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慢性的な病気を説明する17の会話テクニック

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説明する性疲労症候群には、見た目には元気そうに見える、というやっかいな特徴があります。CFS患者は見た目には病人とは映らないため、すでに味わっている苦しみに追い討ちをかけるような扱いを受けることが多いのです。

最近のニュースでは、難病の人たちが次のように語っていました。

難病カルテ:患者たちのいま 座談会/中 就労、病状公表するか悩む 必要な配慮伝える /佐賀- 毎日jp(毎日新聞)難病カルテ:患者たちのいま 座談会/中 就労、病状公表するか悩む 必要な配慮伝える /佐賀- 毎日jp(毎日新聞)はてなブックマーク - 難病カルテ:患者たちのいま 座談会/中 就労、病状公表するか悩む 必要な配慮伝える /佐賀- 毎日jp(毎日新聞)

私たちは、できるところとできないところがあったりとか、配慮が必要だったり、通院の休みが必要だったりするので、それを確保するためには、きちんと言うべきだと思います。これはできる、でもここは配慮してほしい。

…こういう病気でこういう大変さがあって、というと困惑するので、上手な言い方が必要かもしれない。

慢性疲労症候群(CFS)の場合も、ひと目で分かるわけではないため、自分のことを理解してもらうためには、上手に説明することが欠かせません。

わたしは、今より病気が重かったころからずっと、他の人とのコミュニケーションに悩み、さまざまな方法を模索してきました。このエントリでは、わたしが日記に書いてきた会話に役立つと思う17のテクニックをまとめて紹介します。

▼シリーズ記事「CFS患者の会話の助け」

長引く病気と闘うには、身近な人たちに自分の症状をわかりやすく説明することが欠かせません。シリーズ記事CFS患者の会話の助けでは、CFS患者のコミュニケーションに役立つ知識やテクニックを紹介しています。

役立つ17のテクニック

1. 頭ごなしに否定しない

2. たとえを用いる

3. 区別する

4. 具体的な数値を挙げる

5. ストーリーを話す

6. 温かさを忘れない

7. 一度に多くの人と喋らない

8. 言葉が見つからないときのテクニック

9. 共通の話題を探す

10. 質問に質問で答える

11. 意外性をもたせる

12. 権威に訴える

13. 視覚に訴える

14. 聞く耳を持たない人と関わらない

15. 話をそらす

16. ひどいことを言われたら

17. うまく説明できないと感じたら

1. 頭ごなしに否定しない

たとえ相手の意見が間違っていても、否定的な言葉を返すのはよくありません。たとえば、次のような状況を考えてみてください。

相手「慢性疲労症候群って、すごく疲れやすいってことでしょ」

自分「違うんです、疲れやすいわけじゃないんですよ、体が鉛のように重くて、頭痛があって、ぜんぜん動けないんです。あっ、それだけじゃなくて、脳機能障害もあって、集中するのも難しかったり、体のここそこに激痛があったり…」

このようにまくしたてると、相手は困ってしまって、あまり関わらないでおこう、と思うかもしれません。しかし落ち着いて話せば、丁寧に会話を続けることができます。

相手「慢性疲労症候群って、すごく疲れやすいってことでしょ」

自分「ああ、そうですね、慢性疲労症候群、って聞くと、どうしてもただ疲れやすい病気なんじゃないか、って思いますよね。わたしもそのように言われることがよくあるんです。でも、実際はちょっと違うんです」。

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2. たとえを用いる

会話2たとえを用いるなら、考え方の異なるさまざまな人の心に訴えかけることができます。

たとえば「乾ききった雑巾のように、全身の活力がなくなってカラカラなんです」と言ったとします。

目でイメージするタイプの人はパリパリに乾いた雑巾を想像し、耳で聞いて考えるタイプの人はカラカラという言葉から活力が枯渇したようすを考えます。手触りや感覚を重視するタイプの人は、乾いて固まった雑巾の触り心地に思いを馳せるでしょう。相手の思考パターンがそれぞれ異なるとしても、言いたいことが伝わります。

