あまり世間に知られていませんが、パーキンソン病にも、若年性の患者さんが結構な人数いらっしゃるのです。
中には20歳前後で、早い人では中学・高校生の頃から発症する人もいます。(p11)
中学・高校生でパーキンソン病? 意外に思う人も多いかもしれません。一般にパーキンソン病というと、年配の人の病気というイメージがあります。
しかしパーキンソン病には、10代、20代、30代の働き盛りに発症するタイプの、遺伝的要素の強い若年性パーキンソン病(AR-JP)と呼ばれるタイプがあるのです。
若いのに、指がぴくぴくする、手足がふるえる、歩きにくく「すくみ足」が出たりする、体がこわばって強い痛みが生じる、そして他の病気が見つからず、心療内科などの治療でも一向によくならない…。それは若年性パーキンソン病かもしれません。
専門家にも知らない人が多く、正しい診断に至る道のりは非常に険しく、精神科の病気などと誤診され、漫然と効果のない治療を受けつづけている人も少なくないと思われます。
この記事では、以前も感想を書いた、 若年性パーキンソン病を生きる―ふるえても、すくんでも、それでも前へ!を参考にして、若年性パーキンソン病とはどんな病気か、どんな治療法や関連書籍があるのか、という点をまとめています。
これはどんな本?
この本は、広島国際大学の秋山智教授が、若年性パーキンソン病の患者たちの闘病記、患者会、医師や専門家の解説などをまとめた、とても多くの人が関わっている本です。
第一章は、19人の若年性パーキンソン病の男女の闘病記。
第二章は、患者支援団体の紹介。(※2015年では活動休止・縮小状態にあるのも多数)
第三章は、医療や福祉の専門家であり、当事者でもある3人の方による解説。
となっています。
若年性パーキンソン病とは何か?
この本では若年性パーキンソン病は、40歳までに発症したパーキンソン病と定義されています。
パーキンソン病の患者はだいたい10万人に1人の割合、つまり日本の患者数は20万人ほどだと推定されています。
そのうち若年性パーキンソン病は5-10%だそうです。つまり日本ではおよそ5000人から10000人ほどの若年性パーキンソン病患者がいるということになります。(p327)
あのマイケル・J・フォックスと同じ病気
若年性パーキンソン病の最も有名な患者は、バック・トゥ・ザ・フューチャーでおなじみに名優マイケル・J・フォックスでしょう。
マイケル・J・フォックスは30歳ごろに若年性パーキンソン病を発症し、8年後にカミング・アウト。俳優を引退して、パーキンソン病の啓発活動にあたりました。
現在、パーキンソン病の概念が普及し、医療の研究も進みつつある背景には、マイケル・J・フォックスの著書ラッキーマン (ソフトバンク文庫)およびいつも上を向いてなどによる理解の広がりや、彼の財団による貢献が少なからずあります。
マイケル・J・フォックスは近年、俳優業への復帰を達成しており、彼の活躍と不屈の精神は、多くのパーキンソン病患者に勇気と励みを与えています。詳しくはこちらをご覧ください。
日本では、44MAGNUMのボーカル、PAUL(梅原達也さん)が2005年に若年性パーキンソン病と診断され、バンドを離脱しています。30代で発症されたようです。
また、2015年、ダイヤモンドダイニングの松村厚久社長が、熱狂宣言という本の中で、30代で若年性パーキンソン病を発症していたことをカミング・アウトしています。
若年性パーキンソン病の7つの特徴
ここからは、若年性パーキンソン病を生きる―ふるえても、すくんでも、それでも前へ!のp327から342の岡田芳子先生の解説を参考に、若年性パーキンソン病の7つの特徴をまとめたいと思います。
岡田先生は皮膚科医ですが、ご自身も20代で若年性パーキンソン病を発症した当事者なのだそうです。
1.遺伝性のことが多い
若年性パーキンソン病は、たまたま老齢発症の普通のパーキンソン病が早く発症したものも含まれます。
しかし特に10代、20代で発症するようなものの多くは遺伝性のパーキンソン病であり、老齢発症のパーキンソン病とは原因やメカニズムが大きく変わると考えられています。
この遺伝性の若年発症のパーキンソン病は、常染色体性劣性遺伝性若年性パーキンソニズム(AR-JP)と呼ばれます。
