、発達障害を診ている医師のリストです。
あくまで自己申告のようなので、参考程度にとどめ、医師のプロフィールや病院のウェブサイト、他の人の評判などを個別に調べるようお勧めします。
特に、同じ発達障害でも、自閉症に詳しい医師、ADHDに詳しい医師など、専門分野があるので、LDやディスレクシアに詳しいかどうかは各専門機関によって異なります。
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■就労支援・社会福祉制度
LDの人の就労や社会福祉制度については、発達障害の人の場合と重なることが多いので、以下の記事の末尾のリンク集をご覧ください。
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■LDの子どもとその家族におすすめする本
最後に、LDについて学べる本を紹介します。この記事で用いた参考資料でもあります。
1.LDについてよく知りたい人に
自身もLDとADHDを持っている上野先生による、わかりやすい図解本。イラスト入りでわかりやすいので一冊目におすすめ。
2.ディスレクシアについてよく知りたい人に
教育ジャーナリスト品川さんによるディスレクシアの体験談やアドバイスをまとめた本。この「怠けてなんかない」シリーズは今のところ3作出ています。新しいものから読むのもよし、評価の高い一冊目から読むのもよし。
3.LDやディスレクシアの強みを認識したい人に
上野先生が、自分のLD体験について書いた本。ほかにLDを活かして生きよう―LD教授(パパ)のチャレンジImage may be NSFW.
Clik here to view.もあります。LDは障害ではなく個性だということがよくわかるので、自分の特性を認識できて、自信を強めくなったころにおすすめ。
4.認知特性に合った学習法を知りたい人に
発達障害の子どもの専門家である杉山登志郎先生らによる、能力のでこぼこが激しい子ども(2Eやギフテッドと呼ばれる)の教育論。