この記事は解離と慢性疲労について考えた以下の記事の4つ目の補足です。
三池輝久先生は、不登校・小児型慢性疲労症候群の予防として、睡眠不足症候群(IIISS)を防ぐ眠育の効果が高いとして、近年、その分野に注力しています。
睡眠時間の確保が小児型慢性疲労症候群の発症を防ぐのは、本文で見たように、睡眠不足によってストレス反応の第二段階、つまり交感神経系の「闘争・逃走」が生じやすくなるのを食い止めるからでしょう。
しかし、小児型慢性疲労症候群を解離による不動系の反応として考えた場合、眠育によって不登校が予防される、さらなる納得のいく理由を見い出すことができます。
PTSDと睡眠障害はどちらが先か
本文で考えたとおり、PTSDと解離は、対照的な脳の反応でありながら、どちらも同じトラウマ障害とみなすことができます。簡単に言えば、急性のトラウマはPTSDを引き起こしやすく、慢性のトラウマは解離を引き起こしやすい、という違いがあります。
PTSDにおいて睡眠障害が現れるのは、わざわざ説明するまでもなく直感的に理解できます。トラウマを負ったPTSDの人が、悪夢やフラッシュバックや過覚醒に悩まされるのは、フィクションでもおなじみの場面です。
ところが、近年、PTSDにおける睡眠障害は、PTSDの二次症状であるだけでなく、PTSDの原因でもある、と考えられるようになっています。
PTSDになったから睡眠障害になるのではなく、もともと睡眠障害があったので、PTSDになるのではないか、というわけです。
子どものPTSD 診断と治療の中で、谷池雅子先生はこう述べていました。
PTSDにおいては不眠や悪夢のような睡眠障害が認められるのみならず、睡眠障害はPTSDの発症に先行し、その重症度を予測させることが示唆されている。(p123)
アリゾナ・プレスコットバレー睡眠障害センターのロバート・ローゼンバーグ医長による睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッドでは、PTSDと睡眠障害の関係が、まる一章を割いて、詳しく扱われています。
特に、PTSDは睡眠時無呼吸症候群(SAS)と関係が深いとされていて、睡眠時無呼吸症候群はPTSDの「結果」ではなく「原因」のひとつだと考えられています。
睡眠時無呼吸は、PTSDの帰還兵と、性的トラウマによるPTSDの女性に最も多く見られます。
特にPTSDを持つ帰還兵の睡眠時無呼吸の割合は、性別と年齢によって分類したグループで推定される割合よりはるかに高いことから、偶然そうなるのではないことがわかります。
PTSDになる以前に睡眠時無呼吸を発症していたと推測されます。(p210)
もともと睡眠時無呼吸症候群を抱えている人がPTSDになりやすいのはどうしてでしょうか。
それは睡眠が記憶を整理する役割を持っているからです。
感情的トラウマを処理するにはレム睡眠が必要です。レム睡眠は、恐怖記憶除去と呼ばれるプロセスにかかわっています。
恐怖記憶除去というのは、日常生活のごくふつうの行動から、恐怖を感じた出来事を切り離す脳の作用のことです。(p209)
睡眠時無呼吸は、レム睡眠を分断するので、もともと潜在的に睡眠時無呼吸を抱えているがために、トラウマを経験したとき、その記憶をうまく処理できず、PTSDを発症しやすくなると考えられます。
このような場合、PTSDの症状を直接治療するのではなく、睡眠時無呼吸を持続的陽圧呼吸療法(CPAP)で治療するだけでも、悪夢や不安がかなり改善するそうです。
睡眠不足症候群がPTSDのリスクを高める
PTSDのリスクを高める睡眠障害は睡眠時無呼吸症候群だけではありません。睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッドには次のような調査結果が載せられています。
近年行われた、初めて戦地に派遣される15204人の男女を対象としたミレニアム・コホート研究と呼ばれる追跡調査では、派遣前の不眠症が、PTSDのリスクを高める要因だとわかりました。
