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なぜデジタル機器はADHD症状を引き起こすのか―脳はテクノロジーに適応する

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シカゴ美術館付属美術大学の臨床部長として、学生の心のケアにあたるマイケル・ピートラスはADHD評価の専門家でもあり、テクノロジーが作業記憶(ワーキングメモリ)や情報処理の能力に影響を及ぼしているのはまちがいないと言います。

「テクノロジーとソーシャルメディアは、これらの能力に害を及ぼす恐れがある。

その結果、ADHDによく似た状態になるか、もともと患っていた注意力の欠如が目立つようになるんです」(p64)

ジタル機器の使用がADHD症状と関係している?

数年前に初めてその話を聞いたときは驚きましたが、ADHDについて調べていくうちに、様々な要因でADHD症状が引き起こされうること、デジタル機器の使用もその要因の一つだということを知りました。

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冒頭に引用した退屈すれば脳はひらめく―7つのステップでスマホを手放すには、その根拠となる研究の数々が載せられていました。

はじめにことわっておきますが、この記事はデジタルデバイスが脳を破壊したり、発達障害を引き起こしたりする、と主張する扇情的な内容の記事ではありません。デジタルデトックスの勧めでもありません。

わたしたち人類の脳は、いつの時代もテクノロジーの進歩に適応して変化してきました。現代の急激な環境の変化に対しても、やはり脳は何かしらの変化を遂げてしかるべきでしょう。

私たちは、人類が経験したことのない転換点にいます。これほどたくさんの情報にまみれた時代はありません。

スマホとタブレットが広まったことで、モバイル端末の利用時間は1日当たり平均して2時間57分、画面に向かって過ごすのは11時間にもなります。

これが健康に悪いかどうかはまだわからないものの、テクノロジーが私たちを変えつつあるのはたしかです(そして、それがいい方向へかどうかも、まだわかりません)。(p14)

この記事で考えるのは、デジタル機器に適応した脳の働きが、時として「ADHDによく似た状態になる」ということです。その変化はあくまで環境に脳が適応した結果であって、障害ではありません。

このデジタル時代に、わたしたち人類がどのように適応してきたか、そしてそれがADHDと似た状態をもたらすのはなぜなのか、調べてみることにしましょう。

これはどんな本?

この退屈すれば脳はひらめく―7つのステップでスマホを手放すは、ロイター通信の記者やラジオ司会者などを務めてきたマヌーシュ・ゾモロディによる本です。

ニューヨーク公共ラジオ局(WNYC)で人気番組を司会していた彼女は、リスナーからの反響は申し分なく仕事は順調であるにもかかわらず、心が疲れ、創造性が枯れているような気がしていました。

自分の生活を見直してみた結果、ひっきりなしにスマホの通知を確認し、スケジュールを詰め込んでいることに気がつきます。

様々な研究を調べてみてわかったのは、アイデアが生まれるのは、脳がデフォルトモード・ネットワークという休息状態にあるときだということでした。あまりに刺激が多すぎる日常は、かえって創造性を枯らすのです。

では、デジタル機器との付き合い方を変えれば、もっとアイデアが湧くようになるのだろうか。

2015年2月、彼女はラジオ番組の制作チームと共に、その疑問を調査・検証するため、「退屈すれば脳はひらめく」というプロジェクトを立ち上げます。1週間のあいだデジタル機器との付き合い方を見直し、創造性を高めてみよう、という取り組みです。

驚いたことに、このプロジェクトは熱烈な反響をもって迎えられ、全米各地の2万人以上が参加しました。予想以上に多くの人がデジタル機器の使用について、漠然とした不安を感じていたのです。

この本のタイトルは「スマホを手放す」となっていますが、デジタル機器のない時代を美化するような極端な内容の本ではありません。それは著者の次の言葉からよくわかります。

この本はテクノロジーに反対するものじゃありません。コンピューター、インターネット、モバイル機器は人と人とを結びつけ、私たちにより多くの情報と知識をもたらしてくれます。

そういう結びつけのおかげで、私はフルタイムで仕事をしながらふたりの子どもを育てることができている―これは本当にありがたいことで、世の中がもっとシンプルだった公衆電話の時代に戻りたいとは思いません(そんな時代があったのを覚えていますか?)。(p22)

この本の著者も、「退屈すれば脳はひらめく」プロジェクトの参加者たちも、スマホの利用をやめたわけではありませんでした。ただ、スマホとの付き合い方や距離感を見直すことにしたのです。

