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慢性疼痛・線維筋痛症にマインドフルネスが効果的

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マインドフルネス訓練は乾癬や線維筋痛症などストレスによって悪化する病気の症状を軽減できる。(p49)

維筋痛症など慢性疼痛に対するマインドフルネスの効果について、日経サイエンス2015年01月号 に書かれていました。

この号の特集は「瞑想」についてであり、フォーカス・アテンション瞑想、マインドフルネス瞑想、慈悲の瞑想の3つが扱われています。そのうちマインドフルネスについては、医学的治療「マインドフルネスに基づくストレス低減法」(MBSR)として特集が組まれています。

その特集では、マインドフルネスによる、慢性疼痛の軽減などについてのデータや、脳領域の変化など、いろいろな情報が書かれています。

マインドフルネスは、宗教的な瞑想から発展したものととらえるか、 逆に一般的な注意力の鍛錬と捉えるかは人によって異なるかもしれませんが、提唱者のジョン・カバットジンは禅の思想が発想に関係していたことを認めています。

そのようなわけで、受け入れるかどうかは人それぞれですが、治療法の一種として、簡単に概要を紹介したいと思います。

また、注意力を鍛えて不快刺激に対処するというマインドフルネスの効能と関係して、注意力と線維筋痛症・慢性疲労症候群の関係や、注意力を鍛える方法についても簡単に触れています。

マインドフルネスとは

マインドフルネスは注意力散漫とは対照にある状態です。現在を評価したり、感情的に反応したりはせず、今の瞬間に集中する技術です。

世界250の医療機関で行われていて、注意を払う脳の能力を高めることで、慢性疼痛などに効果があります。

マインドフルネスの医療への応用は、1970年代、マサチューセッツ大学医学部の生物学者、ジョン・カバットジンが「マインドフルネスに基づくストレス低減法」(MBSR)という外来患者向けプログラムとして開発したのが始まりです。

MBSRでは、(1)注意を集中する能力 (2)現在の思考・感情・感覚をモニタリングする能力 を訓練します。

その後、1991年にZ・V・シーガル、J・M・G・ウィリアムズ、J・D・ティーズデールらによって「マインドフルネス認知療法」(MBCT)が開発されました。

東洋の宗教などで見られる瞑想は、マインドフルネス状態を強めるものであったと考えられています。

マインドフルネスは、グーグル、インテル、ゴールドマン・サックス、P&Gなどの企業も取り入れています。

マインドフルネスと慢性疼痛

MBSRの最初の臨床応用の一つは慢性疼痛でした。1985年、カバット・ジンらは90人の慢性疼痛患者に8週間のプログラムを組んだそうです。

すると、実験後、痛み、ネガティブな気分、不安は軽減し、効果は15ヶ月続きました。

対照的に神経ブロック、理学療法、抗うつ剤の患者では、有益な効果は見られませんでした。

なぜマインドフルネスが痛みに効果があるのか、という点は、別の研究で示されています。

さまざまなテストによると、マインドフルネスの訓練をした人は、自分の注意を意識的にある場所に向け、注意力をコントロールする能力が向上していました。

たとえば、事前に何も知らされていない状況で、目印を検出する能力が高まっており、周囲で起きている事柄に対する意識が強まっていました。

このような結果を受けて、慢性疼痛に対するマインドフルネスの効果についてこう書かれていました。

身体のうち痛みが生じている特定部位に注意を意図的に振り向けると、それらの部位の感覚がかすかに揺らぐのに気づいて、常に変わらない“一枚岩”だと思われていた慢性の痛みが絶えず変動する感覚に瓦解するかもしれない。

…心理的ストレスや社会的ストレスの緩和でも…現在の瞬間への集中と、悲しみや孤独をモニターすることが、感じられる苦しみを最小化するのに寄与しているのだろう。(p49)

前述のように、(1)注意を集中する能力 (2)現在の思考・感情・感覚をモニタリングする能力 の向上によって、漠然としていた不快感が和らぐようです。

このモニタリングとは、自分が「物語」の主人公である状態から、客観的に自分の思考や感覚を観察する状態への変化を示しています。

またマインドフルネスを実践している人はワーキングメモリの容量が大きくなり、その結果注意力を集中しやすくなっているとも書かれています。

マインドフルネスの方法については、この雑誌のp50で説明されているので、興味のある人はご覧ください。

あるいは、マインドフルネスについて説明された詳しいThe Japanese Journal of Health Psychologyのpdfも参考になります。

The Japanese Journal of Health Psychology, 2008, Vol.21, No.2, 57-67 - _pdf

 

