統合失調症の脳の活動を、「ネットワーク理論」に基づく方法で解析することで、健常者との違いが判明し、両者を画像解析で区別できるようになったそうです。
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プレスリリース | ネットワーク理論に基づいた新しい統合失調症の解析手法を開発 | NICT-情報通信研究機構
ネットワーク理論とモジュール解析
NICT脳情報通信融合研究センター(CiNet)の下川哲也主任研究員、大阪大学大学院連合小児発達学研究科の橋本亮太准教授らは、機能的磁気共鳴画像化装置(fMRI)を使って、統合失調症の人の、安静時の脳活動の脳画像データを作成し、それに対して、脳内を活動の類似性で色分け(モジュール化)を試みました。
これまでの脳画像解析は、脳の特定の部位の異常を見つけようとしていましたが、研究グループは、複数の脳部位の相互作用に注目しました。
脳全体の相互作用を表現する学問は、「ネットワーク理論」と呼ばれます。それに基づき、脳内を活動の類似性で色分けすることは「モジュール解析」と呼ばれるそうです。
「モジュール解析」は、個人個人のモジュールの違いが大きいため、診断には役に立たないと思われていましたが、研究グループは、個々人の患者ではなく、集団に対してモジュール化を試みました。
具体的には、脳全体を約90カ所の領域に分けて、活動状況の波形を5分間計測し、各領域の波形を5種類に分類し、似ている波形の領域同士を同じ色にして画像化したそうです。
すると、統合失調症と健常者とでは、それぞれに特徴的な脳部位モジュールがあることがわかりました。
■統合失調症でない人では脳の後頭葉と頭頂葉の結び付きが強く、それらの部位は同じ色になったが、統合失調症の患者では結び付きが弱く、別の色になった。
■健康な人の脳では広い領域で同じ活動をするが、患者の脳では異なった活動をする部分に細かく分かれることがわかった。
こうした「モジュール解析」は、これまで脳画像でも区別できず、客観的な診断方法がない病気に応用できると考えられています。
橋本準教授は、以前にも、目の動きで統合失調症を判別する技術を発表しておられました。