その結果わかったのは、デジタル機器の習慣的な使用には、メリットもデメリットもあり、ときにはADHDのような症状を引き起こすこともある、ということでした。

壮大な社会実験

冒頭で書いたように、スマホやゲームなどのデジタル機器は、しばしば子どもや若者の脳に悪影響を及ぼすと騒がれてきました。

そうした反応は、現代に始まったことではありません。いつの時代も、新しいテクノロジーが登場するたびに、危険を騒ぎ立てる人たちがいました。

ミシガン州立大学メディア情報学部教授のキース・ハンプトンは、ソーシャルメディアやデジタル機器、ゲームに対して不安を感じるのは、まえの世代がラジオやテレビ、自動車の発明に不安を感じたのとそっくりだと述べています。

「私たちは何世紀もまえから、新しいテクノロジーが登場するたびに大騒ぎしてきた」と彼は言います。

「14世紀のイスラム教徒の学者は、情報や本の氾濫について議論を交わしていました。

100年まえに父親が食卓で新聞を読むようになったときは、妻や子どもとの会話が減ると心配されました。

今の状況もほとんど同じでしょう。新たな技術が生まれると、必ずひと騒ぎあるものなんです」(p60-61)

テレビが子どもをダメにする、若者の学力低下はゲームのせい、スマホが脳を破壊する。いつの時代も、そんな極端な持論を振りかざしてテクノロジーに反対する人たちがいます。

けれども、歴史が示しているのは、そうしたテクノロジーの変化によって人類の脳が破壊的な影響を被ったことはない、ということです。その代わり、人類はテクノロジーの進歩に柔軟に適応してきました。

ダーウィンが観察したように、生物は環境の微細な変化にも敏感に反応して、自らを適応させていきます。ある能力を発達させる反面、別の能力は退化します。つまり、そこにはメリットとデメリットが共存しています。

テクノロジーの進歩も、人類に常にメリットとデメリットをもたらしてきました。人類はテクノロジーの進歩に適応する中で必ず、快適さや文明の進歩と引き換えに、代償もまた払ってきました。

印刷技術の登場によって本が各家庭にも普及したとき、人類は詳細な記憶力を失いました。本という外部メモリが普及したことで、歴史や物語を細部まで覚える能力が必要でなくなったからです。

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スマホをはじめとするデジタル機器というテクノロジーの進歩も、過去の事例と同様のメリット・デメリットをもたらすと考えるのは理にかなっています。

今や印刷物や明かりが文明の進歩になくてはならない役割を担っているように、スマホをはじめとするデジタルテクノロジーも、大きなメリットをもたらしています。

その一方で、必ず適応に伴う代償は生じます。ある特殊な環境に適応した生物は、特有の能力を発達させる反面、別の能力を失います。何かに適応するということは、別の何かに対しては不適応になる、ということです。

セントラル・ランカシャー大学のサンディ・マン博士をはじめ、退屈という心理状態にくわしい専門家によると、こうした不安は的外れではなさそうです。

とはいえ、スマホをはじめとするモバイル機器が脳にどんな影響を与えるかについては、まだ研究が始まったばかり。手元にあるデータはせいぜい状況証拠にすぎまません。

生涯にわたってスマホを使った人とそうでない人を比較する客観的な研究なんて、もちろんないんですから。

つまり、私たちは今、だれもが壮大な社会実験に参加しているわけで、結果を知るには、身をもって経験するしかない―その結果がいいか悪いかにかかわらず。(p19)

冒頭で引用したとおり、現代のわたしたちが時代の転換点にいるのは間違いありません。

証拠が指し示しているのは、人類の脳は確かに新しい環境に適応して変化しており、その変化が従来ADHDと呼ばれてきた症状とよく似ている、ということです。

予測不能な通知に最適化された脳

デジタル機器の習慣的な使用が、ADHDによく似た症状を引き起こす、というのは本当でしょうか。

この本では様々な専門家たちの意見が載せられています。その一人はスタンフォード大学の未来学者アレックス・スジョン=キム・パン博士です。

彼は、デジタル機器漬けの毎日を送っているうちに、自分が変わってしまったことに気づきました。

「テクノロジーのせいで大変なことになりました」と彼は振り返ります。

「シリコンバレーのテクノロジー予測者として、また未来学者として、私は一日中ネットにつながってます。たいていの人と同じく、一度にたくさんのことをしてます。

ひと息入れるひまもありません。そんにことを何年も続けているうちに、深く集中する能力が衰えてきたようなんです」(p98)

パン博士は、デジタル機器の使用が増えるにつれ、「深く集中する能力が衰えてきた」ように感じました。

もともと彼は、最先端の研究者として、「長時間にわたって難解な文書を読みこなし、複雑で深遠なアイディアと格闘できる」能力が自慢でした。

しかし、デジタル機器中心の生活を送っているうちに、そうした深い集中力が衰え、「部屋に何かを取りに行っても、着いたときには何を探しにきたのか忘れてしまう」ようになったといいます。(p98)

パン博士は、他にも奇妙な変化を自覚していました。その一つは、「ファントムガジェットシンドローム」(PGS)。

大げさな名前がついていますが、スマホが鳴っていないときも鳴っているように感じたり、バイブレーションの振動を感じたりしてしまうという、スマホ世代には馴染み深い現象です。