作家のローラ・ヒレンブランドはCFSのまとわりつく不快感を「世界が遠く感じられた。透明なビニールにくるまれているかのようだった」と自分の言葉で言い表しています。

それに対し、「鉛のように重い」や「思考に霧がかかったような」というよく使われる紋切り型はかえってわかりにくいかもしれません。イギリスの作家ジョージ・オーウェルは、「他でよく見るような表現や比喩を使ってはいけない」と助言しました。そのような使い古された表現は、分かった気になるだけだからです。

たとえは、相手がよく知っている身近なものを用いた簡潔な表現ほど効果があります。良いたとえを思いついたり見かけたりしたら書き留めておくと良いと思います。

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3. 区別する

教育者ヨハン・コメニウスは「事物をうまく区別できる者は教え方も優れているのである」と述べました。

慢性疲労症候群について説明する優れた方法のひとつは、他の病気との違いを示すことです。たとえば“エネルギーの障害”という表現を補足して、次のように言えるかもしれません。

「たとえば、手に障害を持っている人だったら、手を使う活動はまったくできないかもしれませんが、走ったり飛び跳ねたりは普通にできますよね。同じように足に障害のある人なら、歩いたり走ったりはできなくても、手を使うことなら、健康な人と同じくらいできます。

でも、慢性疲労症候群は、エネルギーの産生の障害なので、エネルギーがかかわるあらゆることが難しくなるんです。しゃべること、考えること、食べること、寝ることなど、生活上のどんな活動でもエネルギーを使わないものはありません。

手や足に障害のある人のように、特定の活動ができないということはないためよく誤解されるんですが、エネルギーが非常に限られているので、あらゆる活動が少ししかできなくなってしまうんです」

このように他の身体障害と比較してみることで慢性疲労症候群の特徴が浮き彫りになります。また、慢性疲労症候群はよくうつ病と混同されるので、うつ病との違いを説明できるようにしておくとよいかもしれません。たとえばCFSは、多くの場合突然発症し、意欲が損なわれず、罪悪感や自殺願望がない点でうつ病と違います。

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4. 具体的な数値を挙げる

スティーブ・ジョブズは、iPodを発売したとき1,000曲をポケットに入れて持ち運べる」とアピールしました。具体的な数値を用いるのも優れた方法のひとつです。

CFS患者の場合、例えばPS(パフォーマンス・ステータス)表を活用することができます。もしPS7に該当する体調ならば、日中50%は横になっていることになります。これを言葉で説明するとこうなります。

「わたしの体調の度合いは、日常生活が50%以下しかできない状態と定義されています。つまり、普通の人は、日中16時間ぐらい動けるんですが、わたしの場合は起きていられる時間はたった8時間ほどなんです。

だから、こうしてお会いして話すのも、たった8時間の中から時間を工面して、予定をあわせる必要があります。そのほかの時間はぐったりしてして、寝ているか、横になっていて起きられないか、という体調なんです」。

もしPS7より軽いとしても、以前PS7を経験しているならは「今ではもう少し活動できるようになったのですが、まだまだ生活は大変なんです」と付け加えると良いかもしれません。

可能なら具体的な数値が表示された検査結果を紹介するのも良いでしょう。疲労検査やペインビジョン(痛みを数値化できる装置)のデータはCFSの患者が健康な人とは明らかに違うことを数値で示すことができます。

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5. ストーリーを話す

比較神話学者ジョセフ・キャンベルは、人の心に訴えかける話の型を「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」と呼んでいます。どんな物語にしても、「旅立ち」→「試練」→「帰還」の順で話せば、共感を誘いやすくなるというものです。

慢性疲労症候群について話すとき、わたしたちは「試練」についてばかり話してしまいがちです。しかし「旅立ち」と「帰還」についても話すなら、理解を得やすくなります。どういうことでしょうか。

旅立ち

「わたしはもともととても健康で、…を頑張っていたんです。ところが、○○○○年○月○日に突然、…のような体調になりました」。

この部分について話すことで、もともとは元気だった、ということを申し分なく印象づけることができます。健康な人は、CFS患者を奇異な目で見がちですが、もともとは自分と同じ健康な人だったと考えてくれるかもしれません。

