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自閉スペクトラム症(ASD)の子どもの視覚的思考力とボトムアップ処理のメカニズムが解明!

覚的思考力が高い自閉スペクトラム症(ASD)の子どもの脳の特徴が、金沢大学 子どものこころの発達研究センターとモントリオール大学の共同研究プロジェクトで明らかにされました。

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世界初! 自閉スペクトラム症児の視覚類推能力に関わる脳の特徴を捉える | 金沢大学

 

 自閉スペクトラム症児の視覚類推能力に関わる脳の特徴明らかに-金沢大 - QLifePro 医療ニュース

ASD児の視覚類推能力に新知見|QLifePro 医療ニュース|医療情報サイトその視覚的能力の高さは、脳の視覚野につながるボトムアップ型の情報処理と関連している多様な個性の一つであることがわかったそうです。

自閉スペクトラム症の優れた視覚的思考力

アスペルガー症候群などを含む、自閉スペクトラム症(ASD)の人の中には,たとえば「三次元の物体イメージを,心の中でうまく回転させることができる」など、視覚性の問題を解く能力が優れた人たちがいます。

そのことは、以前の記事で取り上げた天才と発達障害 映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル (こころライブラリー)Image may be NSFW.
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にも詳しく書かれていました。

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アスペルガーの2つのタイプ「天才と発達障害 映像思考のガウディと相貌失認のルイス・キャロル」 | いつも空が見えるから

 

その秘訣として、モントリオール大学のローレン・モトロン教授らの、自閉スペクトラム症の大人を対象とした これまでの研究によると、脳の視覚野と他の場所の機能的結合、すなわち神経活動のつながりが強いことが重要であると考えられてきました。

一方で、脳機能を計測するには、放射線被曝のリスクがあったり、大掛かりな機器を使ってじっとしていることが必要だったりする難しさがあり、子どもを対象とした研究は行われていませんでした。

しかし、このたび国内唯一の、幼児用脳磁図計(MEG)という、子どもの頭の大きさに合わせて巻き、体に害のない方法で脳活動を計測できる機器を利用でき、研究への道が開けたそうです。

視覚的思考とボトムアップ思考が関係している

研究では、4 -10 歳の定型発達の子どもと自閉スペクトラム症の子ども、それぞれ18名を対象に、視覚を用いる課題をこなしてもらい、幼児用MEGで脳の神経活動を記録しました。

すると、自閉スペクトラム症の子どもでは、大人の場合と同様に、脳の後頭部の視覚野から他の部位への神経の活動のつながりが強いほど、視覚的な課題をこなす能力が高かったそうです。

自閉スペクトラム症児においては,視覚野(後頭部)から他の部位への機能的結合が強いほど,視覚性の課題(視空間課題および視覚性類推課題)の遂行能力が高いこと(※)が世界で初めて示されました。

またこの視覚野と他の領域との神経活動のつながりには、ガンマ帯域活動(GBA)と呼ばれる脳波の活動が見られたそうです。GBAは特にボトムアップ型の情報処理と関連していると言われています。

ガンマ帯域はボトムアップ処理を反映していると考えられることを踏まえると、自閉スペクトラム症児においては、視覚野からのボトムアップ情報処理が促進されている場合に、視覚情報処理の長所が発揮されていることが分かったとしている。

多様な個性を「見える化」する

ボトムアップ型の情報処理とは、トップダウン型の情報処理と対をなす言葉です。

トッブダウン型が上から見押すかのようにまず全体をおおまかに把握するのに対し、ボトムアップ型は下から積み上げていくように、細部を正確に把握してから全体像へと進んでいきます。

トップダウン処理とボトムアップ処理の違いや、それぞれの利点については、発達障害の素顔 脳の発達と視覚形成からのアプローチ (ブルーバックス)Image may be NSFW.
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にも次のような説明がありました。

大多数の取るトップダウン処理は、社会の維持にとって便利な反面、先入観が強くて独断的な判断に陥る可能性もある。

逆にいえば、自閉症者は、先入観なしに物事を判断する資質をもっているともいえるのだ。絶対的な物差しに則る、フェアな判断というわけだ。

…フェアで公平な見方をすることによって、必然的にコンピュータに強かったり、数学に強かったりする特徴に至るわけでもあろう。

一方で絶対的な判断は、相対的判断をする多数派から見ると、機械的だと称されることにもなる。(p81)

こうした大多数のトップダウン思考と、自閉スペクトラム症(ASD)のボトムアップ思考との違いは、以前の記事でも取り上げた互いへの違和感にもつながっているのでしょう。

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アスペルガーから見たおかしな定型発達症候群 | いつも空が見えるから

 

しかしながら、トップダウン処理とボトムアップ処理はどちらも個性、向き不向きであり、優劣があるわけではありません。多様な思考が共存してこそ豊かな社会が生まれます。

今回の研究では、このような多様な個性の一端を客観的に明らかにしたという点で大きな意義を持っています。

この成果は、視覚性類推課題についての自閉スペクトラム症児の頭の働き方の特徴をとらえることができた世界で初めての報告。

子どもの脳の個性を「見える化」するひとつのステップになると、研究グループは期待を寄せている。

今後のさらなる研究による多様性の理解の進展にも期待したいところです。

金沢大学子どものこころの発達研究センターはこれまでにも自閉症に関する多数の先進的な研究を行っています。

その成果はこのブログでも以前に紹介した自閉症という謎に迫る 研究最前線報告(小学館新書)にまとめられているので、興味のある方はぜひ一読をおすすめします。


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