2016年1月14日の厚生労働省の先進医療会議において、脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)の代表的な治療法であるブラッドパッチ療法を保険適用すべきだと判断されたというニュースがありました。
近々開かれる中央社会保険医療協議会で正式に承認される見通しだということです。
髄液漏れ:治療法ブラッドパッチ、保険適用と結論…厚労省 - 毎日新聞
これによって、患者の金銭的負担が減るだけでなく、ついに国の医療保険の対象となる病気として認められることになります。交通事故後の後遺症をめぐる一部の裁判にも影響が出るかもしれません。
医学会から見過ごされていた脳脊髄液減少症
脳脊髄液減少症は、もともと低髄液圧症候群として研究されていましたが、当時は髄液が漏れだすことはめったになく、比較的まれな病気とみなされていました。
しかし2000年ごろ、篠永正道先生らが、実は交通事故後のムチ打ち後遺症の患者などに広く見られる病態であり、患者たちが放置されていたということに気づきました。
慢性疲労症候群や線維筋痛症と診断されていた人の中にも、脳脊髄液減少症として治療を受けると改善する人が少なくなく、このブログでも関係する疾患の一つとして注目してきました。
脳脊髄液減少症は一般に、交通事故やスポーツなどの衝撃をきっかけに発症し、立ち上がったときに激しい頭痛が生じると言われています。
しかしこれといったきっかけがない症例や、起立性頭痛がない症例(1割程度といわれる)もあるので、慢性的な疲労感や痛みに苦しんでいる人は、一度は可能性を疑ってみるべき病気だといえます。
大人の患者だけでなく、起立性調節障害や心の問題とみなされている不登校の子どもの中にも、実際には脳脊髄液減少症だったというケースが少なからず存在しているようです。
脳脊髄液減少症の症状、診断方法、治療法などは篠永正道先生による脳脊髄液減少症を知っていますか―Dr.篠永の診断・治療・アドバイスに詳しく書かれています。
また「なまけ病」と言われて~脳脊髄液減少症~ (書籍扱いコミックス)では、子どもと大人のそれぞれのケースについて、直面する問題がマンガの形でわかりやすく描かれています。
脳脊髄液減少症は、これまでの疾患概念を組み直した新しい病気だったため、患者も研究する医師も、周囲からのさまざまな無理解や偏見にさらされてきました。
長年の苦闘が報われて、いよいよ正式に保険適用の病気として認められるということは、本当に感慨深く思います。
ただし、日本共産党のニュースによると、保険適用の対象となるのは、あくまで画像で髄液の漏れが認められる「脳脊髄液漏出症」のようなので、まだまだスタートラインにすぎないとも言えそうです。