調査によれば、派遣前に不眠症の症状があった軍人は、うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、パニック障害、不安症などの精神的問題を起こす確率が高いのです。(p211)
また1晩で6時間以下の短い睡眠時間も、PTSDの発症率を上げることがわかりました。不眠症は入眠と睡眠持続が困難な障害です。睡眠時間が短いと、精神やホルモンなどの回復に必要な睡眠サイクルが生まれません。(p212)
PTSDの患者の多くが、PTSDになる以前に睡眠障害を発症しています。睡眠時無呼吸、不眠症、悪夢などの障害は、PTSDになる以前のPTSD患者に多く見られるようです。(p291)
ここで注目したいのは、睡眠不足、いわゆる睡眠不足症候群(BIISS)がPTSDのリスクを押し上げるとされていることです。
近年の日本の研究によると、睡眠不足の直感に反する影響が明らかになっています。
睡眠不足は、ふつう眠りが浅くなると思われがちですが、三島和夫先生らのグループの研究によると、そうではないことが分かりました、睡眠不足下でも深いノンレム睡眠は保たれていますが、浅い睡眠やレム睡眠が損なわれていたのです。
『潜在的睡眠不足』の解消が内分泌機能改善につながることを明らかに | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
これは睡眠不足時には深い睡眠が最優先で保たれ、浅い睡眠やレム睡眠から削ぎ落とされることを示しています。
しかし本研究から、浅い睡眠やレム睡眠もまた代謝やストレス応答機能の維持にとって重要であることが明らかになりました。
巷で広まっている「短時間睡眠法」の問題点を浮き彫りにした結果と言えるでしょう。
つまり、慢性的な睡眠不足症候群に陥ると、トラウマ記憶を除去するための「恐怖記憶除去」のプロセスを担うレム睡眠が損なわれます。
その状態でトラウマ体験に遭遇すると、本来、睡眠によって処理されるはずのトラウマ記憶が処理できず、エラーを吐き出してしまいます。
その結果、いつまでもトラウマ記憶と日常生活が結びついたままになる症状がPTSDなどのトラウマ障害ではないか、ということになります。
他方、一概に睡眠障害が「原因」で、PTSDは「結果」だと言い切れるわけでもありません。
身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法が述べるように、処理しきれないトラウマ記憶の断片は、レム睡眠を中断させます。
私はボストン退役軍人クリニックにいたときに同僚たちと、PTSDを持つ帰還兵はレム睡眠に入るとすぐに目覚めてしまうことが多いのを発見した。
おそらく、夢を見ている間にトラウマの断片を活性化してしまったのだろう。(p430)
睡眠障害によってレム睡眠が中断するからトラウマが処理できないだけでなく、トラウマ記憶によってレム睡眠が中断されるという逆のことも生じています。
これは、睡眠障害とトラウマ障害が、ニワトリが先かタマゴが先かのように複雑に絡み合っている可能性を示唆しています。
おそらくは、睡眠障害が先にあるケースが多いのでしょうが、睡眠障害がPTSDを生み、PTSDが睡眠障害を生み、睡眠障害が…という延々と続く負のループに陥ってしまっているということです。
子どものPTSD 診断と治療によれば、PTSDの悪夢障害への効果性が実証されているミニプレス(プラゾシン)はレム睡眠を正常化させることで効果を発揮すると考えられています。
特異的α1アドレナリン受容体拮抗薬のプラゾシン(ミニプレス)は、2003年に少数の退役軍人を用いたcontrol studyにおいて、悪夢を含むPTSDの睡眠障害に有効であることが示され、大規模な研究により、睡眠の質が改善し、悪夢が減少することが確かめられている。
プラゾシンが悪夢を軽減するメカニズムについて、Raskindは、以下のような仮説を提唱している。
1)PTSDの悪夢は浅睡眠時に認められ、REM睡眠を阻害する。
