ニュースや本の紹介ではありませんが、子どもの空想の友だち(イマジナリーフレンド/イマジナリーコンパニオン)について、詳しく調査し、わかりやすく解説している記事が2015/08/07付で書かれていたので、紹介しておきたいと思います。
子ども(と大人)の創造力を育むサイト「ぷくっと」に投稿された、フリーライターの土下すわるさんによるエントリです。当ブログの記事にリンクも貼っていただいています。
子どものイマジナリーフレンドとは
空想の友だち(イマジナリーフレンド/イマジナリーコンパニオン)とは、子どもの発達過程によく見られる現象で、見えない友だちと会話したり、ごっこ遊びをしたりするものです。
このエントリはおもに乳幼児のこころ -- 子育ち・子育ての発達心理学 (有斐閣アルマ)とい本や、ネット上の情報に基づいて、まとめられているようです。
記事の内容を簡単に要約します。
日本ではイマジナリーフレンドは少なめ
日本の調査では、「空想の友達」を持っている子どもは約10%だそうです。欧米での20%~30%より低く、「添い寝」の文化のため移行対象(人形・ ぬいぐるみ・毛布などへの愛着)を持ちにくいことが関係しているのかもしれないとされています。
▼イマジナリーフレンドの統計
さまざまな調査によるデータはこちらをご覧ください。調査によっては、子どもの約半数がイマジナリーフレンドを持つものの、大半は気づかれないか忘れられているという研究もあります。
移行対象―感情と向き合うポジティブな働き
イマジナリーフレンドは、移行対象の延長線上に出現する、より高度な形態であると考えられています。
移行対象と同様に、自分自身の内なる感情に対処する助けというポジティブな側面を持ちます。イマジナリーフレンドは子どもが問題解決のために自ら創り出す手段のひとつとなのです。
▼移行対象との関係
イマジナリーフレンドと移行対象は似ていますが、移行対象が主に目に見える所有物を必要とする(「物の擬人化」Personified Objectと呼ばれる)のに対し、イマジナリーフレンドは一般に目に見えない友だちのことをいいます。(目に見えるものを含む研究者もいます)
ただし、イマジナリーフレンドと移行対象が関係しないという研究報告も幾つかあり、はっきりとした結論は出ていません。(ImaginaryCompanionの実態と発達的規定因を探る 川戸由季などを参照)
プライベートスピーチ―社会性を育む
プライベートスピーチをよくする子どもは社会性が高いと言われています。プライベートスピーチとは、自分ひとりでおしゃべりすることです。イマジナリーフレンドを持つ子どもは、プライベートスピーチに多くの時間を費やします。
イマジナリーフレンドとの会話は想像、リハーサル、応答、自己抑制、問題解決などの能力を高める足がかりになります。
アミニズム―生き物ではない存在に意識を感じる
子どものイマジナリーフレンドはアミニズムと関係しているという見方もあります。
アミニズムとは無生物や自然の中に意識が宿っているという考え方です。
幼児は、まわりのものが、すべて自分と同じように意識を持って考えているように思っていて、一種のアミニズムとして世界をとらえています。
たとえば、ぬいぐるみや人形はもちろん、花や車やおもちゃなど、どれも、感情や意思を持っているように感じられます。子ども向けの絵本などで、それらのイラストに顔がついているのも、幼児のアミニズムを反映したものといえるでしょう。
イマジナリーフレンドも、子どもが心の中に生みだした存在に対し、アニミズム的な意識を感じている、子ども特有の現象なのかもしれません。
もう一人の自分―良き理解者
イマジナリーフレンドは他者であり、自分である、という特殊な性質を持っています。
対話することによって、他者から見た自分を客観的に考える力が成長しますし、自分のことをよく知っている理解者として、信頼みすることもできます。
そのため、世の中に出る前のコミュニケーションの練習にうってつけで、傷つけられるおそれのない友だちを相手に、いくらでもコミュニケーションを育むことができるのです。
イマジナリーフレンドが出てくる作品
英国の女流絵本作家ローレン・チャイルド(Lauren Child)原作の絵本チャーリーとローラは、アニメ化されてNHKでも放送されましたが、ローラにはソレン・ロレンセンという、部屋に誰もいない時にだけ現れる空想の友達がいます。
ローラはソレン・ロレンセンとのやりとりを通して、精神的成長を遂げたり、問題の解決にあたったりします。
スタジオジブリ作品の思い出のマーニーも空想の友だちを描いた作品という解釈もあります。
ディズニーの最新作インサイド・ヘッドもイマジナリーフレンドを扱った作品として話題になりましたね。
元記事でも紹介していただいていますが、イマジナリーフレンドを扱った作品については、詳しくはこちらをご覧ください。
微笑ましく楽しい現象
このように、子どものイマジナリーフレンドは、発達における正常な過程であり、子どもの成長に役立つものです。時期が来て、社会に出るころには自然と消えていきます。
自分の子どもにイマジナリーフレンドが現れたら、微笑ましく見守ってあげてほしいと思います。
今回紹介した記事は、こちらです。子どものイマジナリーフレンド(イマジナリーコンパニオン)についての詳しく正確な解説はネット上にはあまり多くないので、とても貴重な記事です。資料的価値があるでしょう。
このブログでの子どものイマジナリーフレンドに関する解説はこちらなので合わせてご覧ください。また関連する記事の一覧はカテゴリ空想の友だち研究をご覧ください。
記事の内容のもとになっていた 乳幼児のこころ -- 子育ち・子育ての発達心理学 (有斐閣アルマ)という本についても、こんど読んでみたいと思います。