パン博士によれば「つぎの電話やツイートの受信にすぐ気づかなくてはと思うあまり、錯覚が起きる」現象で、着信億に気づくかどうかが生死を分ける研修医に多く見られるそうです。(p105)

前に紹介したように、見てしまう人びと:幻覚の脳科学では、同じ現象が「ベル錯覚」として紹介されていました。もうすぐ音が鳴るかもしれない、と身構えているときに、脳が架空の音を再生してしまう錯覚です。

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パン博士はまた、メールをチェックするときや、画面を読み込んでいるときに、息を呑んで画面を見つめていることにも気づきました。

これはテクノロジーライターのリンダ・ストーンにより「電子メール無呼吸症候群」と名づけられているそうです。

メールばかり確認している人たちを揶揄する社会風刺的な名称に思えるかもしれませんが、有名な「エコノミークラス症候群」と同じように、わたしたちの時代特有の現実の健康問題の一つです。

「電子メール無呼吸症候群」は、どうやらトラに出くわすときに息をひそめる現象の現代版のようです。次に来るものに身構えているとき、わたしたちは無意識に不安や緊張を感じて息を殺します。(p105-106)

この習慣は健康に悪影響を及ぼすため、パン博士は、スマホのスクリーンセーバーに「呼吸を忘れない」というメッセージを表示させているそうです。(これは顎関節症の歯列接触癖の予防に使われる手法とよく似ています)

「ファントムガジェットシンドローム」と「電子メール無呼吸症候群」は、どちらも いつ来るかわからない予測不能な通知や着信、メールのチェックなどに備えて、注意力のリソースが奪われていることを示しています。

別の研究によると、スマホ利用者は、自分で思っている以上に注意力が奪われているようです。

ニューヨーク市立大学リーマン校が2015年に行った本格的な調査によると、マンハッタン区内の交通量の多い5つの交差点で、電子機器に気を取られて信号無視をした歩行者は半数近くもいました。(p53-54)

ここ日本でも歩きスマホは危険だと再三再四注意されていますが、電子機器に気を取られて交通法規を無視してしまう人がいかに多いかがわかります。

さらに別の研究では、現代のデジタル機器に慣れた人たちは、仕事中に頻繁に注意力が途切れることがわかっています。

カリフォルニア大学アーバイン校の情報科学教授のグロリア・マークによれば、絶えず集中がさまたげられていると、かなりの悪影響があるそう。

「10年ほどまえは、人の注意は平均して3分ごとに、オンラインとオフラインのあいだを行き来していました。ところが最近のデータでは、オンラインでの作業中、45秒ごとに意識が途切れることがあきらかになっています

…だれかがワープロソフトを使って文章を書いているところを観察してみましょう。その人はやがて、これといった理由もないのにふと作業をやめ、メールを見たり、フェイスブックをチェックしたりします。

このような自己中断は、外部からの中断とほぼ同じくらいよく起きています」(p139-140)

10年前は平均3分間は保たれていた注意力が、なんと45秒で途切れてしまっているのだといいます。SNSの通知や新着メールを気にするあまり、自分から作業を放棄してさまよい出てしまう「自己中断のパターン」がみられるのです。

ほかにも、スマホなどのデジタル機器は、燃える場所に置かれているだけで、注意力を低下させてしまい、対人コミュニケーションの質を悪化させる、という研究まであります。

2014年に発表された「iPhoneの影響―スマホが存在する状況での対面による社会的交流」という研究で、ヴァージニア工科大学の研究者たちは、スマホがあるだけでふたりの知人のあいだに共感が生まれにくくなると報告しました。

たとえ、それがひっそりとキッチンカウンターに置かれているだけでも。

フィールド実験では、100組のペアが10分間の会話をしているのを離れた場所から観察しました。スマホを手にしたり、机に置いたりした場合でも、しまうようにとは言いません。するとどうなったでしょう?

「年齢、性別、人種、民族、その場の雰囲気にかかわらず、スマホがないときの会話は、あるときに比べてはるかに上質なことがわかった」そうです。

「スマホが目に入らないところで会話をした人は、相手により強く共感していた。ところが、スマホがある状況で会話をした人は、親しい間柄でも、それほど共感しなかった。

さらに、あまり親しくないペアがスマホなしで会話した場合と比べても、共感の度合いは低かった」(p88)

スマホが目の見えるところにあると、SNSの反応ほ確認したくなってそわそわするのかもしれません。それはつまり、注意力のリソースがいつも奪われていることを意味しています。

