慢性疲労症候群とはどんな病気なのでしょうか? どうやって治療すればいいのでしょうか? 家族や友だちにはどう説明すればいいのでしょうか?
慢性疲労症候群(CFS)という聞き慣れない病気の可能性を疑ったとき、あるいは実際に慢性疲労症候群であると診断されたとき、多くの人はそんな疑問を抱えます。
一般に、メディアなどで、慢性疲労症候群は原因不明の難病だと説明されることが多いため、そう診断されたら、もう治る見込みもないのだ…と当人も家族も落胆してしまうかもしれません。
しかし、実際には様々な方面から研究が進んでいて、中には生活の質を向上させたり、効果的な治療を見つけてうまく対処できるようになったりする人もいます。
慢性疲労症候群の辛い体調の中で、何かを調べたり読んだりするのはとても難しいことだと思いますが、比較的読みやすく、治療や日常生活に役立つ本もあります。
自分ではじっくり読むのが難しいとしても、もし良い本があれば、家族や友人に紹介して理解を深めてもらうこともできるでしょう。
このエントリでは、関連書籍を3つのカテゴリに分けて、
■比較的楽に読めるマンガ形式の情報
■もう一歩踏み込んで原因を探るときに役立つ本
を厳選して紹介したいと思います。
1.慢性疲労症候群を知るのに役立つ本
慢性疲労症候群を知るのに役立つ本は何冊かありますが、その中でも比較的一般読者向けに書かれた読みやすい本を、まずピックアップしたいと思います。
慢性疲労症候群の最初の一冊
危ない!「慢性疲労」 (生活人新書)は、日本の慢性疲労症候群の研究の中心施設である大阪市立大学の慢性疲労外来を担当する、倉恒弘彦先生らによる本です。
もう10年以上前の本ですが、慢性疲労症候群のメカニズムを理解するのに役立ちます。
さまざまな病院をめぐって異常がないといわれる慢性疲労症候群ですが、詳しく検査すればさまざまな問題が見つかり、潜伏しているヘルペスウイルスなど免疫系の問題も関係している、という研究成果について丁寧に説明してあります。
現時点でわかっている治療に役立つアドバイスや、実際の患者の事例などもたくさん載せられているので、どんな病気であるか全体を把握する助けになるでしょう。
まわりに理解してもらえないときに役立つ一冊
そのツラさは、病気ですは、慢性疲労症候群を主に取り上げた本ではありませんが、辛さを理解してもらうのが難しい幾つかの病気の患者をクローズアップした興味深い本です。
扱われているのは、うつ病、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、パニック障害、睡眠時無呼吸症候群、慢性頭痛、関節リウマチ、更年期障害、アルツハイマー病の9つ。
本当はものすごく辛いのに、まわりに理解してもらえないこれらの病気の実態が、取材形式で、当事者の苦労に親身になって寄り添う形で生き生きと解説されています。
理解のなさに苦しむ患者の声をはっきりわかりやすくまとめ、病気の説明や治療法などもあわせて簡潔に構成してあるので、周囲の人に読んでもらうと、苦痛を理解してもらいやすくなるかもしれません。
よく混同されがちなうつ病の具体的な体験談も、となりの章に載せられているので、それぞれの違いがはっきりわかるのも良いポイントです。
子どもの慢性疲労症候群がわかる本
学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてている (講談社プラスアルファ新書)は、不登校の子どもについて長年研究してきた、熊本大学名誉教授、三池輝久先生による子どもの慢性疲労症候群の解説書です。
この題名では今ひとつピンとこないかもしれませんが、内容は子どもの慢性疲労症候群の特色や研究成果、当事者である子どもたち自身の生の声などが共感性たっぷりに書かれている情熱的な本です。
大人の慢性疲労症候群とは違い、子どもの場合は、独特の学校環境からくるストレスがあり、それがいかに当人たちを追い詰めているか、家族や医療機関には何ができるのかが生き生きと書かれています。
2.比較的楽に読めるマンガ形式の情報
次に紹介するのは、頭が働かず、本が読めないときでも比較的読みやすいマンガ形式の資料です。
慢性疲労症候群のマンガ
