いつも疲れていて疲れが取れない。その原因はアドレナル・ファティーグ(副腎疲労症候群)かもしれません。
前回のエントリでは、アドレナル・ファティーグの検査法を解説しました。最も的確な検査は唾液ホルモン濃度を調べることであり、そのほかに、個人で健康暦年表をつくることも役立ちます。
この4番目のエントリではアドレナル・ファティーグを治療するためのヒントについて書きたいと思います。情報は書籍医者も知らないアドレナル・ファティーグ―疲労ストレスは撃退できる!にもとづいています。
アドレナル・ファティーグを克服する食習慣
アドレナル・ファティーグには魔法の薬は存在しません。しかし回復を大いに促す重要な生活習慣の変化と栄養サプリメントが存在します。(P114)
ずっと昔から、副腎疲労の回復には休息が必要であることは知られていたが、アドレナル・ファティーグが必要とする休息とは、横になることで得られるものではない。
それはむしろ、自分のために立ち上がること、そして生活の中から有害なストレスを除去する、または最小限に抑えることから得られるものである。(P116)
アドレナル・ファティーグの最も重要な対処法は食習慣の変化です。それで、このエントリでは食事とサプリメントに注目します。
低血糖症に注意する
アドレナル・ファティーグと機能性低血糖症は深く関係しています。
ほぼ百年前から、低血糖を患う人はアドレナル・ファティーグも患っている場合が多いことが知られてきた。アドレナル・ファティーグを患う人にはほぼ必ず何らかの不規則な血糖パターンがあり、その中でも低血糖症が最も一般的であることも知られている。(P328)
ストレスが強くなると、エネルギーの需要が高まるため、インスリン濃度が上がり、糖を求めます。しかし副腎疲労症候群の状態では、血中コルチゾールが低いため、肝臓がグリコーゲン(貯蔵血糖)をグルコース(血糖)に変換して供給することができないのです。
したがって、自然で良質な食物を食べることにより、血糖値が低くなりすぎるのを防ぐ必要があります。どんな食べ物をいつ食べるかがとても重要なのです。
何を食べるか
9つの方針が書かれています。(P184)
(1)多種多様な自然食品を食べる
アドレナル・ファティーグを患う人は、もともと活動的な人で、副腎機能の低下を補うために、コーヒー、コーラ、ファストフードなどを好む傾向がある。そして、甘いものより、エネルギー持続に効果があるとして、高脂肪のファストフードを食べて自分を駆り立てる。(P156)
低血糖症の人の食事療法のポイントは、ジェットコースター現象を避ける、ということです。血糖値を急激に上げるもの(あまりに早くエネルギーに変換される食べ物)は、すぐに体を疲れさせます。
避けたいものとして、精白粉や砂糖を使った食品は、食品への強い欲求と衝動性という中毒をもたらします。食物を分解する消化液を分泌する能力が時間とともに低下して眠気も生じます。(P187)
チョコレートやコーヒーにはカフェインが含まれており、副腎が過剰に刺激されてアドレナル・ファティーグが悪化します。アルコールももちろんよくありません。(P189,205)
自然食品といっても、牛乳は多くの人に乳糖不耐症があるため、勧められません。むしろヤギ乳やライスミルク、豆乳、ナッツミルクを飲むほうが良いでしょう。緑茶や麦茶やハーブティーもよい飲み物です。(P193-205)
(2)すべての食事に脂肪、たんぱく質、炭水化物の供給源を組み合わせる
望ましいのは、脂肪、たんぱく質、でんぷん質の炭水化物をみんな一緒に摂取することです。これらはグルコースに変換されるスピードがそれぞれ異なります。
でんぷん質の炭水化物はかなり早く、たんぱく質はそれより遅く、脂肪はもっとも長くかかって変換されるため、エネルギーが長く持ち、体への負担も少なくて済みます。(P161)