AR-JPの50%にparkin遺伝子の変異が関わっていますが、関係する遺伝子は人によってさまざまです。
今回取り上げる若年性パーキンソン病の7つの特徴は、このAR-JPと一般的な老齢発症のパーキンソン病の違い、ということになります。
ちなみにAR-JPであるかどうか調べる遺伝子検査は、最先端のパーキンソン病の研究の数々で知られる順天堂病院脳神経内科で受けることができます。
▼晩発性パーキンソン病もある
近年の研究では、50歳ごろに発症するようなパーキンソン病の中にも、遺伝子異常が関与しているものがあることがわかっています。
それらは晩発性パーキンソン病と呼ばれ、普通の老齢発症のパーキンソン病と区別されているようです。
2. L-ドーパが長期間よく効く
パーキンソン病の薬として有名なのは「L-ドーパ」(レボドパ製剤)です。L-ドーパはパーキンソン病の症状を劇的に改善しますが、次第に効く時間が短くなるなどの問題点が生じてきます。
そのため、現在では、他の薬による治療がメインになっていて、特に65歳以下はドーパミンアゴニスト(ドーパミン受容体作動薬)と呼ばれるタイプの薬で治療を開始するよう日本神経学会のガイドラインで指示されています。
若年性パーキンソン病の人は、このL-ドーパがひときわよく効き、効かなくなるまでの期間も比較的長い、という特徴があります。
L-ドーパを服用すると、まるで病気が治ったかのような状態にさえなるので、それがきっかけで若年性パーキンソン病であるとはっきり分かることもあります。
しかし、効果が長期間維持されるとはいっても、長年飲み続けると薬の効いているときと効いていないときの落差が激しくなる、「ウェアリング・オフ現象」が強くなってきて、体調の波に苦しめられるようになります。
3.初期症状や経過の特徴
若年性パーキンソン病は、最初、片方の手や足の震えや歩きにくさから気づくことが多いそうです。筋固縮が強く、ジストニアのような原因不明の痛みを伴うこともあります。
同時に、気づかれにくい症状としてにおいを感じない嗅覚障害が発症初期から見られます。
また遺伝要因に加え、過労などのストレスや妊娠・出産などを契機に発症することがあります。
若年性パーキンソン病は確実に進行しますが、進行速度はゆっくりで、その時々によって症状の進行に合わせた生活スタイルを築いて変化していくことが求められます。
ただし、若年性であってもAR-JPでなく、老年発症のものがたまたま早く発症した場合には、急激に進行することもあると言われています。
ジストニア症状が強い場合は、ドーパ反応性ジストニア(瀬川病)の可能性もあります。
4.ジスキネジアが出やすい
すでに述べたように、若年性パーキンソン病の患者は、L-ドーパなどの薬が効きやすい反面、長年飲み続けるうちに、オン・オフの状態がはっきりした「ウェアリング・オフ現象」に悩まされやすいという問題点を抱えます。
このうち、薬が効いている「オン」の状態では何も問題がなく元気なのかというと、そうとは限らず、ジスキネジアと呼ばれる不随意運動が生じることがあります。
ジスキネジアは自分の意志とは無関係に手足がぐにゃぐにゃと動く現象で、ひどく汗をかいたり、とても疲れたりします。程度が重くなると見た目にもかなり異様です。
ジスキネジアは薬が効きすぎてドーパミン過多になっているときに出る症状で、ひどい場合には薬が効くとジスキネジア、薬が切れると動けないという極端な状態にもなりがちです。
薬のほんのわずかな量で違いが出るので、常に自分の体調やパーキンソン病の進行レベルに合わせて、薬の種類や量、飲むタイミングなどを主治医と相談しつつ、微妙に調整していくことが求められます。
後で取り上げますが、近年は、ニュープロパッチなどの貼り薬や、自分で適宜注射して調整できるアポカインインジェクターなどの新しいタイプの薬が出てきて、微妙な調整がしやすくなってきています。
5.睡眠効果がはっきりしている
若年性パーキンソン病の場合、起きてすぐは調子がいいという睡眠効果がはっきりしていることがよくあります。
朝起きてすぐ、あるいは昼寝から目覚めてすぐは、一時的に症状が改善するので、しっかりと睡眠をとれるように工夫し、ときには睡眠薬の助けを借りることも体調維持には重要です。
一般に老年発症のパーキンソン病は認知症になりやすいと言われていますが、睡眠不足はアルツハイマー病の大きな危険因子でもあります。