手元にスマホがあるというだけで、慢性的に注意力散漫になり、目の前の仕事や対人コミュニケーションに集中しにくくなってしまうのです。

こうした注意力の低下は、デジタル機器を習慣的に利用している世代にとってはあまりに日常的なので、問題だと認識していないかもしれません。メールやSNSを確認することが生活に溶け込みすぎて、違和感を持たなくなっています。

その結果、仕事に集中できない、うっかりミスをしてしまう、対人コミュニケーションにおいて不注意が目立つ、といった症状だけを感じ取ります。そして、自分はADHDではないかと疑いはじめます。

でもそれは本当に生まれつきの発達障害なのでしょうか。

確かにADHDの診断を受け、薬を処方されれば、ADHD症状が改善するかもしれません。けれどもADHDの薬が効くからといって、先天的な発達障害である、ということにはなりません。

たとえ環境要因が原因で注意力散漫になっている場合でも、ADHDの治療薬がいわゆるスマートドラッグと同類のものであることを思えば、集中力が改善するのは当然です。

しかし原因となっている環境要因を取り除かず、安易に薬で処理能力を底上げしてしまうなら、短期的には効果があっても長期的には心身の負担を増やすかもしれません。

ADHD研究の混乱に埋もれてしまった、知られざる敏感な子どもたちの歴史
わたしたちが普段見かけるADHDの理解は、医学や教育にとって都合よく編集されたものであり、実際にはもっと複雑で多面的な性質がある、ということを歴史をひもといて考えます。

パン博士が悩まされてた「ファントムガジェットシンドローム」や、すぐ注意がそれる「自己中断のパターン」、対人コミュニケーションの質の低下などには共通点があります。

いずれも、予測不能なタイミングで生じるSNSの通知や、メールの受信、更新情報に身構えている、という点です。肌身離さず持ち歩いているスマホに、どのタイミングで新しい情報が飛び込んでくるかわかりません。

「電子メール無呼吸症候群」は、トラに出くわしたときに息をひそめる現象の現代版だとされていました。デジタル機器の通知は、いわば、いつなんどき野生動物に襲われるかもしれない現象の現代版だといえます。

もちろん、デジタル機器の通知に反応するかどうかで生死が分かたれるわけではありません。しかし、常に脳が待ち構えているという点では同じです。

現代風に言えば、予測不能な通知に備えるとは、脳に常駐プログラムを置いているようなものです。メモリの一部を割いて、バックグラウンドで通知を監視させています。

そのおかげで、友だちがSNSに投稿すればすぐ反応できますし、突然の仕事のメールにも対応できます。けれども、頭の中の常駐プログラムは、メモリを慢性的に圧迫しているので、注意力が欠けたり、忘れっぽくなったりします。

デジタル時代に適応した人たちにADHD症状が見られるのは、生まれつきの発達障害ではなく、ましてやデジタル機器で脳が破壊された結果でもありません。単に予測不能の通知に最適化して、注意力の一部を常に割り振っている結果なのです。

▼家庭内に予測不能なトラの脅威がある場合
スマホの予測不能な通知は命に関わりませんが、文字通り命の危険を感じさせるような予測不能なストレスにさらされて育つ人もいます。

いつ爆発するかわからないアルコール依存症の親や虐待する親など、家庭内における予測不能なストレスにさらされて育った人はADHDと類似した症状を抱えることが知られています。

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写真撮影による記憶の損傷効果

デジタル時代に適応した脳の変化として、もう一つ興味深いのは、本の登場がもたらした記憶力の衰えと同様の変化が、視覚的な記憶において生じていることです。

印刷物がほとんどない時代、人は聞いた事柄を記憶する必要がありました。しかし、なまじ文書として情報を保存できるがために、本を読んだり情報を探したりする能力と引き換えに、正確に記憶する能力は退化し、衰えていきました。

(興味深いことに、目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)によれば、現代でも、失明した人たちは、文字情報に頼れなくなるため優れた記憶力を発達させます)

画像についても、同じことが起こるのでしょうか。何年も前に読んだマイケル・J・フォックスのマイケル・J・フォックスの贈る言葉――未来へ踏みだす君に、伝えたいことの中に、こんなエピソードがあったのを思い出しました。

スナップ写真を撮るのがいやなのは、手が震えてその結果写真がぶれてしまうことと関係があるかもしれない。だが、それ以外にも理由がある。

カメラを持ち上げ、それを自分と被写体のあいだに構えることが、ぼくをその経験から切り離してしまう。

思い出は印刷紙の上に残るか、デジタル化されて保存され、いつでもダウンロードできる。だが、感情的な余韻は減ってしまう。

へんに聞こえるかもしれないが、カメラを手探りで取り出し(オーケー、この際パーキンソン病は関係ない)、ピントを合わせシャッターを切るまでに、自分がその瞬間から抜け出てしまうのがぼくにはわかるのだ。(p113-114)