たんぱく質を含む肉類や卵、乳製品を食べて胃部にガスや膨張感が生じることもありますが、消化剤を服用してでも、できるかぎり食べるのが望ましいとされています。(P163)
菜食主義者の場合は、毎回の食事ごとに卵、味噌、海藻、ヨーグルトを食べ、穀物を豆類と種、ナッツと組み合わせることができます。(P164)
(3)多くの野菜、特に色鮮やかな野菜を食べる
毎日の食事に多種多様な野菜を含めるべきです。ビタミン・ミネラル、抗酸化物質、繊維が摂取できます。
特に摂ると良いのは、海藻と食用芽(スプラウト)です。昆布、グリーンオリーブ、デュルセ、完熟オリーブ、赤唐辛子、ツルナ、スイスチャード、ビートの葉、セロリ、ズッキーニなどが良いそうです。
副腎機能の回復に役立つことが証明されている野菜スープのレシピが載っています。
副腎回復スープ
さやいんげん 450g、セロリのみじん切り カップ1(250ml)、ズッキーニの薄切り 1つ分、玉ねぎのみじん切り 中1個、トマトスープ カップ1、ハチミツ 大さじ2、パプリカ 小さじ1 チキンコンソメ カップ1、胡椒 少量 これらを野菜が柔らかくなるまで1時間煮込む。(P171)
(4)おいしいと思う程度の塩を食物に加える
アドレナル・ファティーグの人は、塩分を多くとりたいと感じます。これは、体内のナトリウム、カリウム、水分の量を制御するアルドステロンが不足するためです。体内のナトリウムが減るため、塩が欲しくなるのです。(P337)
塩分は高血圧をもたらすとして控えめにされがちですが、アドレナル・ファティーグの人の大多数は低血圧です。塩は血圧を上昇させるだけでなく、細胞内のナトリウム損失に関連する他の機能回復にも役立つため、すなおに塩をとるべきです。(P160)
ナトリウムが減っていてその濃度を維持できないため、水を飲むと、さらに血液中のナトリウムが希釈されます。水を飲む時にも塩を加えることが必要です。(P196,339)
副腎機能が弱っていると、ナトリウムだけでなくカリウムへの欲求も生まれます。しかしカリウムを含む飲食物(バナナや干しいちじくなどの果物、果汁、炭酸飲料、市販の電解質補給飲料)などを摂取すると、さらにバランスが崩れて体調が悪くなります。
最もよいのは、水、塩、カリウムが正しく組み合わされたものを食べることです。水と一緒に、昆布粉をかけた食品を食べることや、塩を加えた野菜ジュースを飲むことが勧められています。(P162,340)
(5)でんぷん質の炭水化物の供給源として、主に全粒穀物を食べる
でんぷん質の炭水化物は主に穀類や根菜に含まれています。特に、未精製の炭水化物、玄米や全粒穀物を食べるなら持続的なエネルギーが得られます。
ただしアドレナル・ファティーグを患う人はたいてい、朝にシリアルを食べると、たとえ全粒穀物が原料であっても、調子が良くないので注意が必要です。(P166)
血糖値に影響する数値としてグリセミック指数(GI)が参考になりますが、食品の栄養価やエネルギーの持続性は数値に現れないので注意が必要です。(P168)
(6)穀物に豆、種、ナッツを組み合わせる
種やナッツは必須脂肪酸のよい供給源となります。すべて生のまま購入し、酸化を防ぐため冷凍庫で保存します。生のまま食べるのがよく、ローストしたい場合は自分でドライローストします。(P181)
市販のローストナッツや油であげたものは、油の品質が低く注意が必要です。
(7)朝は果物を食べない
低血糖症の人は、特に午前中には、果糖やカリウムを含む果物を避けるべきです。血糖値が急激に上がってしまい、ナトリウムとのバランスも乱れます。
ジュースは低血糖症の患者にとっては勧められない飲料です。(P196)
食べても良い果物は、パパイヤ、マンゴー、プラム、梨、キウイ、りんご、ぶどう、さくらんぼです。