6.自律神経・精神症状が多い
パーキンソン病の四大症状として、振戦(ふるえ)、筋固縮、無動、姿勢反射障害があります。
しかし若年性パーキンソン病の場合は自律神経症状や精神症状が強く出るという特徴があるそうです。
自律神経症状には、便秘、汗をかきすぎる、トイレが近い頻尿、性機能障害などが含まれます。
精神症状としては、依存症、摂食障害、性欲亢進などが見られます。
こうした症状の背景には、パーキンソン病としてのドーパミン異常はもちろんのこと、パーキンソン病の発症と関わっていると思われる腸内細菌バランスの異常や、後で取り上げるような、若年患者特有のストレスも関係しているのかもしれません。
7.頭はしっかりしている。
パーキンソン病は、発症から20年以内に80%が認知症になると言われています。しかし若年性パーキンソン病の患者は、認知障害を抱えることはあまりないそうです。
最近、若年性パーキンソン病を公表した松村厚久社長もこう述べているので、認知機能障害を抱える可能性は少ないと考えられます。
むしろ今の私は、身体の自由が利かなくなっている反面、頭脳は非常にクリアな状態です。
不思議なことに、病気になる前にも増して、感性や判断の切れ味が増しているような気がします。
また、身体が不自由なため、頭で考えるよりも先に身体が反応することがなくなり、物事を冷静に捉えられるようになりました。
しかし、パーキンソン病とよく似ている病気に、三大認知症の一つ、レビー小体型認知症というものがあります。
レビー小体型認知症は、パーキンソン病と症状がよく似ていて、発症メカニズムも類似していると考えられています。レビー小体型認知症の場合は「リアルな幻視」がみられるというのが区別するポイントの一つです。
若年性パーキンソン病の患者の脳にはレビー小体は見られないことが多いので、両者は別の病気ですが、レビー小体型認知症にも若年発症のケースがあることには注意が必要です。
若年性パーキンソン病の特有の4つのストレス
若年性パーキンソン病は、働き盛りの若い時期に発症するという理由のために、老齢発症のパーキンソン病には見られないさまざまなストレスを経験する傾向があります。
ここでは4つの点を取り上げます。
1.医師に誤診される
若年性パーキンソン病はかなりまれな病気であり、多くの医師はパーキンソン病は老人の病気と考えているので、正しい診断にたどりつくまでが非常に大変です。
2.オン・オフで別人になる
若年性パーキンソン病の特徴のひとつは、体調のオン・オフがはっきりするウェアリング・オフ現象になりやすいことですが、このオンとオフでは、まるで別人と思われるほどギャップが激しいと言われています。
ドーパミンは考え方にも影響を与えるので、ドーパミン過多のオンのときは明るく積極的、自信過剰な人になったり、オフのときはうつ病かと思えるほどネガティブな人になったりします。
気分も体調もオン・オフによって大きく変動するので、周囲の人から双極性障害ではないかと思われたり、扱いづらいわがままな人とみなされたりしてしまいます。
3.仕事や家事などの社会的責任
老齢発症のパーキンソン病と異なり、若年性パーキンソン病の患者は10代から30代などの若い人たちなので、仕事や家事、子育てなどの社会的責任を抱えています。
仕事を失うことを恐れてカミング・アウトできず、病気をひた隠しにして働き続ける人もいれば、家族から理解が得られず、家事や子育てで大変な苦労を味わう人もいます。解雇されたり、離婚されたりする人もいます。
病気そのものに加えてこうした二次的なストレスに悩まされることが、若年性パーキンソン病患者の苦悩をさらに深めています。
4.結婚・妊娠・出産の悩み
若年性パーキンソン病の多くは遺伝性のAR-JPであり、しかも常に薬の服用を必要とするので、結婚・妊娠・出産に不安がつきまといます。
AR-JPは劣性遺伝子なので、遺伝子として子どもに受け継がれつつも、発症する確率は低いと思われます。しかし配偶者の同じ遺伝子を持っていれば発症しますし、稀に優性遺伝のものもあるので検査が必要です。
今のところ経験者の事例が少なく、出産のリスクがどの程度あるのかは不明です。出産までを乗り越えたとしても、子育てのストレスに耐えられるかという問題もつきまといます。
若年性パーキンソン病を治療するには?
