金沢大学の三枝 理博准教授らの研究グループが、バソプレシン産生ニューロンが、体内時計のペースメーカー細胞の一部を担っているという研究報告を先日出していました。
このニュースについては、柳沢正史教授が体内時計のペースメーカー細胞を発見 の記事で、関連ニュースとして取り上げたのですが、論文の抄訳を見つけたので、再度扱います。
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▼関連ニュース
金沢大、体内時計の安定に関わる神経細胞を発見 | マイナビニュース
バソプレシンは体内時計ペースメーカーの一部
体内時計のペースメーカー細胞については、同時期に、似たような研究報告が柳沢正史教授の研究グループから報告されていました。
そちらでは、視交叉上核のニューロメディンS産生ニューロンが概日リズムのペースメーカーの実体であり,このニューロンの細胞時計を破壊すると、概日リズムがなくなるとされています。
それに対し、金沢大学の研究グループは、ニューロメディンS産生ニューロンの一部である、バソプレシン産生ニューロンに注目しました。
マウスの実験でバソプレシン産生ニューロンだけを破壊すると、概日リズムはなくなりませんでしたが、周期が約1時間長くなったり、時差に早く適応したりと、体内時計の機能が弱まりました。
つまり、ニューロメディンS産生ニューロン全体を破壊すると体内時計が機能しなくなりますが、ニューロメディンS産生ニューロンの一部であるバソプレシン産生ニューロンだけを破壊すると、体内時計の機能が一部低下するようです。
バソプレシン産生ニューロンは体内時計の機能の一部を担っているようですが、そのほかのニューロンとも協力して体内時計を作り上げているといえます。
バソプレシンは発達障害とも関係?
以前このブログで取り上げた愛着障害に関する本によると、バソプレシンは、オキシトシンと共に、発達障害に関係しているかもしれないと説明されていました。
オキシトシンは、母親らしさを作り出すホルモンですが、バソプレシンは父親らしさを作り出すホルモンです。
オキシトシン・バソプレシンシステムの異常によって、発達障害や愛着障害の、コミュニケーション障害や心の理論の未発達が生じるのではないかと分析されています。
同時に、発達障害では、睡眠リズムが不規則になることも知られていますが、体内時計が消失するわけではありません。その原因は、もしかすると、体内時計のペースメーカーの一部であるバソプレシンに異常があるからなのかもしれません。
その点に関する推測は、こちらの記事に書いてみました。
実際のところは、もっと複雑なメカニズムが関係しているでしょうから、はっきりしたことは言えませんが、発達障害と睡眠障害をつなぐ、ひとつの要素なのではないかと思っています。
発達障害と睡眠障害の深いつながりについては、こちらの記事もご覧ください。