避けたい果物は、バナナ、レーズン、デーツ、いちじく、オレンジ、グレープフルーツとのことです。(P172)
(8)毎日、穀物や野菜、肉に大さじ1-2の必須脂肪酸の多い油を混ぜる
必須脂肪酸の不足は健康に有害です。必須脂肪酸には、オメガ3脂肪酸のグループに属するαリノレン酸と、オメガ6脂肪酸のグループに属するリノール酸があります。
必要な必須脂肪酸を摂取するには、以下のようなヒントがあります。(P178)
■フラックスシードオイルとサンフラワーオイルかひまわり油を1対1で混ぜて、毎日大さじ1-2を食べる直前にかける。
■低温で圧搾された、新鮮で生の未精製の油、遮光容器に入った有機栽培の油だけを買い、冷蔵庫や冷凍庫で保存する。
■硬化油や半硬化油(マーガリンなど)を避ける。揚げ物を食べるのはときたまにし、何度も油を使用したレストランでの食事は避ける。
■オメガ3脂肪酸の供給源として、冷水海水魚(マグロ、サバ、メカジキなどの水銀含有量の多い魚は避ける)をとる。オメガ6脂肪酸の供給源として、新鮮な種やナッツを食べる。
(9)高品質の食品を食べる。食べ物は自分のからだになる
「ごみを入れれば、ごみしか出てこない」のであって、「ごみ」を食べれば、アドレナル・ファティーグを患うことになります。(P300)
いつ食べるか
軽度の副腎機能低下を患っている人の多くは、長時間まともな食事をしません。しかし血糖値が低くなるほど、平常値に戻すのにより多くのコルチゾールが要るため、副腎にさらなる負担がかかります。(P155)
朝はコルチゾールがピークに達するため、食欲が沸かないかもしれません。肝機能も弱いため、午前中は食物への嫌悪感がある人もいます。
しかし、前夜に失われたグリコーゲンを補給するため、午前十時以前の食事がきわめて重要である、と書かれています。この点は1日2食を推奨する甲田療法と相反してしますが、わたしとしては、生体リズムを守る観点からも、朝食は必要だと思います。(P158)
また朝食を正午より早めにとることは、遅めの昼食よりも望ましいとされています。11-12時半に食べることができます。
副腎機能低下を患っている人は午後3-4時にコルチゾール濃度が低下するため、午後2-3時に食物をとり、夕食も午後5-6時にはとるべきです。就寝前には軽食を二口くらい食べます。
おなかが空きすぎたり、低血糖症の症状を少しでも感じたりしたら、それは食事時間の開きすぎです。
食べ物により、良質の栄養が供給されるなら、食べる量は少なくてもかまいません。(P159)
食物アレルギーと過敏症に気をつける
副腎はアレルギーによって引き起こされるヒスタミンや炎症性物質の放出を抑制し、アレルギー反応ほ抑えます。よってアレルギーがあると、副腎が弱く、疲弊しやすいといえます。特に食物アレルギーについて知っておくのは大切です。(P206)
食物アレルギーを明らかにするには以下のような検査と調査が役立ちます。(P209-225)
■ELISA(酵素免疫吸着)食品パネル検査…多数の食品のアレルギーを調べる。
■細胞性免疫食物反応検査…遅延型フードアレルギーを調べる。
■観察法…多様な食品に対する反応を観察し、疑いのある食品を2週間摂取しない。その後もう一度それを食べてみて、影響を観察する。食品の目星がついているときに有効。
■内省的日誌法…食後2、3時間以内に反応を起こした場合に症状と食べたものすべてを記録する。記録がたくさんたまったら見返して、共通する食物を洗い出す。食後すぐ反応するが、ときどきしか生じない食物過敏症に有効。
■食物・反応日誌…食べたものすべてと、現れた症状すべてを記録する。内省的日誌法と異なり、反応が出たときだけでなく、すべてを網羅するように努める。無関係に思えるものも書き記し、パターンを探す。
■二日酔いに注目する…アルコールを摂取していないのに二日酔いのような体調が生じるときは、前日の食べ物が原因であることが多いので書き出す。対処法としては、小さじ半分の塩を加えた水を飲むと良い。
