うつ病やパーキンソン病と誤診されがちな、認知症の一種「レビー小体型認知症」という病気について、患者の樋口直美さんの経験談と、闘病記の出版が報道されていました。
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認知症「レビー小体型」知って 患者の樋口さん 症状や不安 本に - 西日本新聞
レビー小体型認知症とは
認知症は70種類近くあると言われていますが、おもに患者数が多いのは3種類です。
2.レビー小体型認知症(DLB)
3.脳血管性認知症(VaD)
これらは、「三大認知症」とよばれていて、「レビー小体型」はアルツハイマー型の次に多いそうです。
「レビー小体型認知症」は、1976年に、日本の横浜市立大学の、小阪憲司名誉教授らによって発見されました。認知症の2割を占め、患者は国内に約90万人いるそうです。
「レビー小体」とは、異常なタンパク質が脳の神経細胞にたまって形成されるもので、レビー小体ができる場所によってその機能にさまざまな障害が生じるといわれています。
「レビー小体」はパーキンソン病の患者の脳の脳幹に出現することでよく知られていますが、レビー小体型認知症では、大脳皮質全体にレビー小体ができます。
パーキンソン病に似た症状が出ることもあるので関連性が指摘されていますが、現時点では、違う病気として認識されています。 記憶障害が軽く、診断が最も難しいため、認知症と呼んでよいのかという議論もあるそうです。
具体的な症状としては、以下のものがあります。
■不眠などの睡眠障害
■自律神経障害
■うつ症状
■頭がぼーっとする
■震えやこわぱりなど
■リアルな幻視
■日によって症状が大きく変動する
■一部の症状のみのことも
このような特徴のため、うつ病やパーキンソン病と誤診されやすいだけでなく、薬剤に過剰反応しやすいという特徴もあり、抗うつ薬や抗不安薬でかえって悪化する場合があります。
アルツハイマー病の治療薬であるアセチルコリンエステラーゼ阻害薬のアリセプト(ドネペジル塩酸塩)が有効で、パーキンソン病に似た症状に対しては、パーキンソン病の治療薬が効果があると言われています。
記事では、「レビー小体型認知症」の専門家として、総合上飯田第一病院、もの忘れ評価外来の鵜飼克行医師の名前が挙げられています。
また発見者の小阪憲司先生も、レビー小体型認知症の疾患概念の普及のために、多数の本を書かれています。
世界初の闘病記「私の脳で起こったこと」
今回の記事で取り上げられている53歳の主婦の樋口直美さん(@HiguchiNaomi))は、2000年ごろから、頭痛や不眠、だるさが現れました。
最初「うつ病」と診断され、抗うつ薬と抗不安薬を投与されましたが、症状が悪化しました。
誤った薬物治療に6年間苦しんだ後、幻視の症状を自覚するようになって、インターネットなどで調べた結果、若年性のレビー小体型認知症を疑うようになりました。
9年目に認知症と診断され、抗認知症薬を飲み始めると幻視や体調が回復し、ほとんどの症状が消えたそうです。
年齢からわかるように、樋口さんは「若年性レビー小体型認知症」であり、そのこともあって、診断にたどりつくのが難しかったのだと思われます。
樋口さんはこう語っています。
うつで投薬を受けて症状が悪化した場合は気をつけて。
認知症になっても工夫と努力で自立した生活を長年送っている人たちがたくさんいる。その大前提は正しい診断と治療を受けること。
2015/07/10に、闘病記である私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活を出版されました。なんとレビー小体型認知症患者による、世界で初めての闘病記だそうです。
私は、認知症を巡る今の問題の多くは、病気そのものが原因ではなく、人災のように感じています。
と警鐘を鳴らし、自己観察や分析、調査の大切さを示す本となっているようです。
また偏見を持たれがちな認知症の正しい理解を促し、
脳の機能の一部を失ったからといって、知性を失う訳ではない。記憶を失ったとしても思考力を失う訳ではない。
とも訴えておられます。
若年性パーキンソン病もそうですが、本来年配の人に多い病気を若くして発症した場合、診断に辿りつくまでに苦慮する場合が多いので、こうした体験談をよく銘記しておきたいですね。