若年性線維筋痛症との関連で研究されている、子宮頸がんワクチン接種後症候群について、実体験が書かれた記事が報道されていました。どれほど深刻な問題であるかを如実に物語る内容となっています。
30もの症状、重い記憶障害
記事によると、千葉県の高校生、深山さんは、2011年9月に最初のワクチン接種を受け、直後から疲労倦怠感や、背中や肩の痛みが生じました。
そして3回目の接種を受けた1ヶ月後の2012年4月から、症状が悪化し、力が入らなくなり、毎日倒れるようになったそうです。
■倦怠感
■全身の痛み
■絶え間ない頭痛
■全身に力が入らない
■まっすぐ歩けない
■記憶障害
■視力低下
■意思と関係なく体が動く不随意運動
など30もの症状が出て、入院を繰り返して学校は卒業できず、いつ倒れるか分からないので、「倒れたら開けてください」と書いて連絡先などを記したカードケースを首からかけているそうです。症状は年々悪化しているといいます。
特に、記憶障害によって、母親が分からず、「おばさん」と呼び続けているという部分を読んで、その深刻さがどれほど厳しいものかを感じました。
HANSとしての研究
子宮頸がんワクチン接種後症候群については、子どもの線維筋痛症と症状が似ていることなどから、線維筋痛症の専門医を中心に病態解明が勧められていて、「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)」と名づけられています。
現在のところ、線維筋痛症と似てはいるものの新しい病気であるとされています。
若年性線維筋痛症との違いの一つは、HANSでは高次脳機能障害が顕著なことであるとされていましたが、今回の報道にあるような記憶障害は、確かに通常の線維筋痛症とは一線を画するほどの深刻なものだと思いました。
線維筋痛症の専門医である戸田克広先生は、先日、個人レベルではワクチンとの因果関係を明らかにすることは不可能だとしつつも、次のようなツイートを投稿されていました。
子宮頸癌ワクチンを積極的に推奨すべきかどうか。線維筋痛症の診療体制はほとんど整っていないため、それが整っているという大間違いを前提にしないでいただきたい。また、それにより人生を棒に振っても現時点では国家賠償は出ない。推奨するなら最低限、国家賠償を実行すべき。
— 戸田克広(Katsuhiro Toda) (@KatsuhiroTodaMD) 2015, 9月 13
子宮頸癌ワクチンを積極的に推奨すべきかどうか。この問題が表面化する前に私の娘はすでに接種を終了していた。私に未接種の娘がいれば、それを受けさせない。人生を棒に振っても国からは「心因性」と決めつけられ、国家賠償もない。
— 戸田克広(Katsuhiro Toda) (@KatsuhiroTodaMD) 2015, 9月 13
またブログにも、メールでのアンケートに基づく調査結果に関する記事を載せておられました。
子宮頸癌ワクチン接種後症候群 : 腰痛、肩こりから慢性広範痛症、線維筋痛症へ ー中枢性過敏症候群ー 戸田克広
まとめとして、慢性神経障害性疼痛、疲労、および自律神経機能不全の無力にする症候群はHPVワクチン接種後に生じるのかもしれない.
統計の調査と厚労省の反応
別のニュースによると、2009年12月から14年11月までに接種を受けた約338万人のうち、副反応が出たと報告された2584人の症状について、医師が調査票に記入するアンケートで186人(10.7%)は症状が回復していなかったそうです。
186人は頭痛や筋力低下、失神、意識レベルの低下などさまざまな症状を訴え、87人が入院し、135人が通学や通勤に支障があるとのこと。
しかし、こうした調査に対し、若年性線維筋痛症なども診ている横田俊平先生は
我々だけでも200人以上診ており、調査は患者を見つけきれていない
と述べているそうです。
これに対し、今回の記事でも書かれていたように、厚生労働省の専門家検討会は2015年9月17日、これらの症状は「心身の反応」であるという従来の見解を変更しないことを決めたそうです。
しかし、厚労省の審査会は18日、救済を申請していた7人のうち6人について、痛みや筋力低下、学習障害などの症状に関し、接種との関係が否定できないと判断し、医療費の支給を決めました。
深山さんの経験談の中に、
市内の病院での診断は「異常なし」。医師から「演技でしょ」「精神的なもの」と突き放され、泣きながら家に帰った。
とありましたが、そのような状況が一日も早く改善して、メカニズムの解明や治療法の開発が進むよう望みます。