試練

「CFSになってからというもの、…といったつらい症状に悩まされ、生活が破壊されてしまったんです」

直前で健康なころについて話しているからこそ、病気によってどれほど破壊的な影響が及び、ショックを受けたかがまざまざと伝わります。単に病気の症状について話すより、優れた対比効果が生じるのです。

帰還

「今は、まだCFSが治ったわけではありませんが、…といった方法で対処しています。…ということを学びました。」

病気がまだ治っていないとしても、CFSの経験を通して生活を調整した点や、学んだ教訓について話すことができます。

この部分を話せば、病気のために何もやっていないのではなく、りっぱに努力している、ということをアピールできます。積極的な表現で締めくくるので、「意欲が足りない」「怠けている」と非難されることが少なくなるかもしれません。

最近のニュースでもこう書かれていました。

就職活動で「カミングアウト」は不要です - のぶさんの患者道場 - アピタル(医療・健康)就職活動で「カミングアウト」は不要です - のぶさんの患者道場 - アピタル(医療・健康)はてなブックマーク - 就職活動で「カミングアウト」は不要です - のぶさんの患者道場 - アピタル(医療・健康)

そこで、採用面接などの段階で病気についていう場合は、単に病気になったという辛い経験を告白するのではなく、その病気から何を学んだのか、何を得たのか、ということも付け加えて言えばいかがでしょうか?

ストーリーを語るメリットについては、次のように語っている記事もありました。

仕事でストーリーを語れ! 話題の起業家が教える相手を掴む効果的な伝え方 : ライフハッカー[日本版]仕事でストーリーを語れ! 話題の起業家が教える相手を掴む効果的な伝え方 : ライフハッカー[日本版]はてなブックマーク - 仕事でストーリーを語れ! 話題の起業家が教える相手を掴む効果的な伝え方 : ライフハッカー[日本版]

自分の考えや経験を最もリアルに伝える方法はストーリーにして伝えること、と述べています。ストーリーが脳を活性化するため、聞き手はあたかも自分の身に起こったことのように錯覚してしまうようです

ストーリーを語るなら、聞き手の共感を誘うことができるのです。

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6. 温かさを忘れない

会話4人の心を動かすのは、完璧な論理ではなく、気遣いのこもった温かさです。どれだけはっきり論じても、温かみがこもっていないなら、相手のほうから会話を投げ出し、聞く耳をもたなくなってしまいます。

耳を傾けてくれる人には「いつも気にかけてくださってありがとうございます」、「…さんも疲れているところ、聞いてくださってありがとうございます」といった心のこもった感謝やねぎらいの言葉を繰り返し伝えることを忘れないようにしましょう。

また相手の感情に配慮することも大切です。家族や友人は、ときに理解のない言葉や辛辣な批判を浴びせてくるかもしれません。しかし、大切な人が突然変わってしまったために、身の回りの人も戸惑っているのだ、ということを忘れないようにしましょう。

わたしたち自身がCFSになった自分をなかなか受け入れられなかったように、家族や友人も、CFSになった身近な人を受け入れるには時間がかかるのです。

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7. 一度に多くの人と喋らない

自分の病気について話すときには、どんな状況で話すか、ということも大切です。気持ちをわかってもらいたい相手と話す場合は、自分と、自分についてよく知っている人、そして相手というように、少ない人数のほうが話しやすく感じるかもしれません。

その理由について不登校外来ー眠育から不登校病態を理解するにはこう書かれています。

「[子どもの慢性疲労症候群]における脳機能はさまざまに低下していることが明らかになっているが、特徴的に一つの情報しか処理できない状態になっている。同時に二つ以上の情報処理ができないのである。

…たとえば久しぶりに教室に入るとき、ぽつぽつと一人ずつ教室に入ってくるクラスメイトに対してどうにか対処できるが、数人のクラスメイトがすでにいる状態のなかに入っていくのはどう対処すればよいかがわからず混乱してしまい入れなくなる。

同時に多数の顔や表情や声などの情報が入ってくるため対応できないのである。この状態では脳の情報処理に混乱と多大なエネルギー消費が必要になるため極めて疲労することになり、翌日の学校に差し支えてしまう」

