食べもの通信2013年4月号に「“早寝”が子どもの健康な脳をつくる」という特集が組まれました。
子どもの睡眠不足は、学習意欲の低下、性的な早熟傾向、発達障害、アトピー性皮膚炎とどのように関係しているのでしょうか。
子どもの睡眠について研究してこられた三池輝久先生をはじめ、多数の先生が記事を書いておられるので、参考になった部分について、簡単にまとめておきたいと思います。
類例のない睡眠不足がもたらす健康障害
まず、日本の子どもの置かれている睡眠環境が非常に特殊であり、世界的に見て類例のないものである、ということに注意が換気されています。
人間は、睡眠をとることで脳を発達させてきました。複雑な脳は睡眠なしでは働かず、脳神経の8割は5歳までに完成します。
しかし、日本の乳幼児の睡眠時間は世界一短く、私たちが想像する以上に深刻な事態を引き起こしています。
子どもたちの夜ふかし、睡眠不足の生活習慣が、脳の発達や働きに悪影響を与え、学習意欲や能力の減退、発達障害の原因の1つと指摘されています。 (p5)
表) 世界一短い日本の子どもの睡眠時間(3歳以下の乳児の平均) ニュージーランド 13時間17分 日本以外のアジアの国々 13時間 アメリカ・ヨーロッパ・南アフリカ 12時間16分 日本 11時間37分
その後、幾人かの先生方が、10ページほどにわたって子どもの睡眠の周辺問題について解説しておられます。
子どもが慢性的な睡眠不足になると…
集中力・記憶力が低下する
日本の子どもたちの睡眠時間は世界的に見て短い。メラトニン濃度を調べると、睡眠不足のため、平日の朝6時半でも、夜9時半と同じくらいの眠気を抱えていて、朝起きられない。特に休日明けの朝はさらに眠い様子さえ観察される。
慢性的な睡眠不足では、朝起きるために体の準備を整える抗ストレスホルモン、コルチゾールの分泌リズムが変わってしまう。そして、記憶力・集中力も低下する。
物事を判断したり考えたりする前頭葉の神経ネットワークの密度は5歳ごろにピークに達するので、特に乳幼児期の睡眠不足は脳への影響が非常に大きい (p6-7,12)
性的成熟が早まる
メラトニンには性腺抑制作用がある。思春期には脳神経のネットワークが成熟し、第二次性徴が始まり、男性の脳、女性の脳が形成されるが、この時期に睡眠不足になり、メラトニンの分泌が抑えられると、性的成熟が早まる。
精神的に不安定な思春期に、肉体と脳が未熟なまま性的成熟だけ早まると、心身のアンバランスを起こしやすい。メラトニンが不足すると、抗酸化作用や抗がん作用も低下する (p8-9)
発達障害の一因になる
幼児期から小学校低学年にかけては、連続して夜10時間の睡眠が必要だと分かってきた。つまり朝7時に起きるなら、夜9時には就寝しなければならない。
発達障害の増加の背景には農薬や環境汚染物質の影響が指摘されているが、睡眠不足も影響していると考えられる。
夜ふかしと慢性化した睡眠不足が進行すると、(1)脳神経の疲労が蓄積し、脳の正常な発達に大きな支障が生じ、(2)生物時計が混乱し、慢性的な時差ぼけになりやすくなる。
脳神経に異常をきたしていると、疲労感が著しくなり、どんなに両親が努力しても眠れない状態なってしまう。ADHDや自閉症を含めた発達障害はおもに新生児期・乳幼児期に脳の働きを調整する生体時計の働きが狂ってしまうことに主な原因があるのかもしれない。(p9-11)
アトピ―性皮膚炎になる
ガイドラインにそった塗り薬による治療では、なかなかアトピーが治らない人が多い。アトピーの症状が悪化する大もとは体の自然なリズムの乱れである。生活リズム、生体リズムが整ってくると、自然に症状がとれてくる。
木に例えた場合、枝先の症状にいくら手当をして一時的に押さえても治らない。幹の中心、すなわち生活リズムの根幹である睡眠を改めないとアトピーは治らない。発生学的に皮膚と神経は同じ所から発生し、連動しているので、感情や自律神経のバランスも整う。(p13)
ほかにもいろいろ示唆に富む内容が書かれていて、睡眠がさまざまな問題に関係するということを再認識できました。
睡眠は不足すれば大きな問題をもたらします。しかし、睡眠の大切さを知っていて、知識に基づいて生活を意識的に改善し、ときには医療の助けも積極的に求めるなら、現代社会を生き抜く上で、有利な立場に立てるのではないかと思います。
睡眠不足が心身に与える影響について、さらに詳しくは、この記事の下部に表示される関連記事もご覧ください。