「マイケル・J・フォックスの贈る言葉」に学ぶ、病気を受け入れ、今を生きるということ
若くして若年性パーキンソン病と診断されたマイケル・J・フォックスが今年ついに本格復帰を果たしました。彼が未来へと踏み出すことのできた秘訣は何でしょうか。書籍「マイケル・J・フォック

マイケル・J・フォックスは「へんに聞こえるかもしれないが」と言い添えていますが、さすが名俳優の感性と言うべきでしょうか。彼が感じていた懸念は、退屈すれば脳はひらめく―7つのステップでスマホを手放すによれば、確かに現実のものでした。

フェアフィールド大学の心理学教授のリンダ・ヘンケルは、写真を撮ることが経験や記憶にどんな影響を与えるか調べるため、美術館のガイドツアーで、写真を撮った場合と、写真を撮らなかった場合の記憶力の違いについて調査を行ないました。(p125)

調査の結果、なんと写真を撮った作品については、細部を覚えていないか、作品そのものをあまり覚えていないことさえあることがわかりました。マイケル・J・フォックスの直感通りです

この現象は、「写真撮影による記憶の損傷効果」と名づけられました。「カメラに仕事をアウトソースするため、複雑で感情のこもった情報処理がまったく行なわれない」ために、見てはいても、記憶が形成されないのだそうです。(p125)

かつて本の普及によって、物語の詳細を記憶する能力が衰えたように、写真の普及によって見た物の詳細を記憶する能力が損なわれていることがわかります。

興味深いことに、この「写真撮影による記憶の損傷効果」は、被写体をズームして撮ってもらったときには起こらなかったそうです。

それはつまり、問題は写真を撮る行為そのものではなく、今この瞬間の経験から切り離されてしまうことにある、ということを示しています。

マイケル・J・フォックスが述べていたように「カメラを持ち上げ、それを自分と被写体のあいだに構えることが…経験から切り離してしま」います。じっくり観察する代わりに、写真を撮るだけで終わり、になってしまいます。

これはデジタル時代のわたしたちにありがちな「あとで読む」と同じです。ちょっと記事を読んだだけで、ブックマークやクリップして、読むのを先送りしてしまい、結局読まないまま終わる現象です。

写真を撮るときも同様に、目を惹かれるものがあれば、じっくり観察することもなく撮影という形で「ブックマーク」しようとします。そして、いつでも見れるという安心感と引き換えに、じっくり観察するという体験を放棄してしまいます。

理由はどうあれ、「写真撮影による記憶の損傷効果」もまた、見たものを思い出せない、という点では、ADHDの症状とよく似ています。

この現象もやはり、テクノロジーに適応した脳の変化であるにもかかわらず、あやまって発達障害の症状と自覚されてしまっているケースがあるでしょう。

直線的ではない読み方

ADHDの人は見たものをよく覚えていないだけでなく、読み飛ばしが多いこともしばしばです。

この読み飛ばしという現象も、デジタル機器に適応した結果起こった、読書スタイルの変化かもしれません。

タフツ大学読書言語研究センター所長のメアリアン・ウルフによれば、デジタル機器に慣れた人と、それ以前の世代の人とでは、文書の読み方に大きな違いが見られました。

認知神経科学者の彼女は、マイクの事例やデジタル読書について分析しています。

「研究でわかってきたのは、インターネットやデジタル読書に費やす時間が長くなると、いろいろな点で読書に関わる脳回路に変化が起きるということです」(p74)

同じ内容を読んでいても、デジタル読書とアナログ読書とでは感じ方が異なっているというのは、かねてから様々な研究で言われていたことです。

たとえば、印刷された紙とデジタルディスプレイでは、情報が目に届く過程が異なっています。紙媒体の文書は光源からの光を反射したものですが、デジタルディスプレイで読む文書は光源からの光が透過したものです。

「紙媒体の方がディスプレーより理解できる」ことが脳科学実験で判明 - ITmedia eBook USER

ではKindleのような紙に近い電子ペーパーを使って読書すれば、アナログ読書と同じ体験ができるのか、というと、そう単純な話でもないようです。

ノルウェーのスタヴァンゲル大学のアンル・マンゲンの研究、50人の参加者にペーパーバックとKindleで同じ短編ミステリーを読んでもらった。

すると、物語に対する感情的な反応にはこれといったちがいはなかったものの、できごとの時系列については解答に大きな差がありました。

作品のなかの14のできごとを正しい順番に並べてもらうと、キンドル利用者の正答率がかなり低かったんです。(p74)

この研究では、Kindleとペーパーバックで同じミステリを読んだところ、Kindleの電子書籍で読んだ人たちは、「できごとの時系列」があいまいになっていた、とされています。

ペーパーバックの場合、手でページをめくる、という動作が場所や時系列の手続き記憶と結びついているのかもしれません。わたしたちは本を読むとき、どのくらい読み進めたかを目だけでなく、手を通しても判断しています。