■コカ脈拍検査…食物アレルギーが起こると副腎が反応し、脈拍が上がる。食前、食後の脈拍を調べてみることで、反応している食べ物がわかる。しかしアドレナル・ファティーグが重い場合は副腎は反応できないほど疲れているかもしれない。
■食物中毒症…食べるのをやめられない食品があれば中毒になっているので、最初から食べるべきではない。
役立つサプリメント
最後に、役立つ栄養サプリメントを挙げます。
ビタミンC
ビタミンCはアスコルビン酸とバイオフラボノイドの複合体として存在します。サプリメントとして摂取する場合も両方が含まれていることが必要です。
ビタミンCは水溶性で素早く使い果たされたり、排出されたりするため、1日に数回摂取が必要です。ふつう1日に2-4gが必要で、人によっては15-20g要ることもあります。
食品から得られる量では不十分なので、栄養サプリメントとして多量の補う必要があります。
歯磨き時に出血したり、あざができたりするなら、ビタミンCが欠乏しています。(p230-234)
ビタミンE
ビタミンEは副腎細胞を傷つけるフリーラジカルを無力化します。ビタミンEのサプリメントのほとんどは、dアルファ・トコフェノールの形態ですが、副腎の回復に必要なのは、混合トコフェノールのサプリメントであることに注意が必要です。(p235-236)
1日につき、800IUが必要です。
ビタミンB群
パントテン酸1500mg、ナイアシン25-50mg、ビタミンB6 50-100mg、そしてそれらの働きを高めるビタミンB複合体が必要です。夢を思い出すのが困難であればビタミンB6が不足しています。ビタミンB群は全粒穀物、ビール酵母、味噌などにも含まれています。(p237-239)
ミネラル
マグネシウムは、ビタミンCとパントテン酸と連携して副腎を強化します。マグネシウムは玄米、豆、、ナッツ、海藻などに含まれます。
カルシウムは牛乳や乳製品から摂るより、ゴマやケールなどの緑色野菜、豆、ナッツ、昆布に含まれれているものを摂るほうが賢明です。
微量ミネラルはスプラウトやベビーリーフ、海藻や、それらを原料とするサプリメントから摂取できます。(p240-242)
ハーブ
アドレナル・ファティーグからの回復に役立つハーブには次のようなものがあります。(p244-249)
■甘草…コルチゾールの濃度を高め、低血糖症の症状の緩和に役立つ。
■アシュワガンダ根と葉…紀元前1000年から使われているアーユルベーダの薬。コルチゾール濃度が高い場合も低い場合も正常に戻すことが知られている。
■朝鮮人参…男性のコルチゾール濃度を高める
■エゾウコギ…ダイバーやオリンピック選手、宇宙飛行士が用いるストレスへの耐性を高めるサプリメント。副腎の正常化作用がある。
■生姜…副腎にとっての適応促進薬。
■イチョウ葉…副腎細胞をフリーラジカルから守る。
これらに対して、マオウ、コーラの実、濃い紅茶は取るべきでないハーブです。
そのほか、日本ではあまり聞きませんが、副腎細胞エキスの効果が、一章をまるごと割いて語られています。これは、動物の副腎などから抽出した液体か粉末の細胞エキスです。(p250)
また、自然形体のヒドロコルチゾンやDHEAを用いたホルモン補充療法についても説明されています。これは技術のいる領域なので医師の助けが不可欠です。(p266)
アメリカでは、著者の考案したサプリメント、「スーパー・アドレナル・ストレス・フォーミュラー」「アドレナル・C・フォーミュラー」が販売されているそうです。(p268)
今回書いた、食生活とサプリメントの調整が、アドレナル・ファティーグに対処する方法の根幹です。最後のエントリでは、アドレナル・ファティーグに対処するそのほかのアドバイスをまとめます。