冷静に話すために、会話する相手、場所、時間について考えておくのがよいと思います。人の多い場所や集まりは避けたほうがよいかもしれません。

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8. 言葉が見つからないときのテクニック

慢性疲労症候群の人は、たいてい神経系が影響を受けているので、日常の会話にも難しさを感じます。相手の言葉に対して、なんと答えてよいかわからない、言葉が見つからない、頭が真っ白で言葉のキャッチボールが続かないという経験があるかもしれません。

会話テクニックのひとつ“バックトラック(オウム返し)”や“オープンクエッション”はそのような場合の特効薬です。

“バックトラック”は、たとえば「最近身体の調子が良くなくてね」と言う人に対して、「ああ、体の調子が良くないんですね」と返し、会話を続けるテクニックです。

はじめは相手の言葉をオウム返しして大丈夫なのだろうか、と思いますが、気遣いのこもった口調で言うと、意外なほど話が続きます。バックトラックだけで数十分話すこともできるかもしれません。

“オープンクエッション”は、「何が」「どんな」「どこに」といった疑問詞を用いる質問です。「はい」「いいえ」で答えられない質問なので、相手の話を引き出せます。話す言葉が出てこないなら、相手に話してもらう、という手法です。

この2つを活用する場合、次のように使います。

相手「体調が悪いの?」

通常の返事
「じつは…(答えを考えなければならない)」

テクニックを使った返事
「ああ、体調のことを気にしてくださったんですね、ありがとうございます。どんな感じに見えますか」

通常の返事ではすぐに頭を回転させる必要が生じるので焦ってしまい、疲れます。しかしテクニックを使った返事では、とっさに違和感なく会話を引き伸ばして、時間を稼ぐことができます。時間を稼いでいる間に、考えをまとめて余裕をもって受け答えすることにつなげられます。

この2つのテクニックは、最初のころは意識的に使って慣れることが必要です。

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9. 共通の話題を探す

人は自分に関係があると思えることには進んで耳を傾けます。わたしたちが自分の病気の話ばかりしているなら、相手は退屈に感じるでしょう。

慢性疲労症候群という病名を逆手に取って、だれもが感じる疲労というポイントを共通の土台にして話せるかもしれません。慢性疲労症候群(CFS)の患者が究極の疲労として研究されていること、その結果、一般の人にも役立つ疲労対策が分かってきたことを説明してみるのはどうでしょうか。

「慢性疲労症候群の研究を通して、健康な人にも役立ついろいろな疲労対策が開発されているんですよ」と述べて、抗疲労食やイミダペプチド、緑の香りなどに触れるのもよいかもしれません。疲労回復はだれもが関心のある話題だからです。

また、「慢性疲労症候群は雑誌や書籍によく出てくる病気で、日本にも30万人以上いるそうなんです」と述べて、相手にも関わる身近な病気であることを強調できるかもしれません。

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10. 質問に質問で答える

オープンクエッションの項で少し触れましたが、なかなか共通点を見い出せない相手が質問してきた場合は、逆質問することが有効です。

相手の質問にすぐに答えようとすると焦ってしまい、うまく言葉が出てこないかもしれません。90秒で好かれる技術には、「質問に質問で答える」というテクニックが紹介されています。これは「共通点の少ない人たちと心を通わせる方法」です。

たとえば「慢性疲労症候群というと疲れやすい病気なんですか?」と聞かれたら、すぐ「いえ、そうではなくて…」と説明するのではなく、まず逆質問します。

「慢性疲労症候群について何かご存じなんですか?」とか、「どうしてそう思われるんですか?」とか「この病気についてお聞きになったことがあるんですか?」などと質問できるかもしれません。

質問に質問で答えることにはメリットが3つあります。まず、すぐ答えを見つけなくていいので、時間を稼ぐことができ、気持ちの余裕が生まれます。次に、相手の考えを知ることで、より的確に答えることができます。そして、相手に考えさせることで、会話が深くなります。