それだけでなく、デジタル機器で日常的に読書する人たちは、目の使い方も変化しています。

インターネットが普及してから、読み方そのものが大きく変わったことがわかりました。かつて読むということは、ひとつの線に沿ってまっすぐに読む行為でした。

…ところがインターネットが広がると、ハイパーリンクや画面にスクロール、読みきれるはずのない膨大な情報を目の当たりにして、直線的ではない読み方をしないといけなくなりました。(p72-73)

従来のペーパーバックの書籍であれば、製本されたページに沿って、前から順に読んでいく体験が当たり前でした。小説にしても学術書にしても、順番に読み進めなければ、話の筋を追えなくなってしまいます。

フリオ・コルタサルの石蹴り遊びのような、本のあちこちを飛びながら読むことで異なった体験できるという斬新な本が登場したのは、本は前から順番に読む、という暗黙の了解があったからこそです。

しかし現代のデジタルデバイス上の読書では、石蹴り遊び式の読書こそがスタンダードで、前から順番に読むという体験は事実上存在しません。読者はハイパーリンクをたどって自由に読み進め、一人として同じ読書体験を持ちません。

脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線によれば、デジタル時代に適応した人たちの目の動きは、ペーパーバックで読書したいたころの目の動きとは異なっています。

人類は、ハンターが遠くから獲物の様子を窺う、採集者が小さな種子を拾うなど、さまざまな距離で対象を見られるよう進化してきた。

今日人々は、コンピューターやスマートフォンで文字を読んだり、急いで読んだり、すぐ目の前にあるものばかりを見ることに一日のほとんどの時間を費やすようになりつつある。

急いで本や新聞を読む人は、「一目」で何行もの文章をとらえるためにすべての語をはっきりと見ているわけではない。それを何千回と繰り返せば、このような目の使い方を脳に配線する結果になる。(p328)

デジタル時代の読書は、情報があふれすぎているがために、じっくり精読する暇はありません。ざっと全体を概観し、重要そうな場所を飛ばし飛ばし読むという形式を取ります。

そういうデジタル的な読み方に慣れてくると、本や新聞を読む時にも同じ目の使い方をするようになります。じっくり時間をかけて情報を吸収するのではなく、手っ取り早く必要そうなところだけ斜め読みする読み方です。

その結果、重要な情報の読み飛ばしや、当てずっぽうの理解につながるのは言うまでもありません。読んだつもりが、肝心なところを見落としていた、ということが多くなりがちです。

説明書や指示書の大事な情報を読み飛ばすことが頻繁にあれば、もしかして自分はADHDのせいでうっかりミスが多いのだろうか、と思い始める人も当然出てくるでしょう。

しかし本当にそうでしょうか。情報にあふれた時代に適応するために、子ども時代から身につけた読書スタイルのせいで見落としが多い、ということは考えられないでしょうか。

もしそうならそれは発達障害ではありません。大量の情報をさばくという意味では、決して悪くない読み方、目の使い方なのです。しかしその代償として、重要な情報まで読み飛ばしてしまう確率が高まっているだけなのです。

「すばらしい召使だが、主人になるには不十分」

こうして様々な研究や事例を調べてみると、冒頭に引用した退屈すれば脳はひらめく―7つのステップでスマホを手放すの言葉の意味がよくわかります。

シカゴ美術館付属美術大学の臨床部長として、学生の心のケアにあたるマイケル・ピートラスはADHD評価の専門家でもあり、テクノロジーが作業記憶(ワーキングメモリ)や情報処理の能力に影響を及ぼしているのはまちがいないと言います。

「テクノロジーとソーシャルメディアは、これらの能力に害を及ぼす恐れがある。その結果、ADHDによく似た状態になるか、もともと患っていた注意力の欠如が目立つようになるんです」(p64)

デジタル機器の利用が「ADHDによく似た状態」をもたらすのは、予測不能なタイミングで入ってくる通知に常に脳が注意力を配分しているため、また見たものを「あとで読む」処理にまわしたり、大量の情報をうまく受け流す読み方をしたりしているためでした。

どれも決して脳に障害が起こっているわけではなく、脳が破壊されたわけでもありません。デジタルテクノロジーの環境に適応しすぎた結果、日常生活において支障が生じているだけです。

症状だけ見れば、ADHDにそっくりかもしれませんが、決して先天的な発達障害ではありません。自分の生活を振り返って、原因をしっかり見極める必要があります。

集中するのに苦労している人は、根本的な原因を突きとめる必要があります。

原因が寝不足にあるのか、栄養不足なのか、テクノロジーの使いすぎなのか、精神的に不安があるのか、それとも本当にADHDなのか、それらによって治療方法がちがってくるからです (ADHDなら刺激薬が処方されます)。(p66)