2)浅睡眠は、中枢神経系におけるα1受容体の刺激によって増加する。
3)プラゾシンのα1受容体拮抗作用は、浅睡眠を減少させ、REM睡眠を正常化させる。(p127)
ミニプレスは、レム睡眠を正常化させることでPTSDの悪夢を減少させ、そのほかの症状も改善させるようです。
このようなわけで、睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッドでは、プラゾシンはPTSDの悪夢にいちばん効果的な薬として言及されています。
PTSDの悪夢の治療に使われる薬剤が何種類かあります。セロクエルという新型の非定型抗精神病薬を使用すれば、ある程度快方に向かいます。
けれども、いちばん効き目があったのは、プラゾシンというやや古い降圧薬でした。(p289
興味深いことに、ミニプレス(プラゾシン)は、小児型慢性疲労症候群の睡眠障害の治療に使われるカタプレス(クロニジン)や近年ADHDに承認されたインチュニブ(グアンファシン)の近縁の降圧薬です。
子どものPTSD 診断と治療では、この3種の薬がいずれもPTSDの治療薬として並べて挙げられています。(p127)
なぜ眠育が小児型慢性疲労症候群を予防するのか
こうしたPTSDと睡眠障害の複雑な関係を理解すると、PTSDとは正反対のトラウマ反応である解離の場合も、同様のループが生じていると推測できます。
すなわち、睡眠不足症候群(BIISS)のせいで、レム睡眠の恐怖記憶除去が損なわれた状態で学校生活などの慢性的な拘束性のトラウマに曝露すると、その記憶を日常生活から切り離せなくなり、常に不動系のトラウマ反応が生じるようになっていきます。
睡眠によって急性のトラウマ記憶を処理できず、日常生活でも交感神経系の「闘争・逃走反応」が生じる状態がPTSDだとすると、やはり睡眠によって慢性のトラウマ記憶を処理できず、日常生活でも不動系の「固まり・麻痺反応」が慢性化してしまう状態が解離、そして不登校や小児型慢性疲労症候群だということができるでしょう。
以前に扱ったように、解離の病態はさまざまなタイプの睡眠障害と非常に似ており、解離という不動系のトラウマ反応が、実際には睡眠障害を土台として生じている可能性を示唆しています。
身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法が述べるように、PTSDや解離性障害でEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)が功を奏するのは、それが損なわれているレム睡眠の機能を補うためのようです。
その後まもなく、EMDRは急速眼球運動を伴うレム睡眠(睡眠のうち、夢を見る段階)に関係すると主張する論文が、「ドリーミング」誌に掲載された。
睡眠、とりわけ夢を見ているときの睡眠が、気分の調節に重要な役割を果たすことは、研究によってすでに明らかになっていた。「ドリーミング」誌の論文が指摘したように、レム睡眠時には目が素早く左右に動くが、同じことがEMDRでも起こる。
レム睡眠の時間が増えるとうつが軽減し、レム睡眠が減ると抑うつ状態になりやすくなる。(p430)
近年では、夢を見ているのはレム睡眠のときだけではないことがわかっていますが、レム睡眠が記憶の整理と関連しているのは事実です。
「夢」の認知心理学によれば、レム睡眠は手続き記憶、ノンレム睡眠はエピソード記憶の整理に関わっている可能性が示唆されています。
最近、レム睡眠とノンレム睡眠で処理される記憶の内容に差異があるという研究が多く見られる傾向がある。
大雑把にいえば、レム睡眠では手続き記憶に関する内容が、ノンレム睡眠では宣言的もしくはエピソード的記憶の処理が行われていることを示す内容が多いことを付け加えておこう。(p216)
本文で考えたとおり、トラウマ記憶は、通常のエピソード記憶ではなく手続き記憶であるせいで、言葉で説明することができず、本人も気づかないうちに自動的に再演されつづけるという性質を持っていました。
そうすると、ここまで考えてきたことは、すべて一本の線上にすっきりとまとまります。
