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化学物質から子どもを守る「知っていますか? シックスクール」の3つのポイント

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シックスクールを発症したという女子高生は、学校での生活をひと通り話してくれた後、感情の高ぶりを抑えきれないようにして

「学校ではどうして毒だとわかるもの(ワックス)を、生徒に素手で塗らせるのですか」と訴えたのです。

私はその勢いにおされて、こう答えました。

「私がこの現実を変えるから」 (p3)

どもの化学物質過敏症(CS)シックスクールは、とても深刻な問題です。しかし、多くの人にとっては、たとえニュースなどで存在は知っていても、遠い世界のできごとにすぎません。

しばしば子どもの不登校にもつながるシックスクール症候群とは何でしょうか。なぜ子どものほうが大人より危険なのでしょうか。発症した子どもとその家族は、どのように対応できますか。

冒頭の会話の責任を果たすために書かれたという、先月発刊された書籍知っていますか? シックスクール: 化学物質の不安のない学校をつくる (健康双書)を紹介したいと思います。

▼Amazonでの取り扱いについて

書籍販売の大手Amazonでこの書籍が取り扱われていないと誤解されている方がいましたが、上記リンクから商品ページにいけます。なぜか商品名から「知っていますか」が抜けて登録されているだけです。

これはどんな本?

知っていますか? シックスクール: 化学物質の不安のない学校をつくる (健康双書)の著者、近藤博一さんは、群馬県の学校事務職員です。かつては化学物質過敏症のことは何も知らず、危険性を気にかけずワックスや油性マジックを使っていた学校関係者のひとりでした。 (p200)

ところが、ワックスを塗った“きれいな体育館”に入れなくなった子どもや、除草剤をまいた“きれいな校庭”に立っていられなくなった保護者がいることを知り、シックスクール問題に関心を持ったそうです。 (p2)

ご自身も、軽度ながら化学物質に反応していることに気づき、「スクールエコロジー研究会」の代表として群馬県教育委員会とも連携し、シックスクール問題について理解を広める活動を行なうようになりました。 (p40)

わたしがこの本について知ったのは、化学物質過敏症のお子さんと一緒にシックスクール問題と闘っておられるランナーけいさんのブログで紹介されていたからです。

まだしっかり全体を読んだわけではないのですが、新刊ということで概ねの印象を記事にしておこうと考えました。有意義な本について教えてくださったことに感謝いたします。

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子どものシックスクール・化学物質過敏症の3つの特徴

シックスクールと化学物質過敏症は、それぞれ少し意味合いが異なります。

シックスクール:学校で発症し、原因を特定するのが容易で、しばしば集団発症する
化学物質過敏症:原因がわかりにくく、場所にかかわらず微量でも反応する。

しかしこの本ではどちらもシックスクールとして捉え、学校での対策を考えていると書かれています。どちらの子どもも、化学物質によって学習が妨げられており、理解ある環境を必要とする点は同じだからです。(p15)

この本の第一章では、シックスクール・化学物質過敏症について、子どもならではの特徴が説明されています。わたしも知らないことが多いため、参考になりました。3つの点を考えてみましょう。

1.症状がわかりにくいことがある

シックスクールとマスコミでいわれるのは、急性中毒による症状であり、少量でもくりかえし暴露すると、症状として自覚できない慢性の中毒症状があらわれていることがあります。(たんにつかれと思っていることもあるかも) (p16)

これは養護教諭としてシックスクールに取り組んでこられた佐藤孝代さんの資料からの引用とされています。本人にとっては慢性的でつらい症状なのに、蕁麻疹やアナフィラキシーショックのような急性のアレルギー症状ではないため、見過ごされている場合があることが分かります。

慢性的な症状は、めまいや疲労、頭痛、イライラや不安、思考力の低下、吐き気、咳、湿疹、自律神経失調症のような形で表れるかもしれません。

この本のp20-21、23には、子どもたち自身の言葉で症状が表現されていますが、子どもは語彙が乏しいので、大人が的確に判断することが求められます。化学物質が脳に影響し、感情コントロールができない手のかかる問題児のようにみえることもあるといいます。 (p25)

▼慢性疲労症候群(CFS)との関係

化学物質過敏症(CS)は慢性疲労症候群(CFS)と間違われることがあり、とても似た症状だと言われています。小児慢性疲労症候群国際診断基準には免疫症状として「食べ物・化学物質への過敏性」が含まれています。

子どもの場合、慢性疲労症候群のため、抵抗力が低下して、化学物質に過敏になることもあれば、化学物質過敏症のため、慢性疲労症候群のような疲れやすさが出ることもあるといえます。わたしにとっても化学物質への過敏性は人事ではありません。

2.みんなが発症するとは限らない

複数人の生徒が発症すれば、メディアに取り上げられやすいので、シックスクールは集団発症するはずだ、という先入観があるかもしれません。

学校でたった一人、体調が悪くなっただけの場合は、理解が得られず、“こころの問題”、“不登校”として片付けられてしまうこともあるでしょう。

しかし、子ども一人ひとりの状況は異なるので、シックスクールは必ず集団発生するとは限りません。「いつ、誰が落とし穴に落ちるかわからない」のです。(p22)

