トラウマ研究の世界的権威であり、このサイトでも取り上げた発達性トラウマ障害(DTD)やサバイバル脳といった斬新な概念を提唱したことで知られる、ボストン大学医学部のヴァン・デア・コーク博士の本身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法が来月2016年10月11日に出版されます。
楽天ブックスの本書のページによると出版社である紀伊國屋書店からの内容紹介は次のようになっています。
私たちは何よりもまず、患者が現在をしっかりと思う存分生きるのを助けなくてはならないーー世界的第一人者が、トラウマによる脳の改変のメカニズムを解き明かし、薬物療法や従来の心理療法の限界と、EMDR、ニューロフィードバック、内的家族システム療法、PBSP療法、ヨーガ、演劇など、身体志向のさまざまな治療法の効果を紹介する、全米ベストセラー。トラウマの臨床と研究を牽引してきたヴァン・デア・コーク博士の集大成。
ヴァン・デア・コーク博士は2011年に来日し、「東日本大震災とトラウマ」をテーマにした講演を行うなど、日本の研究者との交流も盛んです。
これまでサイコロジカル・トラウマやトラウマティック・ストレス―PTSDおよびトラウマ反応の臨床と研究のすべてが邦訳されていますが、今回の本は、それらから10年以上を経ての「集大成」で、充実した内容を期待できそうです。
日本のトラウマ研究の権威である杉山登志郎先生も、この本の解説の中で、こう述べておられます。
■本書を通して私は、被虐待児とその親の臨床の中で疑問を感じつつそのままになっていた問題や、断片的な理解のままになっていた問題のほぼすべてに、明確な回答を与えられ、視野が何倍にも広がったような体験をした。
本書は日本でも、トラウマに向き合わざるを得ない人々にとって信頼できるテキストとなるだろう。--杉山登志郎(「解説の試み」より)
タイトルでも示されているとおり、トラウマが単なる心の問題ではなく、身体的な影響をもたらすものであり、心理療法だけでなく、身体に働きかけるアプローチの有効性も説明する本となっているようです。
発達性トラウマ障害(DTD)にみられるような、解離症状や重い身体面の不調を抱える人にとっても参考になる一冊だと思われます。
価格は高めの本ですが、トラウマ研究に関心がある人にとって、間違いなく読んでみる価値のある一冊だといえそうです。