もし環境要因が原因であれば、安易に薬物療法で解決しようとするよりもまず、普段の生活習慣を見直すべきでしょう。

テクノロジーに適応すること自体は悪くありません。しかしデジタルの世界に適応しすぎたあまり、現実の日常生活に対して不適応を起こしているとしたら、それは過剰適応です。

Googleやピクサーなどに時間管理術をレクチャーしているコンサルタント、グレッグ・マキューンはこう言ったそうです。

「テクノロジーはすばらしい召使だが、主人になるには不十分」(p231)

もしデジタルの世界に気を取られるあまり、現実世界で不注意が生じ、仕事や人間関係がおろそかになっているのだとしたら、それはテクノロジーに振り回されすぎていることを意味しています。

テクノロジーが「主人」になり、自分が「召使」のようになっているとしたら、薬で不注意を抑えたところで、生きづらさは変わりません。

問題は、主体性をもってテクノロジーを活用できていないことから生じているからです。

デジタルテクノロジー開発の最先端にいる人たちが、自分たちの子どもに、テクノロジーを使わせるよりも、まず自己コントロール能力を育ませようとしている、というエピソードには考えさせられます。

テクノロジー業界のリーダーたちが、わが子には自分がつくった機器やソフトウェアを使わせないという話を聞くと、複雑な気分になります。

『ニューヨーク・タイムズ』は2011年のある記事で、イーベイの最高技術責任者をはじめ、グーグルやヤフー、アップル、ヒューレットパッカードの経営幹部やエンジニアが、カリフォルニア州ロスアルトスにある、テクノロジーとは無縁のシュタイナー教育の学校に子どもたちを通わせていると伝えました。

シリコンバレーのこの学校では、木製のテーブル(おもちゃから家具まで自然の素材を使う方針)を囲んで料理や編み物などをさせ、7年生(日本の中学1年生)になるまではコンピューターに触れさせない方針です。(p201)

続く部分によると、あのスティーブ・ジョブズもまた、子どもたちにテクノロジーの利用を制限し、食卓でのデジタル機器の使用を禁じていたそうです。(p201-202)

こうしたテクノロジー開発者たちは、いずれも、テクノロジーは主人ではなく召使として用いた時にのみ役立つということをわきまえていました。それゆえ、子どもたちにまず自己コントロール能力を身に着けさせようとしています。

この記事で見てきたデジタル機器に適応しすぎたことによるADHD症状の大半は、主体性をもってデジタル機器に接することで改善することができます。

予測不能な通知に脳が身構えてしまうことによる注意力の占領や自己中断のパターンは、通知をオフにしたり、デジタル機器の電源を切る時間を設けることで防げます。

歩きスマホによる信号無視や、手元にスマホがあることによるコミュニケーション能力の低下は、歩いている時やだれかと会話するときには、スマホをしまっておくという当たり前のマナーを徹底することで回避できます。

「写真撮影による記憶の損傷効果」はマイケル・J・フォックスに倣って「今ここ」の体験に集中することで避けられます。

この本でも紹介されている、チャディー・メン・タンが考案した、有名なGoogleのマインドフルネスのプログラムを参考にして、「今ここ」に自分をつなぎとめる練習をするのもいいでしょう。(p238)

読書体験が変わってしまったがために読み飛ばしが多くなる現象は、意識的に深い読書をする時間をとることで改善できるでしょう。大量の情報をさばくデジタル時代の読み方と同時に、昔ながらの熟読もできるバイリンガルを目指すということです。

理想を言えば、これからの世代は、熟読と流し読みの両方の能力を身につけるべきでしょう。文章を理解するふたつの方法を脳が同時に習得するという意味で、ウルフが「バイリンガル脳」と呼ぶものです。

…ウルフは『プルーストとイカ』にこう書いています。「したがって、いつでもワンクリックで得られる豊富な情報をうまく利用するには、しっかりと舵取りをして情報を解釈できるように、実行機能、体系化、批判的視点、自己監視の技能を駆使することが求められる」(p76)

ここでもやはりポイントは「しっかりと舵取り」をする能力、つまり、テクノロジーの召使となって振り回されるのではなく、自分が主人となってテクノロジーをコントロールし、デジタル世界に適応した脳と、日常世界に最適化された脳とを使い分けられるようになる能力です。

自己コントロール能力を育むことがADHD症状に効果があることは、近年の多くの研究によって裏づけられています。

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「親友でも恋人でもない、ただの道具に戻った」

この記事で考えたことを、もっとシンプルに言うとしたら、テクノロジーに気を取られるあまり、注意力散漫になっている人は、デジタル機器を「恋人」にしているようなものだ、ということです。

今回紹介した退屈すれば脳はひらめく―7つのステップでスマホを手放すの著者マヌーシュ・ゾモロディの「退屈すれば脳はひらめく」プロジェクトに参加し、デジタル機器との付き合い方を見直した参加者の一人は、次のような感想を送ってきたといいます。

