自閉スペクトラム症(ASD)に関する研究で、表情模倣が乏しい、方言を話さないなどの、社会性に関わる特徴の傾向が見られることがニュースになっていました。
表情模倣が乏しい
京都大学の研究グループは、2015年4月に、「自閉症スペクトラム障害で目に見える表情模倣の障害」があるという研究成果を発表していました
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表情模倣とは、会話などのコミュニケーションをしているときに、自然に相手の顔の表情をまねることです。
定型発達者の表情模倣には、相手の印象がよくなったり、自分が相手を理解しやすくなったり、といった働きがあるそうです。
研究では、ASD15人、定型発達15人を比較したところ、ASDでは怒り表情、幸福表情ともに、目に見えるレベルで表情模倣の回数が低下していました。
また、表情模倣の頻度が低下するほど社会性の障害が強いこともわかったそうです。
この表情模倣の頻度が少ないことが、自閉スペクトラム症の人が定型発達の人とコミュニケーションしづらい社会性の問題の原因のひとつになっているのではと推察されています。
方言を話さない
弘前大教育学部の松本敏治教授は、社会性の障害について別の観点から調査し、自閉スペクトラム症の人は方言ではなく共通語を使う、との調査結果を発表しました。
教授は「自閉症の人は津軽弁でなく、共通語を使う」と聞き、青森、秋田、さらに京都、高知、鹿児島など全国6地域にアンケートを実施したところ、やはりASDでは、定型発達・知的障害より「方言使用が少ない」との回答が多く寄せられたそうです。
この理由について、松本教授は、ASDの子は、テレビなどで繰り返される印象的なフレーズを背景抜きに丸ごと覚えて使っていると推測しています。
東北文化学園大の藤原加奈江教授は、別の意見を持っていて、ASDは複数の対象に注意を向けるのが苦手なので、言葉そのものと同時に疑問や感情、方言を表現するイントネーションにも気付くことが難しく、方言習得が困難である可能性もあると指摘しています。
そして、方言を話さない傾向は、知的障害を伴わずに社会生活を送っている一部の高機能ASDに限られるのでは、とも考えているそうです。
方言の使用は、相手への親しみを表現していて、いつでも共通語を使うのは、よそよそしいと感じられる場合もあるので、方言の使用が少ないのは、ASDの人が定型発達の人とコミュニケーションしにくい要因のひとつとなっているのかもしれません。
わたしも、個人的な感想として、知り合いのASDの友人が、確かに表情模倣や、方言が少ないなあ…と感じていたので、興味深く思いました。こちらが大笑いしていても視線を合わせず、表情を変えずに会話したり、妙に堅苦しい言葉を使ったりする感じがしていました。
すべての人に言えるわけではなく、あくまで一部のASDに見られる傾向にすぎないとは思いますが、背景に何らかの理由がありそうですね。