(1)睡眠障害はトラウマ障害のリスクとして先行する
睡眠時無呼吸はレム睡眠が分断される。同様に、睡眠不足症候群(BIISS)でも深い眠りは維持され、まずレム睡眠から削ぎ落とされる。
(2)レム睡眠の不足はトラウマ記憶の処理を妨げる
レム睡眠は手続き記憶の処理に関わっている。本文で見たように、PTSDや解離におけるトラウマ記憶とは、エピソード記憶ではなく手続き記憶、つまり「からだの記憶」である。
(3)不登校や小児型慢性疲労症候群は眠育で予防できる
レム睡眠の確保はPTSDや解離といったトラウマ障害を予防できる。手続き記憶の処理の失敗による慢性的な不動系の反応である不登校や小児型慢性疲労症候群も、睡眠の確保で予防できることになる。
こうして睡眠障害とトラウマ障害、そして不登校との関係を整理すると、なぜ感受性の強いHSPやADHDの子や、感覚過敏を伴う自閉症の子が、しばしば不登校や引きこもり、小児型慢性疲労症候群になりやすいとされるのかも見えてきます。
こうした子どもたちは、感受性の強さや感覚過敏のせいで、トラウマ性のストレスにさらされやすい以前に、まず、毎日の睡眠の質が損なわれやすいのです。
先に引用したロバート・ローゼンバーグの睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッドでは、HSPが不眠症の疾病素質として真っ先に挙げられています。米国の第一線級の睡眠専門医が注目するほど、HSPは睡眠障害と密接に関係しています。
疾病素質とは、ある種の人々を過剰反応させる、または敏感にさせる遺伝子的、肉体的、精神的なパターンのこと。
過剰反応してしまう人の神経系統の特徴をさらに理解するための参考書としてエレイン・アーロン著『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ(SBクリエイティブ)』がある。(p80)
また、自閉症についても、三池先生らによるいま、小児科医に必要な実践臨床小児睡眠医学の中で、睡眠障害との関わりが詳しく扱われています。
特に、自閉症の当事者研究に詳しい熊谷晋一郎先生は、この本のなかでこう述べていました。
綾屋の当事者研究から示唆されるのは、少なくとも一部のASD者においては、何らかの原因によってシステム・コンソリデーション[睡眠中の記憶の統合過程]が覚醒期間中にも作動しており、それが意識に上って熟眠を阻害しているということである。(p101)
ですから、不登校や小児型慢性疲労症候群の予防には、眠育による睡眠不足症候群(BIISS)の抑止が効果がある、という事実は、不登校を慢性トラウマによる不動反応としてみた場合にも理にかなっています。
むしろ、PTSDと睡眠障害の関わりを考慮に入れてはじめて、なぜ眠育が小児型慢性疲労症候群を予防するのかという疑問に、筋の通った納得のいく答えを見い出すことが可能になります。
うつ病やPTSDで過覚醒や不眠が多いのに対し、解離や小児型慢性疲労症候群では過眠が多いという点は、それぞれ睡眠中も交感神経系および不動系がベースになって機能していることを示唆しているのかもしれません。
睡眠中に活性化される不動系の反応
PTSDの人は、睡眠中にトラウマ記憶を再体験すると、悪夢にうなされ、フラッシュバックを体験し、心拍数が上がり、突然目覚めたりします。これはトラウマ記憶と「闘争・逃走反応」が結びついているためです。
睡眠の教科書――睡眠専門医が教える快眠メソッドはそのような睡眠中のトラウマ反応についてこう書いています。
睡眠中の再体験は、解決するのがむずかしい問題です。夢の中の出来事を実際に体験しているかのように複雑に体を動かしたり声に出したりします。
そのとき、眠っている人は悪夢を見ているか、夜間不安症、パニック発作、過覚醒、睡眠障害になっていることがあります。(p11)
他方、本文で扱ったように、トラウマ反応のうちPTSDに関わる「闘争・逃走反応」とは逆に、解離に関わる「固まり・麻痺反応」では内臓の働きに影響が及びます。その中には胃腸の過剰な活動や息苦しさが含まれます。
