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病気の子どもが幸せになるために親ができる3つのこと

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■元気に学校に行っているはずの年齢にベッドで寝たきり
■友だちは外で遊びまわっているのに、輪に入れない
■人生で一番幸せな時期を、死んだほうがましだと思いながら過ごしている
■将来の希望にわくわくするどころか、もう人生は終わったかのように感じている

気の子どもを持つ親は、このような状態にある我が子を見て、とても悲しく思います。子どもには幸せであってほしいと願うのが親の常ですが、それとはまったく正反対の、どうしようもない破綻した状態にいて、そこから抜け出す方法はどこにもないのです。

何より、子どもにとって、若いかけがえのない時期は一度きりです。その大切な期間が、刻一刻とベッドの上で失われていくのは、見るに耐えないことといえるでしょう。

この記事は、そんな辛い逆境の中で、子どもが幸せを少しでも感じられるために、親ができる3つのことについて、「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室を参考に取り上げます。

わたしは親の立場ではありませんが、これから書くのは、子どものころに慢性疲労症候群になったわたしに対して、親がしてくれたことでもあります。

もちろん、自分が病気だという人や、病気とは関係のない健康な人にとっても役立つ話です。

これはどんな本?

この本は、「幸福」についての科学的な研究を読みやすく紹介したものです。幸福学の専門家のエリザベス・ダン博士ロバート・ビスワス=ディーナー博士による、NHK白熱教室の全五回の講義をまとめてあります。

幸福学には、社会福祉の観点から、満ち足りた生活について研究する「ウェル・ビーイング」や、従来研究されてきた病的な心理状態ではなく、楽観主義など積極的な心の働きを調べようとする「ポジティブ心理学」などが含まれます。

専門書ではないので、各研究についての説明は浅いですが、その分多くの点が取り上げられていて、幸せを感じられる生活を手にするヒントが数多く得られます。

病気の子どものために親ができる3つのこと

この本は病気の子どもを対象にして書かれたわけではありません。しかし次の2つのことが保証されています。

■ブリックマン博士は、不慮の事故で身体不自由になった人について研究したが、その人たちは「不幸」ではなかった。(p28)
■2013年の国連の調査では、パナマ(発展途上国)の幸福度は、日本(経済先進国)の幸福度よりずっと高かった。(p107)

つまり、不運なできごとや低い経済状態があっても、幸福は感じられるということです。病気の子どもでも、幸せを感じることは可能です。それを助ける3つの点を取り上げましょう。

1.孤立させない

エド・ディーナー博士とマーティン・セリグマン博士という、ポジティブ心理学の先駆者たちは、幸福度の高い人たちを集めて研究し、彼らを幸せにしているものは何かを突き止めようとしました。最初はたくさんのサンプルを取り、それから上位10%の人に絞ったのです。

…それぞれのタイプは違いますが、上位10%の人たちに共通していたのはたった1つ、社会との結びつきが強いことでした。幸せな人たちはみな、友人や家族と良好な関係を築いています。

…上位10%でなくても、他者や社会との結びつきが強い人はたくさんいました。「人との交わり」は、決して魔法の切符ではありません。でも他者と良好な関係を築くことは、確実に「幸せになるための必須条件」なのです。(p40)

第一に親ができることは、子どもを孤立させないことです。

子どもが病気になってまず失うのは、学校で得ていた人間関係です。ベッドで寝たきりになり、家に閉じこもるようになると、しだいに友だちから忘れ去られ、だれも気にかけてくれないようになります。すると人間関係がなくなり、閉じこもりやすくなります。

これが最も大きな不幸の原因です。親密な人間関係は「幸せになるための必須条件」なので、これがおろそかになると、ほかにどのような努力をしても、子どもの幸せを取り戻すことはできなくなるでしょう。

具体的に、どのようにして子どもを孤立させないでいられるでしょうか。

一番効果的なのは、家に友だちを招待することです。病気の子どもはほとんど家から出られません。自分からだれかに会いに行くことはできません。そのような場合、仲の良い友だちとその家族を夕飯やお茶会に招待してもてなし、その機会に子どもも少しの時間交流することができます。

実際に家に呼ぶことで、子どもの現状を理解してもらいやすいですし、子どももリラックスして会話できます。家族ぐるみで付き合っていると、絆も強くなりやすいでしょう。

このとき、どのような人と交流すればいいのでしょうか。あくまで同年代の人とは限りません。幸福に寄与するのは「人間関係の多様性」だといいます。(p194)

学校の人間関係に縛られる必要はありません。子どもに関心を示してくれる友人であれば、だれであっても、年齢や性別がさまざまに異なっているとしても、良い交流のきっかけになることがあります。地域の仲間や同じコミュニティの人、親の親友…いろいろいると思います。

わたしの場合、病気になってしばらく、人間関係がなくなり孤立していたころ、慢性疲労症候群の親を持っている10歳年上の男性が、よく顔を見に来てくれるようになりました。わたしは心を閉ざしていたので、少し挨拶するだけで部屋に引きこもっていたのですが、親はいつもその人を温かくもてなしました。そのうち、わたしも打ち解けてきて、仲良くなりました。