最後に、若年性パーキンソン病を治療するのに役立つさまざまな薬や、医療的処置、日常生活での工夫についてまとめたいと思います。
L-ドーパ(レボドパ製剤)
若年性パーキンソン病では、L-ドーパが長年効くので、老齢発症のパーキンソン病とは違い、L-ドーパを軸に治療する選択肢もあります。
レボドパ単剤(レボドパのみの薬)と、レボドパ配合剤(レボドパの作用時間を長くする成分を配合した薬)がある。
一般にL-ドーパは5年で効かなくなるなどとも言われますが、注意して飲めば発症から40年近く効いている人もいるそうです。
若年性パーキンソン病の患者は、特に働き盛りの世代なので、L-ドーパの少量使用によって、生活を支えることも必要な場合があります。このあたりは主治医とメリット・デメリットを話し合う必要があります。
空腹時に飲むと急激に効いて急激に切れ、満腹時に飲むと穏やかに効いてゆっくり切れるなど、服用するタイミングの工夫も大切です。
L-ドーパの効果を安定させるCOMT阻害薬(コムタン)、MAO-B阻害薬(エフピー)、ゾニサミド製剤(トレリーフ)といった薬もあります。
ドーパミンアゴニストなど
現在主流となっているドーパミンアゴニスト(ドーパミン受容体作動薬)は、効果は弱い分、ゆっくり効いてゆっくり切れるので、L-ドーパほどの急激な変化はありません。
L-ドーパはドーパミンを直接補充する薬ですが、ドーパミンアゴニストはドーパミンの働きを補う薬です。
ドーパミンアゴニストは「麦角系」(パーロデル、カバサール、ペルマックス)と「非麦角系」(ドミン、ビ・シフロール、ミラペックスLA、レキップ、ニュープロパッチ)に分類されます。
近年は副作用の少ない非麦角系が用いられることが多いですが、眠気が強く、突然眠り込む睡眠発作などの危険な副作用が生じることもあり、注意が必要です。
また、最近、除法型のドーパミンアゴニストとして、ミラペックスLAやレキップCRが発売されています。これらはゆっくり薬の成分が溶け出すよう工夫されていて、長時間にわたり、安定的な薬の効果が期待できます。
その他、アデノシンA2A受容体拮抗薬(ノウアリスト)、抗コリン薬(アーテン、アキネトン、パーキン)、抗インフルエンザウイルス薬(シンメトレル)、ノルアドレナリン補充薬(ドプス)など、さまざまな薬が症状に合わせて使われます。
アポカインインジェクター
2012年に認可されたアポカインインジェクター(アポモルヒネ塩酸塩水和物)は、パーキンソン病におけるオフ症状を改善するレスキュー注射薬です。
自分の体調の変化に合わせて、そろそろオフになりそうだ、というときに自分で注射して、ドーパミンバランスを改善することができます。
投与後20分で効きはじめ、120分で効果がなくなります。そのため薬のつなぎとして、また外出時など意図しない場所でオフになりかけたときの緊急用として使えます。
ニュープロパッチ
2013年に発売されたニュープロパッチ(ロチゴチン)はドーパミンを経皮吸収できる貼り薬です。除法型のドーパミンアゴニストの一種で、ゆっくりと皮膚から成分が浸透するため、急激なオン・オフが生じないようになっています。
飲み薬よりも24時間の血中濃度を一定に維持しやすく、1日中安定的な効果が続くので、夜間や早朝に薬が切れて動けなくなるという問題も防げます。ただし皮膚のかぶれなどの問題が生じて使えないこともあります。
ちなみにニュープロパッチは、足がムズムズして眠れないむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)の治療にも使われています。
脳深部刺激療法(DBS)
手術によって行われる脳深部刺激療法(DBS)も、若年性パーキンソン病の治療の選択肢の一つです。
頭蓋骨を開けて脳に電極を埋め込むという理由から、最後の手段のように思われがちですが、実際にはメリットもデメリットもある治療手段のひとつという位置づけの医療です。むしろL-ドーパが効かなくなると手術の対象ではなくなります。
DBSによってパーキンソン病の進行が止まることはありませんが、うまく調整できれば、かなり症状が軽減される人もいます。
iPS細胞による治療(研究段階)
近年、iPS細胞を応用した再生医療の研究で、パーキンソン病を根本から治療するiPS治療の臨床計画が進められています。
まだ研究段階であるとはいえ、国内でも京都大学によって、2018年に臨床試験が予定されているそうです。
