むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)と、パーキンソン病(PD)は、どちらもドーパミンの不足から生じる問題として知られていて、ビ・シフロール(プラミペキソール)やニュープロパッチ(ロチゴチン)といった同じ薬が認可されています。(ただしRLSはPDと異なりドーパミン神経は減っていないので、直接関係する病気ではなさそうです)
ここ数日のニュースで、むずむず脚症候群とパーキンソン病それぞれについて、経頭蓋磁気刺激・電気刺激という、脳に刺激を与える治療で改善したという別々の報告があったので、この記事にまとめておきます。
電流を流すといっても、経頭蓋磁気刺激・電気刺激は、DBS(脳深部刺激療法)のように頭蓋骨の中に電極を埋め込むという大がかりなものではなく、単に安静にしながら、頭にコイルを近づけるだけであり、痛みはありません。
パーキンソン病に対する経頭蓋直流電気刺激の効果
まず、パーキンソン病に対しては、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)と運動療法を併用した場合の効果が報告されていました。
研究では、パーキンソン病患者16名を、経頭蓋直流電気刺激のみのグループ、経頭蓋直流磁気刺激と運動療法を併用するグループに分けました。
どちらのグループも、経頭蓋直流電気刺激は、実際に刺激する日と、偽の刺激を行う日を設けました。
そして歩く速さとバランス機能を指標に効果を検証したところ
■経頭蓋直流電気刺激のみは効果なし
■運動療法のみは改善
■経頭蓋直流電気刺激+運動療法の併用ではさらに改善
■パーキンソン病が進行しているほど経頭蓋磁気刺激を加えた場合の効果がアップ
との結果が出たそうです。
脳卒中でも、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を実施しながら運動学習課題をした場合に、やはり改善効果が強く出たそうです。
うつ病では、経頭蓋直流電気刺激(tDCSとSSRIのジェイゾロフト(セルトラリン)を併用した場合に、それぞれ単独より効果が強くなったとのこと。
電気刺激のみでは効果がない、または効果が薄い場合でも、運動や薬と併用することで効果が出るというのは興味深いですね。
パーキンソン病に対する経頭蓋磁気刺激(TMS)や経頭蓋直流磁気刺激(tDCS)の効果はかなり以前から研究されているそうで、日本でも、シータバースト刺激(TBS)を含めて応用が検討されているそうです。
今のところ、特に著しい効果を示した報告はないそうですが、刺激する場所を工夫したり、刺激の回数・リズムなどを調整したり、今回のように他の治療法と併用したりすることで、効果を上げる方法が模索されているようです。
ちなみに脳に電極を埋め込む脳深部刺激療法(DBS)についても、高解像度MRIを使うことで、さらに正確な位置を刺激したり、電極を増やして効果を上昇させたりするなど、治療法を改善する研究が行われているというニュースがありました。
むずむず脚症候群に対する経頭蓋磁気刺激の効果
パーキンソン病に対する効果の報告とは別に、むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の効果についても報道されていました。
研究では、むずむず脚症候群の患者29名が、経頭蓋磁気刺激を実施されるグループ(11名)と、偽の刺激を与えられるグループ(8名)に振り分けられ、医師も患者も、だれがどちらのグループか知らない二重盲検法で実施されました。
すると、本物の刺激を与えたグループは、偽の刺激を与えたグループより有意に症状が改善しました。
この研究では、パーキンソン病の電気刺激のように、薬などの他の治療法との併用は実験されていませんが、さらに研究が進めば、もっと効果的な刺激方法がわかるかもしれません。
経頭蓋磁気刺激などの脳の刺激療法は、脳を活性化させて脳の可塑性が生じやすくするとも言われているので、他の治療法の補助とするのが良いのかもしれません。
今回取り上げた経頭蓋磁気刺激(TMS)と経頭蓋直流電気刺激(DCS)の違いについては、こちらの医学研究室のブログの解説がわかりやすかったので紹介しておきます。
簡単に言えば、それぞれ磁気刺激と電気刺激の違いがあり、機材の費用も異なるようです。
経頭蓋磁気刺激(TMS)は日本でも治療を受けられる医療機関も少しずつ増えてきましたが、医療保険が適応されていないので、あくまでも臨床試験や自由診療として実施されているようです。