また、わたしが病気について話したことをきっかけに知り合った、親と同年代の女性がいました。親が家に呼んだので、ときどき来てくれるようになりましたが、わたしはちょっとしか身を起こしていられないので、会話できる時間はほんの少しでした。しかし付き合いが定期的になると、一見、特に共通点がないように見えても、いろいろと楽しい会話ができることがわかってきました。

では、交流する相手はだれでもいいのでしょうか。そうではありません。必ず、すでに幸せを感じている人を選ぶべきです。興味深いことに、人間関係とは「感情で分類されたネットワーク」であることがわかっています。それによると、幸福な人は幸福な人と付き合い、不幸な人は不幸な人と付き合っていました。幸福度は伝染するのです。(p188)

さらに、もしできるなら、そうした交流は、病気の子どもが「与える喜び」を味わえるものであれば、なおのことすばらしくなります。病気の子どもでも、ちょっとしたデザートを作ったり、きれいな写真を撮って印刷したり、絵を描いたりはできるかもしれません。そうしたものを喜んでくれる友人であれば、子どもは生きがいを感じることができます。(p89)

SNSでの人間関係はどうか
今の時代、孤独感を少なくするのに、SNSが役立つのは事実です。しかしそれは現実の人間関係に代わるものではありません。極端な例ですが、SNSで1000人友だちを持つ人が自殺したとき、心配する人はいなかったというニュースもありました。

調査によると、幸福度を感じられる人間関係とは、自分の弱みを見せたり、困った時に頼ったりできる少数の人だそうです。基本的にそうした人間関係はSNSでは築きにくいかもしれません。

またSNSで友だちが増えると、そこでの人間関係を維持するために多くのエネルギーを使い、現実の人間関係がおろそかになるという懸念も書かれています。友だちは多ければいいわけではなく、あくまで深い交流が大切なのです。(p194)

2.経験という思い出

もし狭い地下の部屋で数人と暮らしていた人に、25万ドルの宝くじが当たったとしたら、家を購入する頭金にするかも知れません。

でも今なら、同じ金額で宇宙旅行のチケットが買えるのです。最近、初の民間宇宙旅行チケットがおよそ25万ドルで発売されました。

まともなフィナンシャル・プランナーなら、宇宙旅行よりも大きな家の購入を勧めるでしょう。しかし、考福学の研究者たちは、正反対の考えを持っています。

さまざまな研究が、「経験」にお金を使うほうが幸福度は高くなると示しており、旅行やごちそうのほうが、モノを買うよりも幸せを感じさせるというのです。(p66)

わたしはこの話を読んだとき意外に思いました。一過性の経験を買うより、生活が快適になるモノを買ったほうがいいと常々思っていたからです。しかし調査によると、新しい家を買ったとき、家に対する満足度は上がりますが、幸福度は変わらないそうです。幸福を感じさせてくれるのはモノではなく、内面の豊かさであり、楽しい思い出なのです。

この点で、慢性疲労症候群の情報サイトCo-Cure-Japanで読んだ、慢性疲労症候群の子どもを持つ親の話を思い出しました。(現在は公開されていないようです)

ある親は、子どもがたとえ後で体調が悪くなるとしても、経験する価値があると思える活動には参加できるようにしてあげていました。たとえば友だちが遊びに誘いにきたとき、「遊んだ後で体調が悪くなるのと、遊ばないで一晩中いらいらしているのとどっちがいいか、自分で考えるのよ」と言って、子どもが判断できるようにしました。

その結果、遊びに行って体調があとで悪くなったとしても、その経験はとても大事だとされていました。ほんの数時間でも、健康な子どもと同じように遊んだという思い出は、闘病生活に少しの幸せを与えてくれるのです。あとで思い返したとき、子どものころずっとしんどくて寝ていたと感じるのではなく、楽しく遊んだという思い出が残ることになります。

別の親も、演劇好きの子どもが、慢性疲労症候群になってすべての夢を失ってしまったとき、体調が悪くても、演劇を見に行ける機会を作ってあげるようにしました。

3時間座っているためには、何日も前からしっかり休息を取っていなければならず、終わった後には、何日も体調が悪くなってしまいます。それでも、そのほんの少しの楽しい時間は、病気を耐え忍ぶためにも、大人になったときに過去を懐かしむためにも必要なのです。

もちろん、生活が快適になるための投資は必要です。わたしはリクライニングできる座椅子を使っていますが、このアイテムにどれだけ助けられたかわかりません。

しかし、それでもやはり、快適さには際限がないものです。引きこもりの生活の快適さだけを追求してお金を使っても、研究結果からすると、幸福度は上がらないのでしょう。快適さには、すぐに慣れてしまうからです。(p142)

それよりも、多少、いえ、かなりの犠牲を払うとしても、好きなミュージシャンのコンサートに出かけたり、ちょっとした旅行を楽しんだり、水族館でゆっくり過ごしたり、気になっていた高級レストランで食事をしたりして、レクリエーションを楽しむほうが、良い思い出が残り、闘病する勇気を得ることができるのです。

