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【アーカイブから】眠れぬ子供たち 夜型生活の犠牲者

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「子どもの慢性疲労症候群など本当にあるのだろうか。子どもたちは気ままに遊び、ゲームやマンガを好きなだけ楽しみ、疲れなど知らないものだ。子どもの立場で疲れるなんて生意気だ、大人はもっと大変なんだ」。そのように考える人もいます。

しかし、それはもはや古い考えです。24時間社会が浸透するにつれ、ある子どもたちは異様な環境に置かれるようになりました。

先日、子どもの慢性疲労症候群(CCFS)についてのニュースのアーカイブを作りました。思ったよりたくさん報道されていて、読んだことがないニュースもありました。その中でひときわ印象に残った記事を紹介したいと思います。2007年のニュースです。

【溶けゆく日本人】快適の代償(8)眠れぬ子供たち 夜型生活の“犠牲者” (1/3ページ) - MSN産経ニュース【溶けゆく日本人】快適の代償(8)眠れぬ子供たち 夜型生活の“犠牲者” (1/3ページ) - MSN産経ニュース

(インターネットアーカイブへのリンク)

子どもは過労死しないのか

1日のスケジュールはこうだ。放課後、学校の門を出ると母親が車で迎えにきており、そのまま塾へ。午後9時すぎまで授業を受け、その後も難しい問題を講師に聞くなどし、帰宅の途につくのは10時すぎ。夕食は母親が用意した「塾弁」(塾で食べる弁当)で済ませている。

 帰宅後は入浴して夜食をとり、学校や塾の宿題を済ませ、翌日の用意をしてから就寝。午前0時前に寝られることはほとんどない。友達との会話についていくため、ビデオにとったテレビドラマを早送りしながら見て、床に就くのが2時近くになったこともある。

…1、2時間目が体育や音楽の日は、家でゆっくり寝て3時間目から学校に行くときもある。学校に遅刻してもお母さんは怒らない。

残業に追われる会社員の話でしょうか。それともどこかの研究職員の話でしょうか。もちろん違います。兵庫県に住む11歳の子どもの想像を絶するような日常です。

この子だけが何か特殊な環境にいるのでしょうか。そうではありません。最近rahpicさんが、慢性疲労症候群に関係したNAVERまとめで、さまざまな学生のツイートを集めてくださっていました。

日本の学校社会は子どもたちを蝕んでいる…!脳が疲れ果ててしまう前に、学校を捨てよう - NAVER まとめ日本の学校社会は子どもたちを蝕んでいる…!脳が疲れ果ててしまう前に、学校を捨てよう - NAVER まとめ

すべての子どもがそのような環境に置かれているわけではありませんが、過熱する受験戦争の影響を受け、異常とも思える生活を強いられている子どもは間違いなく存在するのです。わたしもかつてその中にいました。

わたしが学生だった最後の時期は、新聞配達の人が朝刊をポストに入れる音がするまで勉強する生活でした。当時ブレイクしていたイチローの記事を寝る前に少し見るのが楽しみでした。

体育祭や文化祭といった行事や、成績に関係しない科目は計画的に休んで、睡眠時間の回復に当てていました。テレビ番組は録画して、早送りで字幕を読むものだと思っていました。

好き好んでそうしていたわけではなく、そうしなければついていけなかったのです。それでも、自分はまだまだやれると思っていました。

しかし、そのような生活が続いた末に待ち受けているのは何でしょうか。

小児慢性疲労症候群(CCFS)という結末

そんな子供たちが勉強時間と引き換えに犠牲にしているのが、遊びや読書、一家団欒(だんらん)の時間、そして睡眠だ。

夕方、学校から帰ってから寝るようになったら要注意だ。「睡眠不足が続くと脳機能が低下し、記憶の能力のうち、新しい情報を覚えること(記銘)が難しくなる。

さらに学習意欲も低下し、体調も悪くなり、過眠型睡眠障害を伴う『小児慢性疲労症候群』という病気になることもあります」。三池教授はそう言って警鐘を鳴らす。

ここにはっきりと小児慢性疲労症候群という名前が出ています。

誤解を招かないように書いておくと、わたしの病気であり、三池先生が述べている「慢性疲労症候群(CFS)」とは単なる慢性疲労や過労ではありません。

慢性疲労や過労は休めば回復しますが、もはや回復しないまでの変調が生じた段階が慢性疲労症候群(CFS)です。子どもの慢性疲労症候群は単なる過労と区別して「学校過労死」と呼ばれることもあります。過労は回復しますが、過労死は取り返しがつきません。

慢性疲労症候群(CFS)は、さまざまな要因が関わっている難病です。身体的ストレスや精神的ストレス、化学物質やウイルスなどの化学的・生物学的ストレス、そして遺伝的な要素が重なりあった末に発症します。

特に若者では、慢性的な睡眠不足が一因となって発症することが多いことが統計的に明らかになっているようです。睡眠不足は、睡眠相が確定していない子どものほうが、大人の場合より脳へのダメージが大きいということなのでしょう。

わたしの場合のように、目まぐるしい生活が睡眠不足の直接の原因になっていることもあれば、いじめや人間関係のストレス、環境の変化が脳を過度に興奮させ、眠れなくなってしまう場合もあるようです。

CFSはしばしばウイルスとの関係が指摘されますが、それも無関係ではないそうです。わたしも免疫応答が続いているようでインフルエンザ様症状が良くなったり悪くなったりします。やはり、複数の影響が「重なりあって」という部分が大きいように思います。

「夜型生活の犠牲者

このニュース記事が書かれたのは、わたしがすでに慢性疲労症候群を発症した後のことでした。

もっとも、発症前に読んでいたとしても、予防することは不可能だったでしょう。睡眠時間を確保するということは、そのころのわたしにとって、あるいは今同じ状況に置かれている子どもにとって、社会から脱落するに等しいことだからです。

わたしの親は勉強を強制することはありませんでした。しかし学校はそうではありませんでした。どんな綺麗事を言おうと、結局のところ、子どもの価値を測る物差しは成績であり偏差値でした。以前に書いたとおり、これは価値観の問題でした。

社会的虐待として考える小児慢性疲労症候群社会的虐待として考える小児慢性疲労症候群

受験戦争は、戦争と呼ばれるからには必ず犠牲者がいます。文字通りの戦争の犠牲者が消えぬ障害を負うことがあるように、比喩的な戦争の犠牲者も病気という半恒久的な傷を負うことがあります。

また、たとえ受験戦争に徴兵されていなくても、競争社会と呼ばれるからには、負傷して運ばれていく子どもがいるはずです。

24時間社会の到来は、比喩的な戦争や競争が24時間休みなく続く社会をもたらしました。子どもを取り巻く環境は決して生易しくはないのです。

三池先生は記事の最後にこう述べています。

大人の生活が夜型になっているのに、子供だけは早寝早起きを、というのも不可能な時代になってきた。そういう世の中が子供たちに睡眠障害を“発病”させているともいえます

▼子どもの慢性疲労症候群について知るには

最近聞いた話では、三池先生にとってこれまでで一番よい著作は学校過労死―不登校状態の子供の身体には何が起こっているかなのだそうです。わたしもこの本が最も印象に残っているので詳しい書評を書きました。詳しくは以下をご覧ください。

小児CFSの本「学校過労死―不登校状態の子供の身体には何が起こっているか」(上)小児CFSの本「学校過労死―不登校状態の子供の身体には何が起こっているか」(上)

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