注意力と線維筋痛症、慢性疲労症候群

この雑誌に書かれていることから外れますが、注意力を鍛えることで、慢性疼痛が和らぐというのは、このブログで以前とりあげた、ADHDと慢性疲労症候群や線維筋痛症との関わりを思い出させます。

【3/20】ADHDの子どもは慢性疲労症候群になりやすい?| いつも空が見えるから

この記事では、ADHDの薬を用いて、注意力散漫な脳機能を改善することで、慢性疲労症候群や線維筋痛症が改善する場合があることについて触れました。注意力散漫だと、不快刺激を隔離できないので、痛みや疲労を感じやすいと考えられています。

注意力散漫な状態というのは、何もADHDの人でなくても経験します。むしろ、訓練しないとマインドフルネスな状態は身につきません。

ですから、どんな人であっても、注意力のトレーニングをすることで、不快な症状と付き合いやすくなる可能性がありそうです。

注意力散漫を解消するにはどんな方法があるのでしょうか。

今回読んだ雑誌には、こう書かれていました。

ビデオゲームや薬剤も集中力を強めうるが、マインドフルネス訓練は内的・外的刺激の海のなかで注意力を向ける先を自在に変えながら、その瞬間に起きていることをはっきり認識できる能力を高める点でユニークだ。(p44)

このことからすると、以下のような点が注意力散漫を解消するのに役立ちます。

(1)マインドフルネス

注意力を鍛える一つ目の方法は、もちろん上記に上げたマインドフルネス認知療法となります。禅の思想など、宗教的な背景に抵抗のない人は取り組んでみることができます。

上記で書かれているように、他の方法とは一線を画すものといえそうです。少なくとも、注意を集中する力は他の訓練でも身につくかもしれませんが、自分をモニタリングする力はマインドフルネス特有のものでしょう。

(2)ADHDの薬

次に薬剤があります。以前に記事でとりあげたとおり、子どものときからひどい不注意を示す人の中には、ADHDの治療で改善する人もいます。

(3)フロー体験

ビデオゲームも挙げられていますが、これはビデオゲームそのものがいいというよりも、フロー体験を得やすい活動の一種としてビデオゲームが例に挙げられているだけでしょう。

先日ブログでとりあげたフロー体験に関する本によると、フロー状態とは注意力散漫な状態(心理的エントロピー)の反対です。つまり注意力を高めているマインドフルネスと似た状態です。

この雑誌でも、達人の瞑想状態について、

プロの音楽家やアスリートが容易にパフォーマンスの「流れ」に没入できるのに似ている。

とあり、フロー(流れ)体験との関連が示唆されています。記事でとりあげたとおり、フロー体験は痛みなど病気の症状を軽減することがわかっています。

フロー体験を得やすい生活環境を作るなら、注意力散漫はある程度解消されるでしょう。

没頭する幸せ―「フロー体験入門」の8つのポイント| いつも空が見えるから

(4)ワーキングメモリの強化

最後に、ワーキングメモリを強化して、注意力を鍛える方法もあります。ADHDの注意力散漫な症状は、やはりワーキングメモリの少なさと関係しているという研究があります。ストレス下に置かれている人もワーキングメモリが少なくなるそうです。

ワーキングメモリが低下していると疲労を感じやすいという話もあります。

とはいえ、小児慢性疲労症候群ではワーキングメモリはある程度正常に保たれていて、注意を向ける能力と注意の持続力に問題があるという研究もあります。

ワーキングメモリを強化するにはいろいろ方法がありますが、Nバック課題といった特殊な問題を解くときに特に鍛えられるというデータもあります。Nバック課題は、ゲーム感覚で挑戦し、ワーキングメモリを鍛えることもできます。

もちろん、体調が悪いからワーキングメモリが低下しているのであって、その中で、それを鍛えるというのは難しいことかもしれません。

 こうした方法を用いて注意力散漫を解消するなら、不快刺激に対処しやすくなるかもしれません。マインドフルネスについてさらに知りたい人は、この雑誌か、カバット・ジンによる著書を読んでみるといいかもしれません。


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