前述の本には、「友人と質問に質問で答える会話をやってみてほしい。…何か質問されたら、必ず質問で答えてみよう」と提案されています。質問に質問で答えるというと、一見失礼なことに思えますが、実践してみると、とても自然でしっくりくると思います。

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11. 意外性をもたせる

どう説明してもなかなか理解してもらえない場合、意外性を持たせることは効果的です。たとえば、以下のような事実は多くの人にとって意外です。

1.発症日を示す

「わたしはもともとすごく元気だったんですけど、忘れもしない○○○○年○月○の朝、起きたら突然この病気になっていたんです」

これはだれにとっても相当意外なようです。この突然発症について話すだけで、慢性疲労症候群(CFS)に対する見方を変える人がこれまで多くいました。ちなみにわたしの発症は、11月16日の朝でした。

2.集団発生の事例を紹介する

「慢性疲労症候群(CFS)というのは、もともとアメリカのネバダ州のインクラインという村で、人口の1%にもなる200人もの人が集団発生した病気なんです。それがもとで、アメリカの政府が調査に乗り出して、大騒ぎされるようになったんです」。

この話をすると、大概の人は、慢性疲労症候群がアメリカで公式に研究されている病気だという点と、集団発生するという点の2つに驚きます。どちらにしても、ただの疲労ではないとわかってもらえるようです。

3.検査でわかることを示す

「最近の研究によって、慢性疲労症候群が検査で分かるようになったんです。たとえば、ただの慢性疲労と慢性疲労症候群(CFS)を見分けることもできますし、今血液検査で調べる方法が特許出願されているんですよ」。

内科的な検査で分かる、という点を強調することにより、心の病気ではないことがわかってもらえます。実際の検査結果を見せることもできます。

こうした意外性に訴えるなら、慢性疲労症候群に対する先入観を拭い去ってもらいやすくなるでしょう。

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12. 権威に訴える

会話3慢性疲労症候群について話す際、どうしても、「そんな病気がほんとうにあるのか」と言う人はいます。疲れやすいことを冗談で“慢性疲労症候群”と自分で名づけていると思っているのかもしれません。

そのような人に慢性疲労症候群という病気があることを納得してもらうには、権威に訴えることが効果的です。

まず、何かができないというときは、体調を説明するのだけではなく、はっきりドクターストップだと言います。

また、インターネット上のCFS研究班のサイトを見てもらい、厚生労働省の後ろ盾のもとに研究されていることを説明することができます。あるいは、CDC(米国疾病対策センター)が研究に多額の費用を投じていることを示すのもよいかもしれません。

信頼できる書籍や雑誌に、慢性疲労症候群が取り上げられているのを見せるのも良い方法です。慢性疲労症候群を取り上げたNHK きょうの健康のテキストもあります。

そのほか、CFSの有名人に言及することもできます。たとえば相手がサッカー好きなら、シャルケ指揮官だったラルフ・ラングニック氏やサンフレッチェ広島の森崎和幸選手がいます。

ただし注意すべき点もあります。同じ病気でも、症状は人それぞれ異なることを説明しておくことが必要です。そうしないなら、「あの有名人は数年で治ったのにあなたはなぜ治らないの」と言われるかもしれません。

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13. 視覚に訴える

ねこを添えて言えアメリカの経営アドバイザー、エルマー・ホイラーは10万を超える数のキャッチコピーを分析し、「花を添えて言え!」とアドバイスしました。

言葉だけでなく、視覚に訴えるものを添えたほうが説得力が増すのです。書籍超ビジュアルシンキングによれば人間は情報の75%を視覚に頼っています。

長年CFSと闘っている患者の多くは、杖や車椅子やマスクを用いています。これらは、体力や免疫力を補うために使用しているのですが、慢性疲労症候群について理解してもらうためにも活用できます。

たとえば、若いCFS患者は、電車で席に座ることに引け目を感じるかもしれません。その場合、杖を持つなどの方法で、何らかの障害があることを示すことができます。

また自分のお気に入りの資料をコピーしていつも何部か携帯しておき、出会った人にわたせるようにしておくと良いかもしれません。自分の言葉で説明する代わりになるものではありませんが、添えて渡すなら説得力が増します。