iPS細胞は自分の細胞から作れるという利点があり、倫理的問題も解決しているため、数年後には治療の選択肢の一つとして認可される日も来るかもしれません。
リハビリテーション
太極拳、ヨガ、ストレッチ、ダンス、Wii Fitなどで定期的に体を動かすことは症状の進行を遅らせるのに効果的だと言われています。
ただし激しい運動はドーパミンの消費を促進するので、適度な負荷にとどめます。
生活習慣
食事の内容によってL-ドーパの効き目が変化することがあります。たとえばビタミンB6、タンパク質の多い食べ物、胃腸薬などと服用すると効果が出にくくなります。
睡眠効果を活用するため、しっかりと眠れる環境を整え、必要なら薬の助けも借りることが大切です。しかしパーキンソン病の人はなかなか寝られないことが多いので、ある程度寝れたらよしとする割り切りも大切です。
過激な運動や働きすぎなど、ドーパミンを激しく消費する活動には注意が必要です。
そのほか、生活のさまざまな分野で役立つ具体的なアドバイスは、オン・オフのある暮らし―パーキンソン病をしなやかに生きるにまとめられています。
社会福祉制度の使用
パーキンソン病では以下のような社会福祉制度が受けられるので、できるだけ早く病名の診断を受け、手続きを開始するなら、生活の負担が軽減します。
■特定疾患治療研究事業による医療費助成
■身体障害者手帳
■障害年金
ただし受給にはヤールIII以上といった、ある程度の重症度が必要な場合もあります。
多くの場合、医師は社会福祉制度に詳しくなく、窓口の職員も病気の理解や知識がないため、本当は受給資格があるのに「あなたは程度が軽い」などと言われて受給に至らないこともしばしばです。
そのため、可能ならは社会保険労務士などの専門家に相談するほうが良いかもしれません。障害年金専門の社会保険事務所などは経験も豊富で、どの程度なら制度の対象となるかをよく理解しています。
医師の診察を受けるときも含め、人前での体調がそれほど悪くないように見えても、日常生活での苦労などを総合的に考えれば、受給資格に該当する可能性もあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
若年性パーキンソン病とともに生きる人のために
このブログでは、ときどき若年性パーキンソン病について取り上げてきました。それは、以前も書いたように、わたしの友人に若年性パーキンソン病の方がいるからです。
その方は10代のときから原因不明の体調不良に悩まされていて、20代で知り合ったときも、病名は不明でした。
自律神経失調などの症状から、わたしと体調が似ているように感じたので、慢性疲労症候群(CFS)の外来を紹介したところ、L-ドーパで劇的に改善したことなどもあり、紆余曲折を経て若年性パーキンソン病だと判明しました。
それで、友人のために若年性パーキンソン病の本を読み始めたのですが、読んでいて、「あのときの友人の訴えはこれだったのか!」と納得する部分が多くて参考になりました。
たとえば筋固縮による痛み。友人は体が固まって痛くて動けなくなる、とよく訴えていて、わたしとしてはジストニアとか線維筋痛症を考えたのですが、今となってはパーキンソン病のこわばりだったのだと理解できました。
また精神症状。友人は気分の変動があり、普段は超ポジティブなのに、ときどき人が変わったようにネガティブになるので不思議に思っていたのですが、ドーパミンが不安定だったことを知りました。
わたしは当事者ではないので、友人の苦労をすべて理解することはできませんが、この若年性パーキンソン病を生きる―ふるえても、すくんでも、それでも前へ!を読んで、理解できた部分がたくさんありました。
そのようなわけで、若年性パーキンソン病の方はもちろん、そのの家族やご友人にもこの本はおすすめです。
若年性パーキンソン病についてより多くの人が理解し、患者が生きやすく、カミング・アウトしやすい世の中になることを願っています。
若年性パーキンソン病を生きる―ふるえても、すくんでも、それでも前へ!については、以前に感想を書いていますので、もしよければ合わせてお読みください。
付録1:若年性パーキンソン病の本
最後に、 若年性パーキンソン病について書かれている本を紹介したいと思います。一部わたしが未読のものも含みます。
若年性パーキンソン病の一冊目におすすめ
今回参考にした若年性パーキンソン病の本。さまざまな闘病記や医師に解説も載せられている必読書。とりあえず一冊目はこれを読めばよいかと思います。
なぜかAmazonのタイトルで若年「者」パーキンソン病になっていますが…誤植?