病気の子どもをどこかに連れて行ったり、その結果子どもが寝込んでしまったりすると、必ずといっていいほど、「言わんこっちゃない」「無理させるからいけないんだ」「遊びに行けるなんてもう元気なんじゃない?」などと言う人が出てくるものです。

しかしたとえそうした非難を受けるとしても、「自分の子ども時代は辛い病気との闘いだったけれど、楽しい思い出がいくつもある」、そう思えることこそ病気の子どもにとって必要なものではないでしょうか。

3.感謝日記

あるグループには、週に1日、10週間、ごく普通に日記を書いてもらいました。また別のグループには、どんな小さなことでもいいので感謝の気持ちをつづる「感謝日記」をお願いしました。10週間後、両者を比較してみました。

「感謝日記」には、素晴らしい両親のことや、今日も朝を迎えられたこと、好きなロックバンドについてなど、いろんな感謝が書かれていました。

しかし重要なのは内容ではありません。感謝を表現した人たちはみな、ただ日記をつけていたグループよりも、驚くほど幸福感が増していたのです。(p46)

感謝の日記をつけることは、このブログで、何度も取り上げてきたことです。今さら言うほどのことではないかもしれません。しかしこの重要な習慣は、何度も繰り返し強調されるにもかかわらず、実践している人は驚くほど少ないのです。

この習慣がどれほど重要かについて再度説明しましょう。

この方法は、すでに名前を出した、ポジティブ心理学の提唱者マーティン・セリグマン博士によるものです。うつ病の人も、統合失調症も、誰もが幸せな気分になれる脳トレ「3つの祝福」 : カラパイア はてなブックマーク - うつ病の人も、統合失調症も、誰もが幸せな気分になれる脳トレ「3つの祝福」 : カラパイアによると、「重度うつ患者94パーセントのうつが緩和され、92パーセントが以前より幸せを感じると答え、50パーセントが一般的な症状の完治に成功している」そうです。

その日の「祝福」を3つ思い出し、ノートに書き留め、なぜそれが起きたのか考えてみる、というものです。この方法にはいくつか変形があって、「感謝」できることを5つ、ノートに書かずに口頭で感謝するという人もいます。3 Good Thingsとして「良かったこと」を探す人もいます。その日にあった良いことを数え、その数の分の100円玉を貯金箱に入れ、だれかにプレゼントするために使う人もいます。

共通しているのは、「良かったこと」であれ「祝福」であれ、「感謝」であれ、どんな小さなことでも見逃さずに確認するということです。

「今ある幸せを改めて確認すること」。ネガティブな気持ちになると、不幸なできごとしか見えなくなります。しかし、悪いことだけが起きているわけではありません。いいことも起きているはずです。いいことを感じて感謝すれば、気持ちの上でのバランスが取れます。まず今、手元にある幸せに感謝しましょう。(p145)

この習慣を病気の子どもと一緒にやってみることは大切です。といっても、子どもははじめやりたがらないかもしれませんし、続かないかもしれません。いいことなんて何もなかった、と言うかもしれません。

そうした場合は、まず親が手本を示す必要があります。良かったことを3つ記録し、夜寝る前に子どもに話す習慣を持ちます。そのとき、どんなささいなことでも感謝します。そして子どもにも何かなかったか聞いてみます。

こうしたことを続けていれば、親がまず幸せを感じられるようになります。すると前述したように幸福は伝染します。直接親しい人が幸福だった場合、自分の幸福度は16%上がるというデータがあるそうです。親が幸せなら、子どもはさらに16%幸せになるのです。やがては子どもも、3つの良いことを話してくれるようになるでしょう。(p188)

ちなみにわたしの家でも、家族ぐるみでやっています。

“虹を見る目”を養う3つの方法―苦しい日々を乗り越えるために| いつも空が見えるから“虹を見る目”を養う3つの方法―苦しい日々を乗り越えるために| いつも空が見えるから はてなブックマーク - “虹を見る目”を養う3つの方法―苦しい日々を乗り越えるために| いつも空が見えるから

 

病気の子どもが幸せを感じるとき

ここまで考えたことをまとめましょう。

病気の子どもが幸せを感じるために親ができることは…

(1)孤立させない
…友だちを家に招待するなどして、多様な人間関係を作ってあげる

(2)経験という思い出
…多少犠牲を払うとしても、レクリエーションを楽しみ、良い思い出を残してあげる

(3)感謝日記
…一日のよかった3つのことを話し合う習慣を作る

わたしの場合は、親がこうした点に注意を払ってくれたので、それなりに幸せを感じることができました。(1)と(2)は親が積極的にやってくれ、(3)は自分で取り入れました。

もちろん、幸せを感じる方法はこれだけではありません。

「幸せ」について知っておきたい5つのこと NHK「幸福学」白熱教室には、文中でも少し触れた「与える喜び」「目の前のことに集中すること」「ご褒美化」「ジョブ・クラフティング」「受け入れること」などいろいろな話が書かれています。興味のある人はぜひ読んでみてください。

こうした点に留意し、幸福を感じられる生活を組み立てるなら、たとえ病気という重い背景があるとしても、家族として幸せを見つけながら生活することができるでしょう。


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