化学物質過敏症(CS)について、高知県の患者である智子さんの経験談がニュースになっていました。
化学物質過敏症の智子さんの経験談
智子さんは、小学校に勤めていた2004年に化学物質過敏症(CS)を発症し、6年後に仕事を辞めざるを得なくなったそうです
きっかけは、夏休み最終日、白い液体が漏れ出た古びた缶が、家庭科教室のテラスに放置されているのを見つけたことでした。
校長の指示で缶を倉庫に運びましたが、強烈な刺激臭のため意識がもうろうとしたそうです。その後、たばこや柔軟剤などの臭いに反応して、呼吸困難、頭痛、吐き気などが生じるようになりました。
後でわかったことですが、そのときの白い液体は、使用期限が過ぎた有機リン系の駆除剤でした。本来は100~300倍に希釈して使う原液だったそうです。
2年後、新聞記事で化学物質過敏症(CS)を知り、四国で唯一、化学物質過敏症の診断と治療ができる国立病院機構高知病院を受診し、化学物質過敏症と診断されたと書かれています。
智子さんは2011年に地方公務員災害補償基金に対し、高知地裁に訴訟を起こしました。その後、敗訴したものの、高裁への控訴を決めています。病気のことを知ってほしい、同じようなことが繰り返されるのを防ぎたい、という動機からです。
化学物質過敏症の知識と工夫
国立病院機構高知病院、化学物質過敏症外来の小倉英郎先生によると、化学物質過敏症には次のような特徴があるそうです。
■2009年に保険適用される病名に登録された
■揮発性の化学物質により、感受性をつかさどる脳細胞に影響
■大量の防虫剤や、海外製の安価なマスクが原因だったケースも
■国立病院機構高知病院で診断された患者は約200人(2000年以降)
■化学物質過敏症の存在を認めない研究者もいる
■臨床では理解ある医者も増えてきた
智子さんは次のような工夫で対処し、少し体調は改善しているそうです。
■「家庭用クリーンルーム」と呼ばれる空気清浄機能付きテントを使う
■香料や合成洗剤、インクなどあらゆる化学物質を避ける
■ティッシュや新聞などは外で干してから使う
■化学物質の付着を防ぐため帽子をかぶり、活性炭入りのマスクを着ける
■外出の交通手段は家族が運転する自家用車のみ
■においが残らないよう人を家に上げないことも
また高知県内患者会「化学物質過敏症・ゆるゆる仲間」の仲間と協力しています。
化学物質過敏症(CS)は、今の医学では説明できず、「精神的なもの」と言われることも多いようです。特に、理論だけを見ている研究者の中には頭ごなしに疾病概念を否定する人もいます。
しかし、患者を身近で見ている人や、臨床で実際に多くの患者に接している医者にとっては、確かに存在する病気であり、現実の悩みだということが分かります。いずれもっと理解や研究が進むよう願っています。