解離の人は、睡眠中にトラウマ記憶が活性化されると、そこに結びついているのは「固まり・麻痺反応」です。つまり、内臓の過剰活動や、心拍の低下、息苦しさなどが生じるはずです。
本文で考察したとおり、解離性障害の人が睡眠麻痺になりやすいのは、睡眠中にトラウマ記憶の断片を活性化してしまい、PTSDとは真逆の不動系の麻痺が引き起こされるからではないでしょうか。
PTSDの人が交感神経系の「闘争・逃走反応」でハッと目を覚ますのが悪夢なのに対し、解離の人が不動系の「固まり・麻痺反応」でハッと目を覚ますのが金縛りだということです。
睡眠麻痺に体外離脱や幻視、息苦しさが伴うのは、それが不動系の反応の一部であることを示唆しています。危機的状況で不動系が働くと、わたしたちは誰でもそうした症状を経験しえます。
おそらく不動系と関わりが深いと思われる慢性疲労症候群では、しばしば睡眠中の胃食道逆流症(GERD)が睡眠の質を悪化させていると言われていて、特に松原英俊先生が、その分野からCFS治療に励んでいます。
松原英俊 医師,【慢性疲労症候群、胃食道逆流症(特に食道外症状)】,『慢性疲労症候群』,康生会クリニック(医仁会武田総合病院グループ)-総合診療科(まつばらひでとし,) | 名医を探すドクターズガイド
確かなことはわかりませんが、こうした睡眠中の胃腸の過剰反応が、睡眠中のトラウマ記憶活性化による不動系の作用として生じている場合がありうるのではないでしょうか。
身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケアが述べるように、内臓が吐き気をもよおして、内部のものを逆流させるのは、生物が危機に面したときに反射的に生じさせるストレス反応の一部です。
内臓が迷走神経によって持続的に過剰な刺激を受けると、より大きな苦痛を感じることもある。内臓がねじれるような吐き気を催し、筋肉のエネルギーが抜けてエネルギーがなくなったと感じると、無力感と絶望感に襲われる―実際には破壊的な脅威がなくとも。
つまり、現在のところ何も悪いことがなくても―少なくとも外的には―、むかつき自体が重大な脅威と恐怖の信号を脳に送るのである。(p148)
ストレス反応における吐き気は何の意味もなく生じているわけではなく、不動系が全身のエネルギー代謝を減らし、消化に向けるエネルギーさえ節約するために生じています。だから、ひどいストレス下では吐き気が生じ、もどします。
しかし、それが睡眠中のトラウマ記憶の活性化によって危機的状況でもないのに再現されるとしたら、睡眠中の「逃走・逃避反応」の場合と同じく、やっかいな結果を招きます。
個人的に気になるのは、先述したような睡眠時無呼吸が先行してPTSDが生じている例だけでなく、その逆に、トラウマ記憶の活性化によって睡眠時無呼吸が引き起こされるケースがあるのではないだろうか、という点です。
不動系の別の反応のひとつである呼吸系の抑制が起こると、息が詰まったようになります。本文で引用したとおり、極端な場合は喘息のような症状を引き起こします。
もし眠っている間のトラウマ記憶の活性化でそれが引き起こされるケースがあるとすると、それは見かけ上睡眠時無呼吸に近いかもしれません。
それも、一般に多い閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、すなわち息をしようとしているのに詰まってしまうタイプではなく、中枢性睡眠時無呼吸(CSA)、すなわち呼吸中枢の異常で呼吸そのものが一時的に停止するタイプに似ているのかもしれません。
解離の病態でこうした現象が本当に起こりうるのかはわかりませんが、CSAは持続的陽圧呼吸療法(CPAP)ではなく、順応性自動換気装置(ASV)で治療できるそうです。
このあたりのことは、もう少し情報を集めてみないことにはなんともいえませんが、不登校や小児型慢性疲労症候群を不動系のトラウマ反応として考えることで、睡眠との関係性がより明瞭になるのは興味深いところです。