CFS患者が、個人として、未来のためにいまできることが何かあるでしょうか。わたしたちにはできることが非常に限られているので、その質問は非常に大切です。
未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学 集中講義II という本に、ちょこっとだけ慢性疲労症候群(CFS)の方の経験談が載せられていました。
慢性疲労症候群のもとで、何ができるかを考えるときにちょっとしたヒントになるかもしれません。
もうひとつ勇気づけられる例を紹介しましょう。エリス・バウアーは、ブログ「Simply Recipes」を書いています。
毎月数百万人が訪れるこのブログは、世界的にも人気の料理サイトです。でも、最初からそうだったわけではありません。
エリスは昔からの知り合いですが、慢性疲労症候群で体調を崩した時には本当に辛そうで、気の毒でした。症状は重く、ベッドから起き上がることもままならない日々でしたが、唯一やる気になれたのは文章を書くことでした。
2003年のことで、ブログが登場した頃でした。エリスはブログを書いてみることにしました。でも、ひとつではありません。テーマは、音楽、書評、マーケティング、雑感、それに家族のためのレシピでした。
始めてまもなく、いくつか魅力的な発見がありました。まず、音楽の本質を言葉で捉えるのはむずかしい。つぎに、本を読んで書評を書くのは、おそろしく時間をとる。そして最後に、公開する気のなかった料理のレシピのアクセス数がどんどん増えていた、ということでした。
…こうした反応を踏まえて、エリスはほかのブログは一切やめて、料理一本に絞ることにしました。
エリス・バウアーは、その後もブログに対するフィードバックをきちんと検証し、何が人気のある記事なのか、どんなコメントが寄せられているのか、といったことをすべて確かめました。そして、自分のサイトを読者が好む人気のあるものに仕上げ、収益を得ることができました。
エリス・バウアーさんのホームページはこちらです。
Simply Recipes Food and Cooking Blog |
引用した文章の中にある、「症状は重く、ベッドから起き上がることもままならない日々でしたが、唯一やる気になれたのは文章を書くことでした」という部分の、「唯一やる気になれること」は一人ひとり違うと思います。
CFSになった人は、あらゆる分野において自分の能力は失われてしまったと感じるかもしれません。しかしよく探してみると、どこかに残されている能力があり、CFSのもとでも楽しめることが残っているかもしれません。
自分の「唯一やる気になれること」はエリス・バウアーのように、収益につながるようなものとは限りませんが、やってみる価値はあります。
NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会(ME/CFSの会) さんが翻訳された、「筋痛性脳脊髄炎(ME)のための国際的合意に基づく診断基準」の中にこんな一文がありました。
自分の活動に優先順位をつける患者は、生活の他の面における活動を中止又は大幅に削減することで、一つの重要な活動を行うことが可能となる。
健康な人ほど多くのことを手広くやってみるだけの体力や能力がもうないなら、自分にできる唯一のことに、残された精力を注ぎ込んでみるのもよいのではないかと思います。
わたし自身は、ブログを書いたり、絵を描いたりすることに自分の体力を傾けてきました。それらは、何らかの形でネット上に残り続け、目で見ることのできるものであるがゆえに、やってきてよかったと思っています。
最近気づいたことですが、このブログは、去年11月26日に、通算100万PVを達成していました。自分の書いた文章に、100万回もアクセスしてもらったというのは、とても驚くべきことでした。
エリス・バウアーの月間数百万UUから比べると非常に微々たるものですし、そもそもうちのブログはコメントなどのフィードバックを全然受け付けていないので、これ以上伸びることはないでしょう。
でも、CFSというマイナーなテーマで、いろんな人に読んでもらえたというのは嬉しいことです。読んでくださった皆様、ありがとうございました。
同時に、これらの月日に、自分にとって今できることに注意を集中し、ある程度の成果を残せてよかったと思います。CFSのわたしにとって、多くのことはできないけれど、すべてのことができないわけではない、という自信をもつことができました。
わたしにとって、「未来を発明するために今できること」がまだあるのかどうか、何をするのが最善なのかははっきりとわかっていませんが、「唯一やる気になれること」を探して取り組んでいきたいと思います。