その理由としてこの本では、アルコールと同様、「化学物質を分解(解毒)してくれる酵素の量が多い人と少ない人がいる」と書かれています。ほかにもさまざまな要素が関係しているでしょうから、他の子は発症していないのに君だけ発症するのはおかしい、と言うことはできません。 (p32)

むしろ労働災害における「ハインリッヒの法則」を当てはめると、ひとりの生徒が発症したなら、その背後には29人の発症寸前の生徒がおり、さらに300人の発症予備軍がいると考えるべきだと書かれています。 (p18)

3.子どもは大人より化学物質に敏感

子どもは大人より化学物質に敏感です。その理由はいくつかあります。

1.子どもは身長が低い:化学物質の多くは空気より重いので、床にたまります。身長が低い子どもは大人より濃度の濃い化学物質にさらされやすいといえます。 (p27)

2.子どもは体温が高い:体温と気温の差が高いと上昇気流が生じ、床付近から舞い上がった濃い化学物質を吸い込みやすくなります。 (p28)

3:子どもは大人より空気を吸う:体重比率で考えると、子どもは大人の二倍の空気を吸っているため、吸い込む化学物質の影響を受けやすくなります。(p30)

4.成長段階にある:子どもの体の機能や脳の神経回路は成長段階にあるため、大人より強い影響を受けます。(p25,30)

5.大人より閾値が低い:化学物質に耐えられる体の負荷(トータル・ボディ・ロード)の限界ライン(閾値)が大人より低いため、より少ない化学物質で発症しやすくなります。

もっと理解を深めるために

以上にまとめた第一章は、たった30ページほどで、この本の導入部分にすぎません。

続く第二章では、学校関係者にシックスクールを理解してもらい、協力し、協働するためのアドバイスが詳しく書かれています。

近藤さんは、学校側の立場をよくっておられるので、学校という組織の上下関係や役割分担を考えた上で冷静に相談するためのヒントが散りばめられています。たとえばp52-53には思考を整理して伝えるのに役立つチェックシートもあります。

近藤さんはこう書いています。

わが子のことを思い、切羽つまった気持ちになることはよくわかります。

しかし相手が理解できていないうちに、「理解した上で」の対応を要求しても、学校側は無理難題を押し付けられたとしか感じられないでしょう

…規定の教育課程を実施しなければならない学校側の立場も考え、一方的に責めるのではなく、その言い分にも耳を傾けてほしいのです。

その上で、化学物質の本当の怖さを徐々に伝えていってほしいと思います。 (p44-45)

また、この本の残り全体を占める第三章「シックスクール対策百科」と名づけられています。

まず始めたい3つの対策「床のワックスをやめる」「学校敷地内で農薬は使わない」「農薬を浴びない通学路にする」を皮切りに、実践的なシックスクール対策が詳説されています。

学校生活で直面しそうなあらゆることについて、教室や理科室といった場所別、教科書や文具といった物品別、あるいは運動会、水泳大会といった行事別に、「発症の原因」と「対策」がまとめられていて、実に100ページ以上もの情報量です。

各所に挿入されている真貝有里さんのイラストや、黒田いずまさんのマンガも理解の助けとして役立ちます。

近藤さんはこの本の終わりに、「それでも、本書がシックスクールの全てを網羅しているわけではないことは、本書を手にした方、特に発症された方ならば、感じることでしょう」と書いています。

確かに、ランナーけいさんのブログを拝見していると、この問題が一筋縄ではいかないことが痛いほどよく分かります。当事者とその家族が毎日対処しなければならない物事は熾烈を極めます。この本の内容を読めば、ただちに問題解決できるほど現実は易しくありません。

それでも、まずはシックスクールについて知識を得ることが不可欠です。化学物質過敏症研究の第一人者である、そよ風クリニックの宮田幹夫先生は、「この本を読んで、子どもたちの実情を理解してほしい」というメッセージを寄せています。

知っていますか? シックスクール: 化学物質の不安のない学校をつくる (健康双書)が、シックスクールの子どもたちの実情を知るにあたって、十分に役立つ一冊であることは間違いありません。

▼シックスクールの子どものための病院

この本には近藤さんが知るシックスクール問題に関わった医師がいる病院として以下の9つが挙げられています。ただし、現在どのように対応しているかは、事前に確認・相談してほしいとのことです。受診前のチェック項目も書かれています。(p61)

青山内科小児科(群馬県前橋市)
かくたこども&アレルギークリニック(宮城県多賀城市) 
   (ドクターズガイドの角田和彦先生のページ)
横浜市立みなと赤十字病院(神奈川県横浜市)
神奈川歯科大学付属横浜クリニック・眼科(神奈川県横浜市)
宮城厚生協会坂総合病院・小児科(宮城県塩釜市)
東北大学病院(宮城県仙台市)
東海大学医学部付属病院(神奈川県伊勢原市)
そよ風クリニック(東京都杉並区)


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