2年くらい前に、わたしはこのブログで、慢性疲労症候群にもわかりやすいマンガがあればいいのに、と書いた覚えがあるのですが、先月(2016/2)、イラスト投稿サイトPixivで慢性疲労症候群のマンガをアップロードされた方々がいました。
Pixivはアカウントがなくても、Google、Facebook、Twitterのいずれかのアカウントがあればログインできます。
休んでも、お疲れですよ! 第1話 | サヨコト [pixiv]
cfs(慢性疲労症候群)って知ってる? | ゆらり [pixiv]
お二人とも、とてもわかりやすいマンガで、慢性疲労症候群(CFS)の特徴をうまく捉えている内容だと思いました。
当事者の方が読めば、色々と共感できると思いますし、家族や友だちが読めば、慢性疲労症候群を理解する助けになると思います。
体調が思わしくない中での執筆だと思いますが、無理せずマイペースで書き溜めて、ぜひいつか出版してほしいですね。
Pixivの慢性疲労症候群関係の情報を見つけたい場合、タグ「慢性疲労症候群」から調べると、すべて出てきます。
脳脊髄液減少症のマンガ
そのほか、慢性疲労症候群(CFS)の関連疾患である、脳脊髄液減少症や、化学物質過敏症については、すでに単行本のマンガが発売されています。
「なまけ病」と言われて~脳脊髄液減少症~ (書籍扱いコミックス)は、脳脊髄液減少症の苦闘について描かれた2つのエピソードと、専門医による解説から構成されているお手頃な一冊です。
それぞれのエピソードは、子どもの脳脊髄液減少症、そして家庭を持つお母さんの脳脊髄液減少症の経験となっています。
化学物質過敏症のマンガ
かびんのつま 1 (ビッグコミックススペシャル)は、漫画家のあきやまひできさんが、化学物質過敏症の独特の世界や苦労について描いたもので、全3巻で完結済みです。
ご自身の奥さんのかおりさんの化学物質過敏症の体験談をもとに物語形式で実話にもとづく波乱万丈のストーリーが綴られています。
3.もう一歩踏み込んで原因を探るときに役立つ本
最後に、慢性疲労症候群の原因について、もっと詳しく調べたい人に役立つ本を幾つか紹介しておきます。
ひとくくりに慢性疲労症候群という病名がつけられていても、単一の病気ではなくあくまで「症候群」なので、人によって原因が異なっている場合があります。
痛みが強い場合に読む本
まず痛みが強い場合は線維筋痛症(FM)の解説書を参考にすることで、治療の突破口が開けるかもしれません。
「線維筋痛症」は改善できる―原因不明といわれてきた全身の激痛は少し専門的ですが、似ている病気との区別や痛みのタイプ別の治療法も書かれていて、線維筋痛症を一通り理解するのに役立ちます。
文章だけでは読みにくいという場合は、イラストで図解されているわかりやすい線維筋痛症がよくわかる本 全身を激しい痛みが襲う (健康ライブラリーイラスト版)もあります。
においに過敏な場合に読む本
特定の環境で具合が悪くなる人の中には、シックハウス症候群や化学物質過敏症(CS)の診断基準を満たす人もいます。
化学物質過敏症―ここまできた診断・治療・予防法 (生命と環境21)は、少し古い本ですが、化学物質過敏症の研究の草分けである石川哲先生、宮田幹夫先生による、概念レベルから症状としての特徴、対処法まで解説された詳しい本です。
子どもの場合は、シックスクールとその対処法について扱った知っていますか?シックスクール―化学物質の不安のない学校をつくる (健康双書)が参考になるかもしれません。
食生活に偏りがある場合に読む本
偏った食生活や胃腸の不具合が原因で、低血糖症や、リーキーガット症候群、副腎疲労と呼ばれる消化吸収・栄養面での問題が生じて、強い疲労感が続くケースもあるようです。
医者も知らないアドレナル・ファティーグ―疲労ストレスは撃退できる!は副腎疲労(アドレナル・ファティーグ)に関する専門医ウィルソン先生による詳しい本の邦訳です。
分厚すぎて読むのが辛い人は、かなり簡単な説明になってしまうものの、「うつ?」と思ったら副腎疲労を疑いなさい 9割の医者が知らないストレス社会の新病 (SB新書)など、日本人医師による易しい本も幾つか出ています。
立ち上がると頭痛がひどい場合に読む本