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14. 聞く耳を持たない人と関わらない

今後長く接する人に対しては、ぜひとも最初の段階で病名を告げておくべきです。しかし、伝える必要がない人の場合は、不必要な労力を避けることも大切です。

何を言っても聞き入れない人は必ずいます。疲れる理由―現代人のための処方せんによると、たとえば3B(brash性急 boorish無作法 bullying威張っている)の医師に無理に説明する必要はありません。

可能なら3C(caring親切 communicativeコミュニケーション可能 creative創造的)の医者を探します。患者を対等のパートナーとみなしてくれる医師を探すことは、医療費を払う患者の当然の権利です。

また友人や同僚でも、病気を理解しようとしない人と関わり続け、自分を弁護しようとして体力を浪費するのは得策ではありません。相手が聞く耳を持たない場合、わたしたちにできるのは、相手の反応に倣わないことです。もしひどいことを言い返すなら、自分も相手と同じになってしまいます。

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15. 話をそらす

こちらの病気の説明はぜんぜん聞こうとしないのに、顔を合わせるたびに、上から目線で的はずれなアドバイスをしてくる人がいます。できるだけ会話を避けたいですが、身近な人の場合、そうはいきません。良好な関係を保つにはどうしたらよいでしょうか。

何を言っても分かろうとしない人の場合、相手が話し始めたら、すかさず、相手の体調や、家族の近況を尋ねる質問をはさんでみます。あらかじめ、いくつか質問を考えておくとよいかもしれません。

質問されると、相手は自分のことについて話し始めます。この間、論点がこちらに飛び火しないように気をつけます。ある程度話を聞いてあげると、満足するので、うまく話を終わらせます。結局のところ、そのような人は、話を聞いてもらいたいだけなのです。

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16. ひどいことを言われたら

ひどい扱いを受け、憤りがこみ上げてきたとき、どうすべきでしょうか。ある人は、(1)相手にぶちまけて発散する(カタルシス)しかないと言い、ある人は(2)ぐっとこらえるのが一番だといいます。しかしどちらも害があります。

心の傷を体の傷に例えて考えてみましょう。だれかからひどい傷を負わされた場合、最善の対処法は、どちらでしょうか。

(1)相手に復讐したり、別の人を傷つけたりする
(2)傷を隠して、化膿するままにする

どちらも賢い決定ではないのは明らかです。最も良いのは、そのどちらでもなく、(3)治療する であるはずです。同じように、だれかから心の傷を負わされた場合も、発散したり溜め込んだりせず、傷を治療するようにするべきです。

別の見方もしてみましょう。もしだれかにひどい扱いを受けたからといって、憤りをぶちまけたり、悶々と考え続けたりするなら、どちらも過去に捕らわれていると言えないでしょうか。正反対の行動をしているように見えて、どちらも結局はひどい扱いをした人に、いつまでも生活をコントロールされているに過ぎません。大切なのは、過去のことを考え続けるのではなく、未来に目を向けることです。そのために何ができるでしょうか。

いくつかの方法を紹介したいと思います。

認知行動療法

こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳によると5カラム法や7カラム法を用いて、自分の今の気持ちを書き出し、客観的に分析することが効果的です。

しっかり分析するなら、歪んだメガネを通して消極的に考えていた点に気づき、より積極的な見方に修正できるからです。

7カラム法

1、起きたできごとストレスを感じたときのできごとを書く
2そのときの感情…その時点でどんな感情を何%くらいの強さで感じたか書く
3、マイナスに考えたこと(自動思考)そのとき浮かんだ考えを、文章で書く
4、その根拠3のように考えた根拠や理由を書く
5、反論 4に対して、本当にそうなのか、他の考え方はないか自分で反論する
6、合理的思考(代わりの考え) 反論の結果浮かんできた代わりになる考え方を書く
7、結果(新しい感情の強さ)新しく浮かんだ感情と、それを何%の強さで感じたか書く

日記として書き出す

嫌な経験は具体的にノートに書き出すことによって、感情を伴うエピソード記憶から、抽象化された意味記憶に変換されます。

未完了のものがいつまでも気になるのに対し、完了したものは忘れてしまう現象をゼイガルニーク効果といいます。頭の中に残っていることを頭の外に書き出してしまうと、脳はその件は完了したと結論づけるのです。