マイケル・J・フォックスの自伝
マイケル・J・フォックスは何冊か自伝を書いています。
「ラッキーマン」はおもに発症から否認・絶望、そして受容してカミング・アウトに至るまで。
「いつも上を向いて」はオンオフ現象などと付き合いながら、いかにしてパーキンソン病と付き合っているかという近年の闘病の姿勢について。
ちなみにこのブログのタイトル「いつも空が見えるから」はこのタイトルにちょっと影響を受けています(笑)
日本の若年性パーキンソン病の男性の闘病記
ともに30代で若年性パーキンソン病を発症した日本の男性患者の経験談。わたしは未読です。
日本の若年性パーキンソン病の女性の闘病記
若年性パーキンソン病を発症した日本の女性患者の経験談。わたしは未読です。
先輩たちのアドバイス
「オン・オフのある暮らし」は、上で闘病記を紹介した若年性パーキンソン病の女性患者3人による、生活のアドバイスをまとめた本。
それぞれの闘病経験などの個人的な話はほとんど書かれていなくて、とにかく日常生活で役立つ細かいアドバイスがたくさん列挙されています。
「ピンクのハート」はマンガ家のごとう和さんによる闘病マンガ。ごとう和さんは50歳を過ぎてから診断されたので若年性ではないようですが、ほのぼのとした温かい雰囲気のマンガに元気づけられます。
付録2:若年性パーキンソン病とADHDに同じリスク要因?
個人的に少し気になっていたことなのですが、パーキンソン病とADHDはどちらもドーパミンの問題だとされています。パーキンソン病とADHDには何らかの関連があるのでしょうか?
パーキンソン病とADHDに共通点 | Medエッジ というニュースに気になることが書かれています。
研究グループが、パーキンソン病とADHDの両方を患った人を対象に遺伝子を解析した結果、遺伝子の変異体を2つ発見した。
どちらの変異体についても、ドーパミンの細胞での再利用がうまくいかなくすることに影響していた。
早期発症のパーキンソン症候群、ADHDが共通したリスク要因を持つ可能性があるようだ。
早期発症のパーキンソン症候群、つまり若年性パーキンソン病とADHDには同じリスク遺伝子が関与している可能性があるかもしれません。
ちなみにわたしの友人の若年性パーキンソン病の人は、ADHDの診断にまでは至らないと思いますが、どちらかというとADHDの傾向が少しある人です。
どこでドーパミンが不足しているかが異なる
しかしパーキンソン病とADHDは、同じドーパミンという神経伝達物質が関与しているとはいっても、どこで異常が生じているかは異なっています。
パーキンソン病はドーパミンを産生するおおもとの黒質のドーパミン神経神経が減少することが原因です。ADHDは、ドーパミン伝達が滞り、ドーパミンの不均衡が生じていることが原因だと考えられています。
ドーパミンの通る道を高速道路にたとえるなら、パーキンソン病は、車そのものが少なく過疎っている状態、ADHDは渋滞して滞っている状態といえるかもしれません。ですから、生じる症状なども違います。
実際、わたしはADHDで、どんどん興味が移り変わり、新しいものに即座に飛びつくような新奇性探求や、部屋が散らかったり、予定を立てられなかったりといった特徴がありますが、若年性パーキンソン病の友人にはそれはありません。
同様に若年性パーキンソン病の友人が持っているような症状はわたしにはなく、わたしは彼のように真面目で責任感の強い人間でもありません。
ですから、同じようにドーパミン関係のリスク遺伝子が関与しているとしても、ADHDと若年性パーキンソン病は別物と考えてよさそうです。
どちらの薬もドーパミンを増加させるが…?
パーキンソン病とADHDの薬は、どちらもドーパミンを増やすとされていますが、まったく別の種類のものが使われています。
もし、ADHDの薬をパーキンソン病に使ったり、パーキンソン病の薬をADHDに使ったりしたら、効果は見られるのでしょうか?
主治医に尋ねたところ、確かに効果がある可能性はあるが、ADHDはもともと子どもの病気として、パーキンソン病は老人の病気として研究されてきたので、両者の関係を調べた論文を見たことがなく、わからないということでした。
今回取り上げたニュースは、 英国、米国、デンマークの大学の研究グループによる2014年の報告ですが、共通点や薬の用い方について調査は、今後研究が進む分野かもしれません。
付録3:パーキンソン病とむずむず脚症候群の関連は?
近年、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)の治療薬として、パーキンソン病と同じ薬、ビ・シフロールやニュープロパッチが適応されました。
原因もやはり、ドーパミンが関係しているとされていますが、ADHDやパーキンソン病と関係があるのかどうかは不明です。ADHDにおいても、パーキンソン病においても、衝動性の強い患者にはRLSが見られやすいという調査もあります。
パーキンソン病でRLSが多いという統計については、パーキンソン病の別の症状やアカシジアを含めているため多く見えるだけだけという意見もあり、こちらも今後の研究を待つ必要があると思われます。