シカゴのゾーイは、「スマホの存在感は薄れ、まえほど大切じゃなくなった。親友でも恋人でもない、ただの道具に戻った」と言っています。(p250)

昔から恋は盲目と言われますが、誰でも恋にのぼせると不注意になります。恋人のことしか見ておらず、それ以外のことは考えられないからです。テクノロジーに適応しすぎた人が不注意になるのもそれと似たようなものです。

今やデジタルテクノロジーの存在感は日ごとに大きくなり、インターネット上には魅力的なコンテンツが満ちあふれているので、いつの間にか現実の家族よりも、目の前の仕事よりも、日常の寝食よりも、デジタル世界の出来事が気になってしょうがなくなってしまうことはありえます。

なにせ、この本にこんなことが書かれているくらいです。

たとえば、ユーザーエクスペリエンス〔電子機器を使用したことで起こる反応(使用感、満足度など)〕の専門家で、現在グーグルでデザイン戦略を担っているゴールデン・クリシュナは、こんな皮肉を言っています。

顧客を「ユーザー」と呼ぶのはドラッグの売人くらい―それとテクノロジーの関係者、と。(p58)

デジタルテクノロジーの技術者たちは、ビックデータの傾向を分析し、より魅力的なコンテンツを作り出す専門家なので、まるで恋をするかのようにやみつきにならせる方法をよく知っています。ユーザーが恋に落ちるのは開発者の狙い通りです。

でも、どんなに楽しくても、どんなに魅力的でも、デジタルの世界は現実世界の代わりにはなりません。デジタル世界という「恋人」に熱を上げるあまり、現実世界の大事な人や仕事への注意がおろそかになったら取り返しがつきません。

シェリー・タークルは研究を進めるなかで、ある悪気のない父親のエピソードに出会いました。

その父親は娘とのきずなを深めたくて、学校の遠足に参加したそうです。ところがバスに乗るところから始まって、遠足のあいだじゅう写真を撮り、それをフェイスブックにアップし、みんなするように「いいね!」の数を確認していました―もう一時間以上も口をきいてないよ、と娘から言われるまで。(p120)

幸い、デジタル機器が原因で起こっている不注意やうっかりミスといったADHD症状は、デジタル機器との付き合い方を見直すことで十分に改善できます。

「退屈すれば脳はひらめく」プロジェクトの参加者たちが身をもって実感したように。

ディーンエージャーは授業をよく理解できるようになり、作家は原稿を書き上げ、会社員はストレスに強くなり、起業家は自分自身やビジネス上の難しい問題についてじっくり考える時間がとれるようになりました。

ブルックリン在住のカーターは「まるで長かった頭の冬眠から覚めたようだ」と言ったけど、これは多くの参加者の声でもある。

そして参加者たちは、スマホとの関係を見直しました。(p250)

恋が脳機能障害でないように、デジタル機器が「恋人」になることに起こる不注意も障害ではありません。生活を見直せば恋は冷めます。そうすれば不注意も収まります。

もし、デジタルデバイスが「恋人」のようになっていて、不注意やうっかりミスのようなADHD症状のために生活に支障をきたしている人がいたら、ぜひ一度この退屈すれば脳はひらめく―7つのステップでスマホを手放すを読んでみてください。

もしかすると、長いこと紙の本など読んでいないかもしれません。でも、この本はそんな人でも読みやすいように配慮された、親しみやすい書き方の本です。

「退屈すれば脳はひらめく」プロジェクトで用いられた7つのステップをはじめとする具体的なアドバイスや取り組み事例がたくさん載せられているので、きっとモチベーションが高まるはずです。

わたしはこの本を読んでみて、SNSに向けていた注意力のリソースを再配分し、もっと創造的な活動に充てたいと思うようになりました。

もちろん、必ずしもSNSをやめる必要はありませんし、スマホを手放す必要もありません。どんな付き合い方を選ぶかは一人ひとり異なります。

自分でデジタル機器との付き合い方を選ぶということ、自分なりの付き合い方を見つけるということこそが、主体性をもってテクノロジーと付き合う、ということだからです。

デジタル機器という「恋人」に気を取られすぎていた注意力を引き戻すことができれば、そのときこそ、現実の家族に、恋人に、友だちに、仕事に、趣味に、十分に注意を傾けて、存分に創造性を発揮できるようになるでしょう。

▼時間の余裕を持つ大切さ
この記事ではテーマからそれるので扱いませんでしたが、この本では、デジタルデバイスに時間を取られすぎて、休息のための時間が減り、創造性が低下することも指摘されていました。

スケジュールを詰め込みすぎるせいで、注意力や集中力が低下し、ADHDのような症状が引き起こされることについては、行動経済学の観点からも研究されています。

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