書きだすことによって忘れるという点について詳しくは、ライフハック心理学の佐々木正悟さんが書いておられました。

054 良いことは具体的に、悪いことは一般的な記憶にしたい – ライフハック心理学054 良いことは具体的に、悪いことは一般的な記憶にしたい – ライフハック心理学はてなブックマーク - 054 良いことは具体的に、悪いことは一般的な記憶にしたい – ライフハック心理学

サブモダリティ変換

サブモダリティ変換は相手のイメージを変えるテクニックです。

一番やさしくNLPのことがわかる本によると、たとえば、いつも職場で頭から怒鳴り散らす上司がストレスになっている場合、その人の声を大好きな「寅さん」の声に変えてイメージしてみる、という例が紹介されています。

わたしたちは視覚・聴覚・身体感覚のさまざまな要素によって物事を認知しています。嫌な経験も、分解すればさまざまな細かい要素からなっています。それをサブモダリティといいます。

サブモダリティ変換をするのは次の2ステップです。

(1) まず、自分のトラウマになっている経験を思い出してみます
(2) 次に、その場面の細かい要素(サブモダリティ)をひとつずつ変えてみます

サブモダリティには次のようなものがあります。

視覚: 大きさ、数、形、位置や距離、動いているか、静止しているか、明暗、白黒かカラーか、宣明か、かすんでいるか、立体か平面か、表情

聴覚: 音の種類、音の数、音の方向、音量、声のトーン

身体感覚: 重さ、材質、方向、圧力、柔らかさ、味、香り

たとえば、まず、思い出した場面の色を変えてみるのはどうでしょうか。鬱々とした印象があるなら、もっと明るい色をイメージしてみます。水玉模様の背景にしてみることもできます。

また、相手の大きさを変えてみるのもよいでしょう。威圧的な相手を、手のひらの小人サイズまで小さくしてみます。ガリバー旅行記のようなイメージです。

相手の顔を笑顔に変えてみるのも効果的です。笑顔は悪いイメージを拭い去るとても役立つツールです。

そのようにしてイメージのサブモダリティを変換したら、その場面を強く思い描きます。そうすると、修正後のイメージが頭に上書き保存されます。嫌な思い出が楽しい思い出になるわけではありませんが、嫌な感情を思い出せなくなってしまいます。

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17. うまく説明できないと感じたら

アプローチの仕方を積極的に変えてみましょう。アインシュタインは「同じ事を繰り返し行い、違う結果を予期すること」は狂気であり、愚かだと述べました。

話す時間や場所、説明のしかたといった小さな点を変えるだけでなく、医者や友人から話してもらうようにする、相手が読みそうなところに本を置いておく、そもそも説明する相手を変える、といった思い切った工夫も大切です。時間が物事を解決してくれる場合もあります。

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終わりに

このブログでは、これまで睡眠障害の治療法や食事療法など、さまざまな疲労対策を取り上げてきました。しかし、わたしにとって最も役に立っているのは、バランスのとれた価値観を身につけること、そして理解し支えてくれる友だちがいることです。

どれほど辛い境遇にあろうと、元気づけてくれる友がいるなら生きていくことができます。それに対し、どれほど壮健な人であっても、孤独であれば人生に絶望してしまいます。わたしが、コミュニケーション術を重視しているのはそのためです。

残念ながら、わたし自身も、肉親には、ほとんど病気を理解してもらえていません。古くからの友人もあまり残っていません。同じ病気の患者でも、気持ちが通じ合わない人もいます。

しかし、今、ある程度元気になったわたしの力になってくれている人の中には、病気になってから、それも特に体調が悪かった時期に知り合った健康な人たちが大勢います。理解してくれるのは何も家族や親族、古くからの友人、同じ病気の人とは限りません。

自分の病気をどのように説明するか考えることは、そうした人たちとコミュニケーションするために、またたとえ聞いてくれる人がいないとしても、自分自身を納得させ、病気を受け入れるために大切だと思います。


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