交通事故などの外傷後に慢性疲労症候群になった人や、立ち上がると強い頭痛がして、横になると和らぐ人は、脳脊髄液減少症を疑ってみるといいかもしれません。
脳脊髄液減少症を知っていますか―Dr.篠永の診断・治療・アドバイスは、脳脊髄液減少症の第一人者である篠永正道先生によるわかりやすい本で、慢性疲労症候群や線維筋痛症との関連性や、最新の治療法についても書かれています。
思春期の子どもの場合は、立ち上がるときに頭痛や立ちくらみが生じ、しばしば慢性的な疲労感や睡眠障害も伴う、起立性調節障害(OD)が原因のこともあります。
起立性調節障害については、起立性調節障害がよくわかる本 朝起きられない子どもの病気 (健康ライブラリーイラスト版)などわかりやすい本が多数出版されています。
子どものころから原因不明の体調不良がある場合に読む本
子どもの慢性疲労症候群の近年の研究によると、背景として、自閉スペクトラム症(ASD)、つまり従来のアスペルガー症候群などの発達障害を持つ子どもが多いことが明らかになっています。
女性のアスペルガー症候群 (健康ライブラリーイラスト版)は、子どもの慢性疲労症候群の研究とは無関係の、発達障害の専門医による本ですが、興味深いことに、女性のアスペルガー症候群は、男性のアスペルガー症候群とは異なる症状が出るとされています。
具体的には、小学校中学年ごろから原因不明の身体症状として現われることが多く、なおかつ睡眠障害を伴う、というもので、子どもの慢性疲労症候群に関する研究成果と一致しています。
世の中でステレオタイプになっている「オタク」のようなアスペルガー症候群のイメージには合わないと感じていても、特に女の子の場合は、一度この本を確認するとよいかもしれません。
また子どものころの生育環境に基づく思考パターンの癖が、慢性的な疲労感や、脳の神経疾患、自己免疫性疾患などと関連している場合があるようです。
たとえば、子どものころ厳しい親のもとで育った人は、常に頑張らないと認めてもらえないという根深い思い込みに急き立てられてしまい、限界を超えて働き過ぎてしまったり、休むことや遊ぶことに罪悪感を覚えたりするかもしれません。
だれに対してもノーと言えず、常に周囲の人の顔色をうかがっているために、心身が疲弊してしまう人もいます。
こうした、限界を超えてやりすぎること、疲れていても休めないこと、過剰適応することなどの性格特性は、慢性疲労症候群の患者にしばしば見られると言われています。
これらは決して心理的な問題ではなく、心の奥底に根付いた思考・行動パターンであり、精神面での負荷は、体の免疫系を疲弊させ、さまざまな慢性疾患を引き起こすことがわかっています。
そのような子どものころからの根深い問題に心当たりのある人は身体が「ノー」と言うとき―抑圧された感情の代価を読んでみると役立つでしょう。
慢性疲労症候群をよく知ってうまく対処する
慢性疲労症候群は、メディアなどでよく原因不明の疲労感と言われ、得体のしれない難病奇病のように扱われがちです。
確かに決して軽い病気ではなく、激しく長期的な苦痛を伴うことは間違いありませんが、さまざまな方面からの研究が進んでいて、うまく対処すれば、ある程度回復できる人がいるのも事実です。
今回紹介したさまざまな本やマンガなどの資料は、患者が賢く病気に対処する助けになります。
自分に適した治療法や日常生活のアドバイスが見つかる可能性がありますし、家族や友人、職場の同僚にもっとよく理解してもらえる方法が見つかるかもしれません。
自分一人だけが苦しんでいるように思えるとき、本の中に似たような境遇の人を発見して、慰められ、その奮闘に勇気づけられることもあるかもしれません。
本を読んだり、何かを調べたりするのは、常に重苦しい疲労感につきまとわれている人にとって並大抵のことではありません。
けれども、ここで紹介した本の多くは、古本の低価格や図書館でも見つかると思います。それほど労力や費用を費やさなくても、手に取ることはできるでしょう。
少しでも気になる情報があれば、ぜひ気軽に手にとってパラパラと見るだけでも、疲労とたたかうヒントが見つかるかもしれません。
今回紹介した本についてのこのブログでの感想についてはカテゴリCFSの本やCCFSの本にまとめてあるので、興味があればご覧ください。